表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
24/192

2-8 【地図】

増量中

 竜暦6557年9月23日


 部屋で装備を整えた俺は、ひさしぶりに自分の手を見て分析をする。


(【分析】【情報】)


 <<オーガント・ベック>>

 Fランク※

 HP 91/91

 筋力 4

 耐久 10

 知性 6

 精神 8

 敏捷 14

 器用 11

 <<装備>>

 スキル【分析】【書式】【情報】【地図】

 観測者レベル11


(あれ?【地図】?スキルが増えてる?!観測者レベルもあがってるぞ!!)


 俺は慌てる。

【地図】と念じると視界に港湾都市パムとその周辺のマップが表示された。

 上空からみた衛星写真のように表示されるが、俺のいったことの無い箇所は空白になっている。


(いったことのある場所のみ表示してるみたいだ。建物や道の配置を見るとパム周辺の地図で間違いようだな。)


 便利なことに意識をあわせる事で目の前に浮かんだ地図は拡大縮小することが出来、まるでスマートフォンの地図アプリのような使い勝手だ。


(本当にこのスキルってやつ、不思議だよな…。そういえば観測者って言葉からすると、これってライトベルにある転生勇者がハーレムを作るために使うチート能力というより、何かを情報を集めるための能力なんじゃないかな、そう思えば辻褄があうな…)


 新しいスキルの追加で頭が混乱していた俺だが、今日は迷宮にいく予定があることに気づき、頭を切り替えて家をでて迷宮に向かった。

 今日のサリスとの待ち合わせ場所は迷宮管理の小屋だ。

 移動中、【地図】を使っていて気付いたがGPSロガーのように移動した経緯も表示させることが出来るし、俯瞰のナビ表示も出来ることがわかった。


(これ迷宮内で使えたらマッピングがかなり楽になるんじゃないかな…。はやく試してみたいな!)


 このスキルを使いこなせれば大いに役立つことがわかり、期待に胸を膨らます。

 迷宮管理の小屋につき、近くに設置された休憩所の椅子にすわりながら新しいスキルの地図をいじってるとサリスがやって来た。


「待たせちゃったかな」

「そうでもないよ」

「そういえば父に昨日の件を話したんだけどビックリしてたわ」

「俺の父様と母様も同じように唖然としてよ」

「話が都合よく進んでて、ちょっと怖いわね」

「でも試験次第では昇格できない可能性もあるし、まだまだ手放しでは喜べないと思うよ」

「そうね、喜ぶのは無事にEランクになってからしましょ」

「じゃ、早速入ろうか」

「はーい」


 パム迷宮1階の入口にたどり着き、いつもの手順で準備を済ませた俺はさっそく地図を表示してみる。


(すごい!!)


 目の前に所々空白がある網目状に広がった迷宮が表示されている。

 手書きでマッピングしなくても良いし一気に探索が進みそうだと俺は喜ぶ。


(付箋で情報書き込めればな、さらに便利なんだけど出来るのかな。ちょっと試してみよう。)


 俺は現在位置として表示されている入口に見つめて情報を記入するように念じてみた。

 すると地図に入口と文字が追加されたのである。


(うぉおお!!情報書き込めちゃったよ!この地図って能力は凄すぎ!)


 俺は興奮して思わず拳をグッと力強く握り締める。


「ちょ、ちょっと、サリスいいかな」

「どうしたの」

「手書きの地図を見直したいんだけどいいかな」

「大丈夫よ、何か問題あったの?」

「えっと、ほら、昇格試験の話も昨日あったしさ、いろいろを普段の行動を見直しておくのも悪くないかなって…」

「なるほどね、初心に戻って気を引き締めるのは悪くないわね」

「う、うん、すぐ済むからちょっと待っててね」


 そういって今までの迷宮の行程を記録した手書きの地図をアイテムボックスから取り出した俺は、目の前に表示されている地図に付箋のように情報を次々と写していった。


(落とし穴や魔獣との遭遇位置も記録したし、これで大丈夫かな)


「準備できたよ」

「じゃ、いきましょうか」

「地図を見直したけど、かなり情報埋まってたしもう巻糸は必要ないね」

「そう?」

「うん、まだ進んでない分岐を進むようにしてみようか」


 スキルで表示された詳細な地図が目の前に浮かんでいるが、ダミーとして手書き地図を手に持ちながらサリスにそう語りかけた。

 俺の指示で未踏破の場所を目指して迷宮を進んでいく。


「このさきは前回ゴブリンがいた場所だね」

「はい」


 サリスが武器を手にし慎重に進む。

 5匹のゴブリンの集団が視界に入ったので、俺は火の玉の《バースト》を撃ち込む。

 ゴブリン達に火の玉が着弾し炎上するのと同時に素早く斬り込んだサリスの剣がゴブリン達を沈めていく。

 あっけないもので3分ほどで戦闘は終了し、魔石を回収作業にうつる。

 迷宮に来て1ヶ月、二人の連携はさらに熟成されていた。


「ゴブリン程度じゃ物足りないわね」

「さすがサリス、言うことが違うね!」

「ふふん」


 そんな軽口を叩きながら先を進む。


「そこの分岐を右ね、そうしたらその先にウルフがいるはずだよ」

「マルチロッドの魔石交換しておいたほうがよさそうね」

「ああ」


 俺はマルチロッドの先端にセットされている魔石を火から土に交換し、先に進むとウルフが3匹固まっている。


「《バースト》」


 土塊が勢いよく飛び出しウルフ達にぶつかる。

 飛び散った粘度の高い泥がウルフ達に絡みつき、その持ち前の敏捷さを奪っていく。


「やああああ」

「《ショット》《ショット》《ショット》《ショット》《ショット》」


 サリスが通路右側のウルフに連撃を繰り出す、動きの鈍いウルフはいい的だ。

 俺は後方から左側にいるウルフ2匹に単発の土塊を次々を当てて行く。

 こうなるともうウルフ達は成すすべがなく沈んでいくだけだった。

 10分ほどかかり、戦闘が終わった。


「土魔石のバーストって便利よね」

「うんうん、直接的なダメージは少ないけど泥付着で行動を阻害できるから安全に戦えるのがやっぱり大きいね」

「本当に助かるっているわ」


 嬉しそうにサリスが微笑む。


「さてこの先だけど右に曲がるとスネークがいて、さらに進んで左に曲がるとラットがいるね」

「そういえば今日のベックの指示っていつもより的確なんだけど、どうしたの?進むペースもいつもより速いわよ」

「い、いや今までの地図を何度も読み直して頭に叩き込んだんだよ、もう迷宮にきて1ヶ月も経つしね。俺も成長してるのさ」


 鋭い指摘をしてくるサリスに誤魔化して答える。地図を叩き込んだのは嘘ではない。ただし頭ではなくスキルで表示されている地図にだが。


「それに俺よりサリスの成長の方が凄いよ、最近戦闘で息切れしなくなったでしょ」

「確かに今までより体が軽く動く感じがするわね」

「だよね、さて先進もうか」


 進んだ先で出会ったスネークとラットは共に火魔石のバーストで焼き払い、大した戦闘行為は発生しなかった。


「この先は未踏破の通路だね。」

「ペース速いから来れた感じね、いつのならまだまだ手前を歩いているわ」

「そうだね、短時間でここまで進んだのは初めてだね」


【地図】のおかげである。


「ちょっと早いけど休憩しようか。」

「いいわね」


 俺達はアイテムボックスであるポーチから取り出したシートを地面に敷いて座り込む。さらに水筒も取り出して喉を潤した。

 5分ほど休憩したあと立ち上がり、シートを片付けようとした時、地面に落ちている光沢のある小石に目が言った。気になったので分析してみた。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ビット>>→魔獣:パッシプ:空属

 Fランク

 HP 1/1

 筋力 1

 耐久 1

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(はぁぁ、魔獣!!どうみても小石だよね、えっ?、えっ!)


 どう見ても光沢のある小石にしか見えない。恐る恐る持ち上げても特に襲ってくる様子はない。

 落し穴の蓋になっているラビリンス・タイルと同じ系統の無害な魔獣なのかもしれないと小石を見つめながら考え込む。

 その様子にサリスが気付く。


「その小石がどうしたの?」

「ちょっと気になってね」

「もしかして、それって迷宮ガイドに記載されてる転移石じゃないかしら」

「え」


 俺は慌ててアイテムボックスであるポーチから迷宮ガイドを取り出し、その記載に目を通した。

 特殊な石ということしか書かれていなかったが、光沢の特徴は一致している。

 まさか魔獣だったとは…

 どうやら魔石状のラビリンス・ビットを砕くという行為、実際は魔獣に止めを刺す行為だが、それによって溜め込んだ空間を操る魔力が暴走し迷宮の外に、ラビリンス・ビットの近くにいる人を転移させるようだ。

 迷宮ガイドでは直径3mほどの空間が転移対象らしいが。


「どうやら転移石で間違いないようだね」

「じゃ入口に戻る時間を考えなくて済みそうね」

「ああ、いいものを拾ったかも」

「他にあるか探して見ましょ」


 いままで気にしてなかった地面に落ちている小石を探すと、所々に転移石が落ちていたので早速回収する。


「たくさん落ちているわけじゃなさそうね、でも6個拾ったし二人なら充分かしら」

「じゃ3個づつ持っておこう」

「うん」


 ポーチに転移石をしまい探索を再開する。


「いつもよりペース速いし、戻る時間も考慮しなくていいから。いけるだけ奥に進もうか」

「はい」

「ただしさっきも言ったけど、この先は未踏破の通路だから慎重に進もう。」


 周囲を警戒しながら先に進むと、魔獣の気配がありサリスが足を止める。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・フェアリー>>→魔獣:アクティブ:聖属

 Eランク

 HP 60/60

 筋力 1

 耐久 1

 知性 1

 精神 4

 敏捷 4

 器用 2


(妖精か、魔獣図鑑には無害と書かれていたけど、迷宮仕様は襲ってくるみたいだな。)


「あれってなにかしら」

「フェアリーみたいだ。全部で8匹かな、ちょっと多いね」

「パム周辺で見たことないわね」

「近隣では歓楽都市セジルの近くの森にいるらしいよ」

「へー」

「見た目はバタフライみたい。空を飛んでるし素早そうね」

「素早いのは間違いないけど、脅威度はウルフより低いはずだよ。鋭い爪や牙はないしね」

「初めての魔獣だしマルチロッドのセットは火魔石で様子を見てみよう」


 俺は狙いをつけて火の玉の《バースト》を撃ち込み、フェアリー達が炎上した。

 すかさず駆け込み、サリスが連撃を繰り出すが宙を漂うフェアリーがひらりひらりと剣の軌跡をかわしていく。


「サリス!振りはもっと小さく、とにかく当てることに集中して!」

「わかったわ」


 サリスが連撃をやめ、狙い済ませた突きを的確に入れていく。

 連撃より威力が劣る突きだがフェアリーはかわす事が出来ず、徐々に動きが鈍くなる。

 俺はというと単発の火の玉で支援に徹する。


「《ショット》《ショット》《ショット》《ショット》《ショット》《ショット》」


 サリスの剣を避けようと上に飛び上がるフェアリーに面白いように単発の火の玉があたる。

 数が多く、さらに回避が厄介な敵だったが20分ほどで全てのフェアリーを倒しきった。


「倒すのに久々に時間かかったわね」

「攻撃は体当たりしかないし雑魚なんだけど、空中で回避されるのがこんなに厄介だったとは」

「でも聖魔石8個はかなりいいわね」

「苦労した甲斐があったね」


 魔石を見つめサリスがニヤニヤする。

 水筒を取り出し喉を潤した後、探索を続行する。


 少し進むと、通路の奥から剣撃の音が聞こえた。


「この先に他の冒険者がいるようだね」

「そうみたい」

「横取りはマナー違反だからしないけど様子だけ覗いてみようか」

「ええ」


 先に進むと3人の冒険者がウルフ4匹と戦っていたようだ。

 3匹は既に地面に倒れており、残り1匹を3人が取り囲み、一番大柄な冒険者が止めの一撃を持っていた手斧で入れた。

 そのあと3人の冒険者は手際よくウルフの皮を剥ぎ魔石を回収していく。


「ん、珍しいな、ここで他の冒険者にあうとは」


 一番大柄な冒険者が、遠めに見ていた俺達に気付き、声をかけてきたので丁寧に挨拶をした。


「こんにちは。Fランク冒険者でオーガント・ベックと申します。」

「同じくFランク冒険者のマリスキン・サリスです。よろしくお願いします。」

「俺はDランクのアハウル・ガニデだ、よろしくな。そっちの二人はEランクのユハタイ・ハイエとポライエ・クピタだ。」


 ガニデが気さくに声をかけてくる。このクランのリーダーなのであろう。


「しかし奥までくるとはFランクとはいえ、いい腕してそうだな」

「兄貴、そこのお嬢ちゃん、マリスキンって…」

「ああ、そうだな、ファキタさんの関係者なのかい?」

「ファキタは父です。」

「それなら納得だ。さすがマリスキンの名を持つだけあるな」

「父をご存知なんですか?」

「若い頃、世話になってな、ファキタさんは相変わらずご健在かい」

「はい」

「それは良かった。さて俺達はこの先の分岐を右に進むが、君達はどうする?」

「重なるのもなんですし、左に進もうかと思います。」

「そうか。左を進むとさらに先に地下2階への穴があるから、Fランクの君達は絶対に2階には進まないようにな」

「はい、アドバイスありがとうございます!」

「じゃ、頑張れよ!」


 そういってガニデ率いるクランは通路の奥に消えていった。


「さすがに手馴れてるわね」

「ああ、俺達もああいった立ち回りができるように、もっと修行しないとな」

「そうね」

「さて左に地下2階への穴もあるみたいだし、そこまで今日はそこまで行ってみようか」


 分岐を左に進むとスライムに遭遇したが火の玉の《バースト》を撃ち込み一撃で屠る。

 火魔石を消費し金はかかるが、時間を節約できるのは大いに助かる。

 マルチロッドを購入して本当によかった。


 さらに奥に進むと通路の突き当たりの地面に直径3mほどの穴があいている。


「ここが2階への入口みたいだわ、縄梯子も設置されてるし」


 穴の中を覗き込み、底が見えるが結構深い。


「今日はここまでだね」

「うん」

「初めて使ってみるけど転移石で戻ろう」


 そういってポーチから”転移石”という名の魔石状の魔獣を取り出し地面に叩きつけ砕く。

 視界が歪んだと思った瞬間、俺達は泉の底にいた。


「うわー、本当に一瞬で出てこれるのね!すごいわ!」

「そうだね、これは便利すぎる」


 初めての転移に感動しつつ、俺達は迷宮管理の小屋に向かい28個のEランク魔石を買い取ってもらう。

 今回は落し穴の収入はなかったが、かなり奥まで進み魔獣集団と6回も戦ったので、いつものを同じだけ稼げたのだ。


 小屋をあとにしようとしたらカウンターの男性に声をかけられた。


「冒険者ギルドのクルハ代表が君達に話があるそうなので、明日は冒険者ギルドに顔をだしてもらえるかな」

「わかりました」


 俺はそう答える。

 昇格試験の件だろうと予想しつつ今日の探索を終えた。


2015/04/22 語句修正

2015/05/03 脱字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ