2-7 昇格試験
竜暦6557年9月22日
冒険者ギルドに呼び出され、会議室で俺とサリスは1枚の書類を見せられた。
書類には
オーガント・ベック(Fランク)
マリスキン・サリス(Fランク)
8月26日 買取 E魔石29個
8月28日 買取 E魔石24個
8月30日 買取 E魔石28個
9月01日 買取 E魔石25個
9月03日 買取 E魔石23個
9月05日 買取 E魔石27個
9月07日 買取 E魔石31個
9月09日 買取 E魔石24個
9月11日 買取 E魔石16個
9月13日 買取 E魔石28個
9月15日 買取 E魔石32個
9月17日 買取 E魔石19個
9月19日 買取 E魔石26個
9月21日 買取 E魔石23個
E魔石合計 355個
支払金額 金貨10枚と銀貨65枚。
と書かれていた。
「この内容で間違いないかね?」
港湾都市パムの冒険者ギルド代表ハヴァイス・クルハが内容の確認を促す。
「はい、間違いありません。」
「この通り間違いありません。」
俺とサリスは内容を確認し答えた。
「7月14日に登録したばかりの10歳のFランク冒険者のペアが叩きだしたとは思えない数字だよ、まったく。」
「そうなんですか?」
「疑いたくはないが迷宮探索に他に協力者はいないんだね。」
「「はい」」
「ふむ、この数字を出すのにどうやって戦っているのか教えてもらえるかな。」
サリスと顔を合わせ、俺が答える。
「1階を効率よく巡り魔獣集団を6つほど殲滅してます。」
実際は落とし穴から拾ってる魔石を含んでいるが、その事実は秘密にして辻褄をあわせるように答える。
「しかし複数魔獣を対象にそこまでの攻撃力があるとは疑わしいな。信じられん。」
俺はマルチロッドを代表のクルハに見せる。
「このマジックアイテムを使ってます。」
「ん」
「ロージュ工房製の放出系マジックアイテムです。威力についてはロージュ工房のファバキ氏に確認していただければと思います」
「その若さで放出系武器を持って使いこなしているのか…。うーん。」
しばらくクルハは黙って考え込んでいたが、ある提案をしてきた。
「とりあえず強力な武器を使っているのはわかった。ロージュ工房には問い合わせをいれるが、とくに不正もないようだし別途日程を決めてランク昇格試験を受けてもらおう。」
「「え?」」
俺達はその言葉に驚いた。
「迷宮が出来て1ヶ月、混乱をしてる中、ここまでの実績をあげる若者が出てくるとはな。迷宮が冒険者を育てるという話は本当だったかもしれん。」
「本当にランク上がるんですか?」
「10歳でEランク昇格は異例だがな。本来なら成人を迎える年齢でEランクに認定されるのが通例だ。」
「俺も師範からそう聞いてました…」
「私も父からそう言われてました。」
「実績があるのにFランクのままにしてるというのも冒険者ギルドとして問題があるのだよ。」
特例で冒険者ランクが上がるらしい。俺達は唖然としながらも喜んだ。
「喜べないぞ。Eランク冒険者となると成人扱いになるぞ、それでもいいのかな?」
「「え?」」
「だから成人と同じだ。当然、指名クエストを任されることにもなってくる。」
「指名クエスト?」
「ベックは知らなかったわよね。Eランク以上だと依頼者からギルドを通さずに直接指名でクエストを依頼してくることがあるのよ。」
「さすがマリスキン家の冒険者は詳しいな。」
「ベックのお父様のジャスチさんも、行商の護衛は指名クエストで依頼しているわよ。」
「指名クエストの内容にもよるが、ギルドを通さないためにトラブルも多い。成人なら自己責任で済むのだがな…」
「あと信用が大事ですしね、指名クエストを受けるのも、依頼するのも。」
しかしランクが上がるのは願ってもないことだ。
俺とサリスはクルハにランク昇格試験を受けることを告げ会議室を後にする。
二人が出て行った会議室で一人クルハが笑みを浮かべて呟く。
「武のマリスキンに知のオーガントの冒険者ペアか…、今後も成長が期待できる組み合わせだな」
成長著しい若い冒険者の登場を嬉しく想う代表の姿があった。




