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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ドルドス帰国編】
189/192

6-26 カフェテラス

 竜暦6561年9月29日


 時刻は14時。

 パラノスの港湾都市バイムのカフェテラスで、俺はオルと一緒にコーヒーを飲んでくつろいでいた。


「ダルガラタさんとの術式開示の交渉が進んで良かったな」

「動力車のときより話が早かったよね」


 オルがコーヒーカップを手で持ちながら答えた。


「もともと既に小型船を購入してるし、今後ドルドスに戻ってからの整備する事情を汲み取ってもらえたんだろうな」

「でも、こちらから提供する術式が固定強化術式と温度調整術式で済んだのはバランスが悪いんじゃないかなと思ったけど」

「俺も最初オルのいうようにそう思ったんだけど、考えてみたら温度調整術式は既に運用中の帆船に取り付けることが出来るから今後の収益はかなり確保できるんじゃないかな」

「そのあたりは馬車の時と同じってことなんだね」

「うん。既存の運用中の船に取り付ける需要の方が多いだろうし」

「人が生活する上で、快適な空間を確保できるってのは確かにそうだね」


 オルの話を聞きながら、サリスが話していた家庭向けの温度調整装置の開発を忘れていたことに気づいた俺は旅行準備メモを取り出して、再度"エアコン"とメモしなおした。


「なにか確認?」

「ああ、以前サリスから馬車に取り付けてある温度調整装置を家庭向けに設置できるような商品を開発したらって言われてたんだよ」

「それは良い考えだね」

「魔石を使うから普及には時間がかかるだろうけどね」

「あー、そっか」

「馬車や船への取り付けは料金に上乗せできるけど家庭向けはそういうことが出来ないからな」

「でも快適に過ごせるのは魅力だね」

「そうだな」


 俺はコーヒーを飲みながら、旅行準備メモに目を通す。

 昨日の夕方、パラノスの港湾都市バイムに到着。

 宿で一晩ゆっくり休んで今朝一番で船大工のラガタガさんに馬車の組み立て依頼をしたあと、ダルガラタさんと水流噴射装置の技術供与の打ち合わせまで終わらせた。

 明日も引き続きダルガラタさんとの交渉があるが、これからどう動くか予定を少し思案した。


「うーん。予定より早くダルガラタさんとの交渉が終わったからこれからどうしようか」

「無理に仕事を入れなくてもいいんじゃないかな」


 オルが俺の質問にそう返してきた。


「やっぱり、そうするか…」

「飛竜の偶像の製作工房がバイムにあれば良かったんだけどね」

「そこはしょうがないかな。救いとしては昨日仕入れた情報で工房のある工業都市レガウがルードン村へ向かう途中だったってことだな」

「そんなにバイムから離れているわけじゃないのも良かったね。クシナ迷宮都市の隣の都市だし」

「オルは工業都市レガウについてどれほど知ってるの?」

「うーん、聞いた話だとパラノスで流通する製品の多くを生産してるって話くらいだね。実際クシナに向かう途中で乗り合い馬車に乗り換えるのに立ち寄った程度だし」

「そうなると実際に行ってみるのが早いんだな」


 腕組みをして俺はレガウがどんなところか想像してみた。

 するとオルが俺に旅の途中の提案をしてきた。


「そういえばルードン村への移動の途中でクシナ迷宮都市に立ち寄ってもらえないかな」

「ん?」

「お世話になったギルドの代表にお礼を言っておきたいし」

「あー、なるほど」

「それに破砕粘土もクシナで購入も出来るよね」

「そうだな。あっても困らないし少し補充しておいたほうがいいな」

「時間があれば迷宮に挑戦してみたいけどね」

「本当はそうしたいけどルードン村に行くのが優先だから今回は立ち寄るだけだな」

「小型船もあるんだし、来年の夏にでも数ヶ月きてもいいんじゃないかな」

「3ヶ月くらい時間が取れれば来てもいいかもな」

「そうだね」


 俺はその話が出たところで脳裏にあるアイデアが浮かんだ。


「定期的にパラノスに来るなら組み立て式馬車と動力車を1台バイムに置いていてもいいな」

「え?」


 俺の発言にオルが驚いた。


「いまの馬車と動力車をこのまま、ここに置いておくの?」

「いや、新しく製作したやつだな。今の馬車と動力車は思い入れもあるからドルドスに持っていくよ」

「うーん。管理が大変じゃない?」

「ダルガラタさんかラガタガさんに預かってもらってもいいんじゃないかな」

「保管場所を考えるとダルカラタさんかな?」

「それなら、いま製作している観光用の小型船と一緒に観光用として動力車と馬車を運用してもいいな」

「そうなるとダルカラタさんは本格的な観光事業が始められそうだね」

「うんうん。俺達は小型船でバイムまで来れば、そのまますぐに動力車と馬車で移動できるし、利用しないときは観光業で小銭を稼ぐと」

「その話だけど、明日の交渉のときに話をしておいたほうがいいかも」

「そうだな」


 オルがコーヒーを飲み干し、俺をじっと見てから口を開く。


「国をまたいで仕事するってベックは本当に突拍子もないことを考えつくね」

「海運商会は既に国をまたいで商取引をしてるし珍しくもないんじゃないかな」

「荷物のやり取り以外での商売は初めてじゃないかな?」

「うーん。まあ小型船があっての話だからな。小型船が普及すれば今後はもっとこういう話が増えると思うよ」


 俺もそういってからコーヒーを飲み干した。


「さてと、ちょっと早いけど宿に戻ろうか」

「そうだね」


 俺とオルは席を立ってカフェテラスをあとにした。


2015/06/25 脱字修正

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