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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
18/192

2-2 タイル

 竜暦6557年8月26日


 パム迷宮の入り口近くに冒険者ギルドの出張所の小屋が出来ており人が集まっている。

 その小屋にあるカウンターの一部に冒険者の女性の方々がたくさん集まっていてカウンターの男性に熱心に話しかけているようなので、覗いてみるとカウンターに見知った顔があった。


「ベックじゃないか、迷宮にいくのかい?」


 冒険者の女性の方々の鋭い視線が俺に集まるのを感じた。


(あー、これヒッチ目当てだな…)


「はい、迷宮に入るところです。ヒッチ兄様こそ、どうしてここに?」


 会話から兄弟と察したのであろう、女性達の視線が少し和らいだ。


「パム迷宮は行政庁と冒険者ギルドの共同管理だからね。僕は行政庁から派遣されてここに来たんだよ。」

「なるほど」

「迷宮に入るなら、ここに名前と現在の時間を記入してくれ」

「はい、待ち合わせの相手がいるので合流したら記入します。」

「そうしておくれ。次の方どうぞ」


 ヒッチはたんたんと業務に戻った。

 しかし隣のカウンターの男性のところは空いているんだが、これおかしくないか?

 イケメンヒッチ恐るべし。

 ヒッチが結婚したら悲しむ女性多そうだな…


 しばらくするとサリスがやってきたので合流する。


「おまたせー」

「うん、俺も今来たところだよ」

「あれってヒッチさんじゃない、挨拶はいいの?」

「ああ、行政庁からここに派遣されたってさっき聞いたよ」

「私も挨拶してこようかな」

「いや、今は遠慮したほうがいいとおもうよ。忙しそうだしね」

「そうね、人だかり出来てるようだしね」


(あの女性達にサリスが呪い殺されなくて良かったなー)


 俺は少し安堵しながら空いてるカウンターの男性に声をかけ必要事項を記入する。


「予定時間を過ぎても戻らない場合は捜索隊が出ます。その場合、捜索費用は実費で請求されますので注意して下さいね」


 男性が丁寧に説明してくれたので頷く。


 その後、泉のあった場所まで進むと唖然とした。

 泉の水が消えており、泉の底にぽっかりと直径3mほどの横穴が開いている

 仮設の階段をつかって泉の底までおり、そのまま横穴の中を進むが見える限り直径3mほどの横幅は維持しているようだ。

 結構広い通路だから狭すぎて戦闘が出来ないという苦労は無さそうで安心した。


「じゃ、迷宮灯つけるよ」

「はい」


 サリスはすばやく巻き糸を入り口付近の岩に結びつける。

 同じような巻き糸がいくつもあるが、先行している冒険者がいるようだ。


「腹止丸はもう飲んだのかな?」

「まだよ、ここで飲んじゃおうか」

「そうだね」


 俺はアイテムボックスから腹止丸と水筒を取り出し、二人して手早く腹止丸を水で流し込んだ。


「俺は後ろでマッピングしていくから、先行はサリスにお願いしていいかな?」

「平気よ」

「なるべく、まだ糸が張ってない分岐を進むようにしようか」

「そうね、他の冒険者と魔獣を取り合うのも大変だしね」


 そういって穴の中を進むといくつか分岐に出会う。

 思っていた以上に枝分かれしているようだ。さすが迷宮だな…

 糸の張られてない分岐を先に進むとサリスが停止した。


「あれってなにかな?」


 床の一部が光ってる。もしかして師範のいってた罠なのかな?


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・タイル>>→魔獣:パッシプ:土属

 Fランク

 HP 1/1

 筋力 1

 耐久 1

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(うぉおおおお、罠って魔獣なのかよ!!)


 なるほど納得、これなら一度壊した罠も復元するわけだ。

 しかも俺の場合分析することで魔獣って気付いたけど、今までの冒険者は踏んだだけで死んじゃうから魔獣って認識すらしなかったのね。


「落とし穴っぽいね、剣でつついてみたら?」

「了解」


 サリスが剣の先で床を突くと床に穴があいた。


「やっぱり落とし穴だね。」

「深さ2mくらいかしら…」

「俺が上でロープを支えるからサリスはロープで穴の底に下りて底を見てきてくれないかな」

「え、底に下りるの?」

「うん、調査のためだよ」


 魔獣としっている俺はサリスに落とし穴の底を確認させた。


「これすごいわ!」


 興奮して穴の底のサリスが叫んだ。


「土魔石が結構あるわ、回収するね」


(そりゃ罠という名の魔獣だしね…、思ったとおり底に魔石落としてたな)


 俺はニヤリと口元を歪めて笑った。

 落とし穴の底から戻ったサリスは、そんな俺の表情に気付かず嬉しそうに回収した11個の土魔石を眺めてる。


「これだけでもかなりの収入になりそうね」

「落とし穴の底の件は、二人だけの秘密にしようか」

「そ、そうね」

「さて、まだ魔獣と戦ってないし気を引き締めて先に進もうか。」


 そこからいくつかの分岐を経て更に先に進む。

 5mほど先の壁面に影が見える。


 先行するサリスの方を叩き、止まるように合図する。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・スライム>>→魔獣:アクティブ:無属

 Eランク

 HP 36/36

 筋力 2

 耐久 8

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(攻撃的なスライムだな、3匹見えるけど体力低いし平気かな)


 小声でサリスに話しかける。


「あそこの壁面に魔獣がいる。スライムっぽいな、3匹いるかな。」

「よく気付いたわね」

「迷宮灯のおかげじゃないかな、あはは」


 とりあえず笑ってごまかした。


「エンチャント武器で一気に叩こう、数が多いし俺も一緒に叩くよ」


 合図をして二人同時に駆け出し壁面のスライムにサリスは連続切り、俺は突きをいれる。

 突然の攻撃を受けパニックになったスライム3匹は反撃らしい反撃も出来ずに床に染み込んで死体が消えていった。

 残った3個の魔石をサリスがすぐに回収する。


「順調よね」

「いい感じだね!」


 更に先に進み、複数のスライムと4回ほど戦闘になったが、なんなく返り討ちにしたところで時間を確認する。


「そろそろ夕方かしら?」

「うーん、時計を用意する必要がありそうだね」


 迷宮では太陽が出てるわけではないので時間間隔おかしくなるようだ。


「とりあえず、無理せず戻ろうか」

「そうね、魔石も29個たまってるし戻っても黒字は確定ね」


 俺達は巻糸を頼りに元の道を戻り2時間ほどかけて入口にたどりついた。

 外に出ると、ちょうど日が沈みかけてるところだった。


「ちょうどいい時間だったみたいだわ」

「次は時計を準備しよう」


 軽く会話をしてから迷宮管理の小屋のカウンターに向かい魔石の買取をお願いすると、ヒッチが仕事が暇になったようで話しかけてきた。


「無事にもどってきたみたいだね、ベック。」

「はい。無茶せずに進んだのと、サリスがいてくれたから安全でした。」

「ヒッチさん、こんにちは。」

「やあ、最後にあったのは教会だったかな。ベックと交際することになったんだっけ、母様に聞いたよ。」

「はい。よろしくお願いします。」


 ペコリとサリスが赤毛のポニーテールを揺らしながらヒッチに頭を下げて挨拶した。


「小さい時からサリスとベックは仲良くしてたし交際するのも、自然といえば自然かな、僕も応援してるよ」


 ヒッチが優しく俺達の仲を応援してくれたのでサリスが嬉しそうに笑った。

 そこに買取担当が査定結果を告げてきた。


「全部品質のいいEランク魔石ですね、29個ありましたし今の相場だと銀貨87枚になりますが買取でよろしいですか?」

「買取お願いします。」


 俺はそう告げ、銀貨87枚を受け取った。


「かなりの金額になったな、ベック」

「ええ、予想以上です。」

「スライムばかりに当たったのがよかったのかしら」

「まあ二人とも稼ぐのに夢中にならずにキチンと安全を確保してくれよ」

「「はい」」


 ヒッチの言葉に身を引き締めてから、家路についた。


2015/04/22 会話修正

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