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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
28/192

2-12 ウルフ

 竜暦6557年9月27日


 ウルフのいる迷宮1階の東部に向かう。

 サリスが分岐で立ち止まり左を指差す。

 覗くと先にスネークが3匹うろうろしてるのが見える。


(【分析】【情報】!)


 <<ラビリンス・スネーク>>→魔獣:アクティブ:水属

 Eランク

 HP 56/56

 筋力 1

 耐久 2

 知性 1

 精神 1

 敏捷 4

 器用 2


 小声で指示する。


「亜種はいないスネークが3匹、土塊からで」

「はい」

「《バースト》」


 土塊が着弾し、スネークが泥にまみれる。

 俺は槍を、サリスは剣を手にして手際よく斬り込んだ。


 一番手前のスネークの頭に狙いサリスが上段から剣を叩きつける。

 俺はうねる胴めがけて突きを入れる。


 泥まみれの体をくねらせ回避しようとするが時既に遅し。

 鮮血を噴出しスネークは絶命する。

 頭部の傷が致命傷になったようだ。


 右にいたスネークが勢いよくジャンプしてサリスに迫る。

 咄嗟に盾を構え叩き落すが左にいたスネークがその隙に足元にせまっていた。


「サリス、後ろに回避!」


 俺は指示を出しながら、左から迫るスネークに向けて槍で牽制する。

 狙いを俺に変更したスネークが槍をかわしながら迫ってくるので、サリスの闘っている位置から離れた場所にスネークを誘導する。


「ありがとう。ベック」


 一対一の状況が出来たこと気付いたサリスが軽く礼をつげてきた。

 ここまでくればあとは丁寧に攻撃を続け屠るだけである。

 しばらくして3匹の死体がそこにあった。


「サリス、これ飲んでおいて」


 魔石を回収する前に俺はサリスに解毒薬と水筒を渡す。


「かすり傷だし毒におかされていないから平気よ」

「遅効性の毒もあるからね、念の為に飲んでおいてく・だ・さ・い」

「う、うん」


 きつ目にお願いしたので、少しサリスがたじろぐが素直に薬を飲んでくれた。

 飲んでる間に俺は魔石回収を終わらせる。


「きょうのベックは慎重ね」

「先日の件があったから、気を引き締めてるんだよ」

「それは分かるけど…」

「前衛のサリスに無事でいて欲しいんだ」

「う、うん」

「俺もっと強くなるから!」


 前回みたいな失敗をしたくない!サリスを失いたくないという思いが強かった俺は、そう告げて前に進む。

 頬を紅くしてポーっと俺の背中を見つめていたサリスに俺は気付かなかった。


(どうしちゃったのかしら今日のベック。いつも以上にかっこいい!!)


 サリスはそんな事を考えて舞い上がっていた。


「ん、サリスいくよ」

「は、はい」


 サリスが足を止めていたのに気付き俺のそばに寄ってきた。


「この先の分岐を右にいけばウルフがいると思う、慎重に進もう」

「はい」



 今日の俺は、昨日の俺ではない!

 責任感により積極的に行動するようになった俺がいる!

 そうわかりやすくいうと案内ガイドから添乗員にクラスアップしたのだ!!!


 逆にわかりにくいという人もいるので説明するが

 案内ガイドは旅行やツアーなどで誘導したり説明をしたりするサポートに徹する人のことだ。

 しかし添乗員は違う旅行やツアーにおける各種予約、手続き、手配、指示と時にはガイドの仕事までこなすマルチプレーヤーなのである。

 凄いぞ添乗員!カッコいいぞ添乗員!


 話はそれたが元々転生前の添乗員の経験からこういった立場で動き回るほうが俺の性に合っているのかもしれない。



 サリスが立ち止まり先を指差す。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ウルフ>>→魔獣:アクティブ:火属

 Eランク

 HP 80/80

 筋力 2

 耐久 2

 知性 1

 精神 1

 敏捷 4

 器用 4


(亜種なし。4匹、開始は土で泥まみれにして、火の玉にぶつけてみるかな)


「通常のウルフ4匹。今回攻略時間を短縮できるか試したいので土塊の次に火の玉当ててみるよ」

「手間取らないかしら」

「魔石のセットに慣れてきたし平気だとは思うけどね」

「任せるわ」

「じゃ火の玉を当てたら斬り込んでね」

「はい」


 サリスが頷くのをみて土塊を撃ち出す。


「《バースト》」


 撃ち終えた後、素早く火魔石に交換し続けざまに火の玉をだす。

 視界には土塊によりウルフが泥にまみれている。


「《バースト》」


 続けざまの攻撃でウルフが炎上し混乱する。

 そこにサリスが勢いよく飛び出し足を狙って連撃を加える。

 素早い相手には、まず敏捷性を奪うことが重要である。

 俺も飛び出し混乱したウルフの目を狙い突きを入れていく。


 土塊と火の玉のコンボは予想以上にダメージを与えており、程なくして戦闘は終了した。

 皮と魔石を回収し終えたあとにサリスが感想を述べる。


「ウルフ相手に、この短時間で倒せたは凄いね」

「うん、短時間で決着がつくってことは危険が減ることでもあるし有効じゃないかな」

「次もこの手でいきましょう」

「そうだね、つぎはこの先の分岐を2つ進んだところだね」

「はい」

「途中落し穴があるから、ついでに土魔石を回収しておこう。」

「落し穴嬉しいわね」

「うんうん」


 夕方、冒険者ギルドの受付のジュイスにウルフの皮と魔石を提出しクエストの報告を行った。


「はい、今回のクエストの報酬として銀貨10枚。あと各種Eランク魔石24個で銀貨72枚ね」

「どうもです」

「しかし本当に持ってくる魔石の数多いわね」

「武器のおかげです」

「そうみたいね、君達の噂で放出系武器の購入者が増えたらしいわよ」

「へー」

「あとはベックの正確なマッピングも頼りになっているわよね」

「地図を作るのも冒険者の能力だけど、ベック君の地図作成能力は突出してるのかしら?」

「こ、こういう細かいことって好きなんですよ」


 ジュイスの鋭い突っ込みにたじろぐ。話を話題を変えないとと焦る。


「次の指名クエストはなんでしょうか?」

「さて3回目の昇格試験の指名クエストだけど迷宮に生息しているロックトータスの嘴を1個ね。報酬は銀貨10枚。これが依頼票」

「あれ迷宮にロックトータスなんていましたっけ?」


 サリスが小首をかしげるとジュイスが答える。


「1階にいるという報告は受けてるわ、知らないなら行ってない場所じゃないかしら」


 たしかに1階に未踏破の部分は残っている。


「はい、探してみます。」


 ギルドを出て大通りを歩きだすとサリスが質問してきた。


「ロックトータスってどういう魔獣なのかな?」

「中型魔獣B種。大人しい。動きが鈍い。硬い殻に覆われていてダメージが通りにくい。攻撃は鋭い嘴による噛みつきが主ってのが魔獣図鑑の説明ね」

「中型!?Dランクじゃない!」

「背負ってる硬い殻の部分が大きいから分類は中型になってるんだよ」

「なんだ安心した」

「本体は小型魔獣の大きさだよ」

「防御に特化したタイプなのね、倒し方はキングクラブと同じ感じかな」

「ちょっと違うかな」


 アイテムボックスから魔獣図鑑を取り出し、ロックトータスの絵をサリスに見せる。見た目は岩から頭と手足が出ている。


「え、ほぼ岩じゃない?」

「うん、岩の殻に篭ってしまうと厄介になるんだよ」

「ベック。倒すアイデアがあるって顔してるわよ」

「顔に出ちゃってたか、あはは」

「頼りにしてるわ」


 サリスが肩を叩く。


(さて明後日は亀退治か、浦島太郎さんに襲われないようにしないとなー)


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