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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
33/192

2-17 写真

 竜暦6557年10月2日


 さわがしい鳴き声を出しながら、大きい鳥が視界を横切る。

 海辺の公園のベンチに座っている俺とサリスが空をながめる。


「小春日和だね」

「うん」


 移動性高気圧に覆われ穏やかで暖かい日差しが気持ちいい。

 たまにはゆっくりすごそうと今日は港湾地区の海浜公園にやってきたのだ。


「そういえばベックのほうは旅行の許可どうだった?」

「話をしたけど問題ないってさ」

「よかった」


 サリスが笑顔をみせ喜ぶ。


「ファキタ義父様に勧められたし、行き先は南部都市バセナでいいかな?」

「よく知らないけど、どういう街なのかな?」

「本を見ても詳しく書いてないけど景色は綺麗らしいよ」

「楽しみね」

「もっと都市や旅程を紹介する本があれば、旅行に行く前から予定を立てたりして楽しめるんだけどね」

「その紹介する本がベックが書きたい旅行記ってやつ?」

「うん」


 俺はサリスのほうに顔を向けて大きくうなずく。


「目で見て、鼻で香りを嗅いで、舌で味を感じて、耳で音を楽しんで、そういった体験を本にまとめるだけなんだけどね」

「本の好きな人には良さそうね」

「サリスは文字を読むのが本当に苦手なんだね」

「本を読んでいろいろ想像してると疲れちゃうのよ…」

「ふむ」


 俺は読みかけの本をベンチの脇において思案する。


「絵が多いとどうかな?」

「絵を見るのは飽きないから好きよ」


 そういってサリスは蒼く澄み切った空と美しい海を眺めた。


(この世界には写真はまだないよね…)


 本の挿絵に写真を載せるにはどうすればいいかと思案する。

 転生前に博物館で古いピンホールカメラを見たことはある。

 仕組みは銅板やガラス板と各種薬品を組み合わせ、光による化学変化を利用して景色の情報を記録する。

 現代のデジタルカメラは光をデジタルデータに置き換えて情報として記録する。

 ようはカメラを開発する場合、光を効率よく取り込み情報を記録さえ出来れば実現できるのだ。


(魔石加工技術のあるこの世界ではどうだろう…)


 ・火魔石 燃焼

 ・土魔石 凝固および分解

 ・風魔石 気体操作

 ・水魔石 液体操作

 ・木魔石 成長促進

 ・空魔石 空間操作

 ・聖魔石 治癒および消毒

 ・闇魔石 腐食および阻害


 主にこういった傾向を元に術式を組み込で方向性を制御したり、魔石の粉末を練りこみ魔力の出力を調整するのが魔石加工技術だ。


 光を取り込むのはピンホールカメラの原理を組み込めば、この世界でも間違いなく実現できる。

 あとは情報の記録をどうするか。

 デジタル方式は難しそうなので今回は除外する。

 となると銅版と薬品で情報を記録する方法が実現しやすい。


 闇魔石の粉末を利用した薬品を開発し銅版の表面に塗りつけ印画に使うのはどうだろうか。

 光のあたった場所のみ腐食が進めば表面に凹凸が出来るはずだ。

 あとはそれを既にある活版印刷を利用できれば本の挿絵に利用できるだろう。


 原理ではなんとなくいけそうだなと考えをまとめる。


 いつのまにかサリスが俺の肩に頭を乗せて、もたれかかるように眠っていた。


(寝顔もかわいいな)


 と思いながら起こさないように体制を維持して、読みかけの本をまた読み始めた。


2015/04/22 動作表現追加

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