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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ドルドス帰国編】
178/192

6-15 玩具

 古塔都市クバの雑貨屋で独特な光沢を持っている綺麗な布であるスラダを女性陣が物色している。

 俺とオルはその姿を眺めて購入が終わるのを待っていた。


「女性の買物って時間がかかるんですね」

「良いものを選ぼうとするからだな。これを嫌な顔を見せずに付き合うのが長く良好な関係を築く秘訣らしいぞ」

「そういえば父も母と一緒にいる時は嫌な顔を見せずにいつも寄り添ってましたね」

「うんうん」

「でも、ちょっと今回は時間がかかり過ぎですよね」

「お土産が絡んでるからな」


 俺は少し思案してスラダを物色中のサリスとアミに装備屋にいくと告げてからオルと一緒に雑貨屋をあとにした。


「付き合わなくていいんですか?」

「オルの矢を補充しにいきたいんだけどと告げたら、まだ時間かかりそうだから行ってきていいわよって言われたよ」

「矢の補充はまだしなくても平気ですけど」

「逃げ出す口実だよ」


 俺はそういって笑うとオルも納得する。


「よくそんなこと思いつきますね」

「それにあながち間違いでもないよ。ハープーンアローを購入したのはここの装備工房だよ」

「そういえば、そうでしたね」

「あの時はオルと一緒じゃなかったからな。他にもオルが使えそうな良いものがないか確認したいかなって思ってね」

「じゃあ、出港まで時間もないですし急ぎましょうか」

「慌てなくても平気さ。今14時で出港は20時予定だから6時間もあるよ」


 大通りを歩いて以前ハープーンアローを購入した装備工房にまた訪れる。

 俺とオルは分かれて工房の中を見て回る。


 しばらくするとオルが俺の所に凄い勢いで駆け寄ってきた。


「すごい装備があったよ!」


 普段から冷静なオルがここまで興奮するのは珍しいので俺はオルの案内で奥の棚に向かう。

 そこで待っていた店員が両手に持ったマスクを見せてくる。

 装着すると重さで頭が前のめりになるんじゃないかと思うほど大きくごつごつしたマスクである。

 顔を保護する装備としては使い勝手が悪そうだ。

 なぜオルがここまで興奮しているのかわからず首をかしげる。


「このマスクは水中で呼吸が出来るらしいんだよ!」

「え!」


 オルの言葉に驚き、すぐに分析してみた。


(【分析】【情報】)


 <<アクアマスク>>

 Fランク

 風属

 魔力 150

 耐久 390/390


(マジックアイテムか!)


 どうやら水中ボンベと一体化した水中で活動する為のマスクらしい。

 店員が説明する。


「風魔石を利用していて短時間ですけど水中で活動できる優れものですよ」

「短時間ってどのくらいの時間なんですか?」


 店員がマスク下部のカバーを外す。


「ここにFランクの風魔石をセットすることで20分ほど水中で呼吸ができますよ」


 オルが驚くのも無理がない。

 大きさに難があるが水中ならば浮力も働くので問題はないだろう。

 しかしこんなところで凄いマジックアイテムに出会ったなと俺は思ってしまった。


「泳ぎが苦手でもこれがあれば活動範囲が広がりますよ!」

「そうだな。でも水中だと弓は使えないからオルも銛で近寄って戦うことになるな」

「あー、確かにそうなりますね」


 その話を聞いていた店員が口を挟んできた。


「それでしたら良いものがありますよ」


 店員が店の奥から変わった形状の銛を持ってきた。

 手元にハンドボウのようなトリガーがついている台座にセットされている。


(【分析】【情報】)


 <<アクアボウ>>

 Dランク

 水属

 魔力 60

 耐久 350/350

 器用 2


(これって水中銃?そうだとするとゴムがあるのか!)


「これは水中で使える弓なんですよ。ここの溝に銛をセットしてセットして使うんです」

「弦になるのはこの太い糸ですか?」

「ええ、伸縮する糸ですよ」


 俺はその伸縮する糸がゴムではないかと思ったので素材を尋ねてみた。


「クピンサルはご存知ですよね?」

「クピンサルが吐き出す糸を織ればスラダになるんですよね」

「そうです。その糸なんですけど闇魔石で腐食処理を施すと伸縮する糸になるんですよ。それを撚り合わせてる利用してるのがこのアクアボウなんですよ」

「クピンサルの活用範囲って広いんですね…」

「まあ闇魔石を多く使うので貴重なんですけど、水中で魔獣で戦うには最適な素材ですしオススメですよ」


 腕組みして思案する。

 確かにアクアマスクとアクアボウは魅力的だ。

 しかし水中での魔獣との戦闘を思い浮かべた場合、機動力が足りないなと思ってしまう。

 せめて素早く移動できないと危険だ。


 店員に尋ねてみると雑貨屋に売っている足につけるフィンを組み合わせてみたらどうかとアドバイスを受ける。

 たしかにそれならば問題はかなり改善される。


 オルと相談して予備を含めてアクアマスクとアクアボウを6個購入することした。

 かなりの金額になったが活動範囲が広がる為だと思い支払いを済ませて店を後にした。


 サリスとアミを迎えにいこうと歩き出すと大通りの先に二人の姿が見えた。

 買物が終わったらしい。


「二人とも大きな荷物を抱えてるけど良い武器でも購入できたの?」

「小型船に戻りながら説明するよ。みんな荷物を抱えすぎちゃってるしな」


 俺は小型船に戻りながら購入したアクアマスクとアクアボウの件をサリスとアミに話した。

 二人とも大きく目を見開いて驚いている。


「すごいです!」

「ああ、見つけてくれたオルに感謝しなきゃな」

「そのアクアボウって陸上でも使えるんじゃないの?」

「使えると思うよ。ただし見てのとおり長尺だから持ち運びを考える必要があるな」

「そうね」


 小型船に辿りついた俺達はそれぞれの荷物を船倉にしまう。

 フィンの購入が残っているので俺達四人はまた街の雑貨屋に向かう。


「しかしクバの装備工房って海で戦うための装備が充実してるわね」

「行きはハープーンアローを購入したし、帰りはアクアマスクとアクアボウを購入したし本当にそうだな」

「陸より海で戦う機会が多かったんだでしょうね」

「オルのいうとおりですー」

「そうだな」


 しばらく歩くと目当ての雑貨屋に着いた俺達は足につけるフィンを予備を含めて6個購入する。

 しなやかに曲がる素材が使われていたので店員に尋ねるとクピンサルが吐き出す糸を溶かしてから再度加工したものらしい。

 海で戦う装備が充実している背景にはクピンサルが存在したのも一因だろうなと俺は思った。


 ふと雑貨屋の棚で変わったカードを見つけた。


(【分析】【情報】)


 <<飛竜の偶像>>

 Fランク

 火属

 魔力 10

 耐久 60/60


(なんか見覚えがあるカードだな)


 俺は店員にこのカードについて尋ねてみた。


「このカードですけど夜になってから遊ぶ為の子供用の玩具ですよ」


 俺は玩具という言葉で幼い頃にアキアとヒッチがジャスチから贈られたカードを思い出した。

 たしか術式によって再現された人形が一時的に出現する玩具だったはずだ。

 それと同じ系統のものらしい。

 しかし夜になってから遊ぶというのが気になる。


「どんな風に遊ぶんですか?」

「蒼いカードを持って簡易スペルを唱えると対になっている赤いカードから飛竜の偶像が上空に舞い上がって破裂するんですよ。夜の空に広がる煌めきが綺麗なんですよ」


 俺は唖然とした。

 転生前の打ち上げ花火である。


「そ、それって火事になったりして危ないじゃないんですか?」

「カードが一定の距離はなれないと破裂しない術式が組み込んであるので安全なんですよ」

「なるほど…」

「しかも3秒くらいしか燃えない火の粉なので地上に落ちて火事にもならないんですよ。夜の浜辺で使うと盛り上がりますよ」


 そこにオルがやってきて店員が説明しているカードを見て驚く。


「クバにまでこのカードは普及してるんですね」

「オルは知ってたの?」

「パラノスで古くからある玩具ですよ」

「そうするとこの商品はパラノスから持ち込まれたのかな」

「お客さんの言うとおりパラノスからの輸入品ですね」


 俺はふとこのカードがある事に使えるんじゃないかと考えて試しに10セット購入することにした。


「玩具に興味があったんですか?」

「いや、戦闘に使えないかと思ってね」

「え?」

「これって破砕粘土に包んで使ったらどうなるか試してみたいのさ」

「!」


 オルが凄い顔をして俺を見つめた。


「す、すごいですよ。それ!好きなタイミングで爆発させることが出来ますよ!」

「うん。もし成功したらいろいろと捗るよ。水の中にいる魔獣や、体の中に取り込もうとするスライム系の魔獣にも有効だろうな」

「あとは罠の設置も出来ますよ」


 俺はオルの言葉にうなずいた。


「もし俺の考えが成功したらパラノスに着いたあとに作ってる工房を探して大量購入しないとな」

「そうですね」

「玩具といっても馬鹿に出来ないよなー」


 俺はそういいながら他の商品を見ているサリスとアミの元に戻るのであった。


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