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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
32/192

2-16 キノコ

 竜暦6557年10月1日


(【分析】【情報】)


 <<マヨイタケモドキ>>

 Fランク

 闇属

 魔力 10

 耐久 70/70


「これよね」

「それは毒キノコだよ。形が良く似ているけどね」

「またハズレなの…」

「ほら傘の裏の色がちがうよ」


 そういって植物図鑑のマヨイタケモドキのページをサリスに見せ納得させる。


「ほんとだ」


 サリスがガッカリした。

 そう迷宮の中を歩きながらマヨイタケを探すのは地味な作業で大変だった。

 とにかく似たような形のキノコが多く間違えやすい、さらに移動によって魔獣との戦闘もする必要があった。

 半日かかって迷宮1階をうろついて、ようやく採取箱半分だけ採取したところだ。


「楽できると思ったんだけど…」

「サリス疲れてるし、ちょっと休憩しようか」


 そういって腰を下ろし、水筒の薬草茶で喉を潤す。


「あまり苦くないわね、この薬草茶」

「うん、水ばかりじゃ飽きちゃうし、疲労を少し回復してくれるらしいよ」

「へー」


 実のところ、これ以上サリスの機嫌を損ねたくなかったので薬草茶を用意したのある。


「しかしマヨイタケモドキ、ベニマヨイタケ、ニガマヨイタケと3種類も似たような毒キノコがあるとか予想してなかったわ…」

「普段の街中では安全な食用マヨイタケしか目にしないしね、毒キノコは目にする機会がめったにないよね」

「でもベックはキノコ博士ね」

「図鑑みて勉強したからね」

「……うん、頼りにしてる」


 サリスがそういって俺の肩に頭をのせる。

 きょうはサリスの方から積極的に体を寄せてくるんだけど…

 今朝もサリスから手を繋いできたし…

 俺は肩にのせてきた赤毛の頭をなでながら問いかける。


「どうしたんだい」

「…」

「一番大切な人はサリスだからね」

「……うん」

「信用ないかな?俺」

「…かわいい猫人族の女の子と仲良くしてる姿みたら、不安になっちゃったの…ベック優しいしモテるから…」

「えっと本当に俺にとって大切なのはサリスだけだよ」

「…本当に?」

「正式に交際してるし自信もっていいよ、サリス。俺頑張って幸せにするからさ」

「ありがとう」


 サリスが少し安堵する。


「付き合ってそろそろ3ヶ月たつね。折角だしEランク冒険者になれたら迷宮探索を一時やめて二人で旅行いこうか?」

「え」

「ドルドスの首都フラフルに行くのもいいね」


 二人きりの旅行の話にサリスが食いついてくる。


「本当に?でも遠いわよ」

「今ならお互いの親に事前に話を通しておくことも出来るしさ」

「そうね!」


 機嫌のよくなったところで、改めて例の猫人族の子の件について念を押しておく。


「で例の女の子だけど昨日も言ったとおり、親切心から相談にのっただけで特に恋愛感情とかないから安心してね。大切なのはサリスだけだよ」

「う、うん」


(ふー、これでなんとか予防線はれたかな)


「まずは昇格試験がんばろう」


 休憩を終え腰をあげた俺達は、マヨイタケ探しの続きを開始し迷宮1階南西の未踏破の通路までやってきた。


「ベックあそこ!」

「キノコが群生してるね」


 20mほど先にたくさんのキノコが生えているのが見えた。


(【分析】【情報】)


 <<マヨイタケ>>

 Fランク

 闇属

 魔力 10

 耐久 62/62


(【分析】【情報】)


 <<マヨイタケ>>

 Fランク

 闇属

 魔力 10

 耐久 61/61


(【分析】【情報】)


 <<マヨイタケ>>

 Fランク

 闇属

 魔力 10

 耐久 58/58


 食用のマヨイタケの群生地のようだ。

 群生地中央に異様に大きいキノコがあったので、ついでに分析する。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ファンガス>>→魔獣:アクティブ:闇属

 Eランク

 HP 99/99

 筋力 1

 耐久 1

 知性 4

 精神 4

 敏捷 1

 器用 2


(異様に大きいキノコは魔獣だ!!)


「サリス!こっちにきて!」


 キノコに駆け寄ろうとしたサリスを呼び止めて戻るように指示する。

 俺は魔獣図鑑を取り出し、ファンガスのページを開いてサリスに見せる。


「え?!魔獣!」

「ああ、あそこの大きなキノコはファンガスかもしれない」

「でも図鑑と見た目が違うよ」

「菌類の魔獣だから形状を変えられるのさ、ここでマヨイタケに偽装して近寄った冒険者を襲うんだと思う」

「ロックトータスといい、ファンガスといい、騙す手段をとる魔獣は厄介ね。危うく攻撃うけるところだったわ」

「そうだね」

「で、どうやって倒せばいいの?」

「攻撃は毒の胞子を飛ばしてくると書かれてるね、あと火にはめっぽう弱いとも書いてある」

「遠距離から攻撃するほうがいいのね、マルチロッドで焼いちゃう?」

「焼くと周囲のマヨイタケを傷つけちゃうよね…」

「じゃあ、私が周囲にマヨイタケのない場所までファンガスを釣りだすわ」

「それがよさそうだね」


 そういってアイテムボックスから手拭をだしサリスに鼻と口をふさぐように指示する。

 あと解毒薬もサリスにわたし


「即効性の毒で、ふらついたらこれを飲んでね」


 と注意をうながす。

 俺の合図を元にサリスが群生地に突っ込むとファンガス2体が立ち上がりサリスに襲い掛かる。

 その攻撃を回避しサリスは一目散に撤退を開始。

 サリスの背中を追いかけようとノシノシとファンガス達が追ってくる。

 予定していた迎撃地点までファンガス達が来たところで火の玉を連射しマルチロッドの火魔石が砕け散った。


「《バースト》《バースト》《バースト》《バースト》《バースト》」


 炎上したファンガス達は程なくして息絶えた。


「釣りだしてくれてありがとう、サリス」

「ファンガスの歩みが遅くて助かったわね」

「念のために解毒薬を飲んでおこう」


 二人とも解毒薬を飲んでから魔石回収とマヨイタケの採取した。


「よし目的達成だね」



 冒険者ギルドの受付でジュイスにマヨイタケの詰まった採取箱と各種魔石を渡しクエストの報告を行う。

 ジュイスは採取箱を持って奥の部屋にきえて10分ほどして戻ってきた。


「はい、今回のクエストの報酬として銀貨10枚。あと各種Eランク魔石25個で銀貨50枚ね」

「どうもです」

「全部マヨイタケだったわよ、毒キノコがなくてビックリしたわ」

「えっとこれで勉強したんで」


 そういって植物図鑑を見せる。

 本当はスキル分析のおかげなんだけどねー


「よく勉強してるのはいいことね、この手のクエストは間違った品が混じって提出されることが多いのよ」

「そうなんですか?」

「見極める目も冒険者には重要なのよ、今後も精進してね」

「「はい」」


 俺達は背筋を伸ばし返事をした。


「あとファンガスの報告は貴重ね、注意するように通達を出しておくわ」

「はい」

「あと、5回目の昇格試験の指名クエストだけど、迷宮1階東部にある泉からこの採取樽に入るだけ水を汲んできて持ってきてね。報酬は銀貨10枚。これが依頼票」

「今回も魔獣討伐ではないんですね」

「Eランクになると討伐以外の依頼が多くなるわよ」


 採取樽と依頼票を受け取り、ギルドを出てから家路につく。


 いつものようにサリスを家の前まで送り、軽いキスをしようとするとサリスが家にあがるように告げてきた。


「ただいま」

「お邪魔します」

「おお、よく来たな」

「わざわざ挨拶にきたのかい」


 父のファキタと兄のエヒラが居間にいたので挨拶をする。


「サリスを連れ回してしまい申し訳ございません。ファキタ義父様、エヒラ義兄様」

「なんのなんのサリスも喜んでおるし何も問題ないぞ、将来一緒になるのだしな、ははは」

「そうだね、もう家族同然だし遠慮することはないぞ」

「はい、ありがとうございます」


 サリスが例の話の説明をするように促してきた。


「実はEランク昇格試験を無事におえEランクになりましたら、二人で旅行に行こうかと検討してるのですが問題ないでしょうか?」

「ほー、どこにいくかもう決まっておるのかな」

「ドルドスの首都フラフルか、南部の都市バセナがいいかな考えております」

「わしのおすすめはバセナだな」

「そうだね、僕もバセナがいいとおもうな」

「これからの季節バセナの方が暖かく過ごしやすいのでな」


 ファキタとエヒラが共にバセナを推してきた。


「聞くかぎりEランク昇格試験もかなり進んでおるようだし」

「冬頃にはEランクになってるだろうしね」

「はい、参考にさせてもらいます」

「マリスキン家としては問題ないから二人きりで楽しんできなさい」

「ありがとう「ありがとう」ございます」


 旅行へ行くことの了解を得られたサリスがはしゃいでいる。


(ポニーテール揺らして飛び上がって喜ぶサリスはかわいいなー)


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