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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ドルドス帰国編】
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6-19 アクアマスク

 竜暦6561年9月22日


 島嶼都市タゴンの南にある砂浜に俺達はやって来た。


 2日前の夜、飛竜の偶像を打ち上げた砂浜である。

 遠浅になっている浜で透明度も高く熱帯の小魚が多いという話を宿の受付の話で聞いていたからだ。

 アクアマスクを付けての水中散歩を試すにはちょうど良い場所である。


 早速テントを設置して俺達四人は水着に着替える。

 それぞれ手には足に装着するフィンと大きくごつごつしたアクアマスクを持っている。


 俺達はまず波打ち際まで移動してからフィンをつける。


「えーー。今日は水中戦を想定した訓練です。ふざけないで真面目に取り組みましょーー」


 俺がそういうとサリスに後ろ頭を叩かれた。


「ふざけすぎ」

「ごめんなさい」

「でも、あながち間違ってはいないわね」

「そうだろ。このアクアマスクにも慣れておく必要があるしな」

「ですですー」

「まずはカバーを開けて風魔石が装着されているか確認したほうがいいですね」


 オルがアクアマスク下部を開いてFランクの風魔石がセットされているか確認する。

 俺達三人も同じようにカバーを開いて風魔石がセットされているか確認した。


「問題なさそうね」

「ないですー」

「次は装着だな。頭からすっぽり被ってから簡易スペルで《オン》と唱えれば固定できるって説明書に書かれてたよ」

「風魔石が切れた場合やすぐに外したい場合は?」

「《オン》と唱えれば固定解除できるし、緊急時にも固定解除されるらしいね」

「緊急時ってなんです?」


 アミの問いにオルが答える。


「意識を失った場合や風魔石が切れた場合などらしいですね」

「わかったです!」

「あとアクアマスク内部と外部に光がつく場所があって、そこが光の強さで空気の残量がわかるらしいな」


 サリスがアクアマスクの額の辺りを指差す。


「ここが光るみたいね」

「うん。水中での活動をサポートできるようにしてるみたいだね。あとは他の人の空気の残量も分かれば危険な状況もひと目で分かるしな」

「たしかに水中で呼吸が出来ない状況は危険ですね」

「オルの言うとおり、その状況は絶対に避ける必要があると思うから、みんなも注意してくれ」

「はいです」

「了解」

「はい」

「海の中では重さは気にする必要がないけど、まずは注意しながらここでアクアマスクを被って海中の様子を確認していこう」


 俺は最初にアクアマスクを被ると《オン》と呟く。

 水の浸入を防ぐようになうにアクアマスクの首元が適度に絞まる。

 呼吸が出来ないということもない。


 俺の様子を注意深く見ていた三人も同様にアクアマスクを被ってから《オン》と呟く。

 その後、海に入り潜水する。

 アクアマスク内部に海水が入ることはないしマスク自体の重さも浮力のお陰で感じない。

 一つ難があるのは常に足を動かしてないと自然と浮力で浮き上がってしまうことだ。


 今は問題ないが水中で姿勢を安定させるには重りが必要だなと俺は思った。

 後ろを振り向くと三人も海中の様子を楽しんでいるようだ。


 海中にはカラフルな熱帯の小魚の群れが数多く泳いでいる。

 小魚への餌でも持ってくれば、この場で小魚に囲まれたかもしれないなと俺は残念がった。


 しかし呼吸の心配をせずに水中で活動できるのはありがたい。

 水圧の関係があるので深いところにはいけないが、小型の水棲魔獣と戦うには問題ないだろう。


 俺達は足につけたフィンを器用に動かして、水中を縦横無尽に駆け回る。

 ほどなくしてアクアマスク内部の光が暗くなってきた。

 俺は他の3人を見渡すとアクアマスクの額の部分の光が暗くなってきたのがわかる。


 俺は三人に対して水中で額の指差したあと陸側を指差して合図を送ると、三人がうなずいた。

 浜辺に辿りついたところで、アクアマスク内部の光が完全に消えて締め付けていた首元が緩んだ。


 俺は両手でアクアマスクを外す。

 サリスとアミとオルも同じようにアクアマスクを外すと興奮した様子で感想を言い始めた。


「わたし魚になったです!」

「アミさんの言うようにまるで魚になったようです。水中で呼吸できるって本当に素晴らしいですよ!」

「その気持ちはよくわかるわ。思っていた以上に良い装備ね」

「海中散歩は楽しかったろ」


 俺がそういうと三人とも大きくうなずいた。


「とりあえずは一旦テントに戻ろうか」


 俺達はフィンを外してから簡易テントまで戻りアクアマスクやフィンを広げたシートの上に置く。

 ここからはアクアマスクを使った場合の魔獣との戦闘で注意すべき点を相談することにした。


「えっとこの装備をして水中で戦う場合だけど、まず水着では無理だから専用の水中装備が必要になりそうだね」

「たしかに今の冒険者装備のままは無理ね」


 サリスが腕組みをする。


「他にもアクアボウの扱いにもなれる必要があるかな」

「弓とは扱いが変わりますよね」


 オルが思案しだすとアミが口を開く。


「あと姿勢が安定しなかったです」

「そうだな。俺もそれを感じたけど水の浮く力が働いてるから常に足を動かす必要があったよな。あれは無駄に体力を使うから重りを装着する必要がありそうだな」

「海中散歩程度なら今のままでも良いですけど、魔獣との戦闘となると準備がそれなりに必要になりそうですね」

「まあ、すぐに戦うことになるわけでもないし少しづつ準備をしていこう」

「そうね」

「他に気づいたことはあるかな?」

「思ったんだけど息が出来る時間が短いわね」

「Fランクの風魔石じゃこれが限界だろうし、Eランクの風魔石となるとカバーの中に入らないからな」


 アミがなにかを閃いたようで、俺の言葉のあとにつづく。


「このカバー部分に別の大きな箱を取り付けて、そこにEランクの風魔石を入れておくです」

「アミさん、そんな大きな箱をアクアボウの下につけると邪魔になるよ」


 俺はその話をきいて転生前の世界のダイビングに使うボンベを思い出して案外悪くないアイデアだなと思った。


「アミの方法はいいんじゃないかな。少し改良は必要だと思うけどカバーに長い筒をつけてその先に魔石を入れておく箱を取り付けてもいいかも。筒が自由に動くようなら背面に箱を背負ってもいいだろうし」

「大掛かりな装備になりそうですね」

「あまり大掛かりにはしたくないわね。毎回この装備を持ち運ぶ手間もあるわよ」


 たしかにサリスのいう事も一理ある。


「そうなると水中戦用の装備は小型軽量化が出来るまでは小型船に備え付けておく感じになりそうだな」

「それなら平気そうね」

「他に気づいたことがある人は?」


 オルが口を開く。


「水中で会話が出来ないので動作での合図を打ち合わせる必要がありますね」

「ああー、たしかに細かい意思の伝達方法は必要だな」

「そこは時間のあるときに考えるです」

「ドルドスに戻る際の航海時間はたっぷりあるからベック考えておいてね」

「えぇぇぇ、俺が考えるの?」

「クランのリーダーであるベックが一番適任でしょ」


 そういってサリスとアミとオルが一斉に笑う。

 まあ確かに適任といえば適任だ。

 それにハンドサインを決めておくことは水中だけでなく普通の戦闘でも使える。


 俺はアイテムボックスから旅行準備メモを取り出すと対応すべき点を記入していく。


 ・水中専用装備開発

 ・アクアボウの使用訓練

 ・重りの準備

 ・水中での呼吸可能時間の延長対応

 ・水中専用装備の小型軽量化

 ・水中用ハンドサインの準備


 旅行準備メモを眺めると俺がやるべき事がさらに増えたなと思ってしまった。


 しばらく砂浜で休憩した俺達は本日2回目の海中散歩をしに綺麗な熱帯の小魚が泳ぐ海に向かうのであった。


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