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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ドルドス帰国編】
173/192

6-10 シーファルコン

 竜暦6561年9月13日


 少しづつ空が曇ってくる。

 どうみても数時間後には雨が降りそうな状況だ。


 時間を見ると昼12時を過ぎたところである。

 俺は【地図】を使い風雨を避けることが出来る入り江を探す。

 いまいる場所から少し先になるが入り組んだ場所にある小さな入り江を見つけた。


 入り江までは1時間ほどでいけそうなので、その入り江で停泊しようと考えた俺は備え付けの椅子に座っているサリスに声をかけた。


「天気が悪くなって波も荒れそうだから、ある程度進んだら入り江に避難するよ」

「この近くによさそうな入り江があればいいわね」

「そうだな。まあ進みながら探すよ」

「なにか準備は必要かしら」

「うーん。入り江に魔獣がいないかどうか注意するくらいかな」

「そこは確かに注意が必要ね」

「住み着いている魔獣がいるかどうかは賭けだよなー」

「オルとアミも起こしたほうがよさげね」

「雨が降り出すか、波がもっと荒れてきてから起こせばいいよ」

「はい」


 俺は南西に向かって海岸線に沿って進む。

 徐々にだが波が高くなってきた。

 波しぶきが高くあがるのが見えはじめる。


 目当ての入り江が近くなったので、サリスにオルとアミを起こしてもらう。


 時間を見ると13時である。

 この天気でなければ二人には休んでいて欲しかったがそうも言っていられない。


「波が荒れてきたから、あそこの入り江に避難するよ」


 俺は前方の海岸線を指差す。


「サリス、操船を頼めるかな。俺とオルとアミで後部デッキに出て魔獣にそなえるよ」

「わかったわ」


 俺は操舵輪をサリスに渡す。


「魔獣がいてもこの船の大きさ見たら襲ってこないですー」

「念のためだよ」

「うん、どんな魔獣がいるかわからないから警戒するに越した事はないよ」

「むーー」


 寝起きでアミの機嫌が悪いようだ。

 普段はこんなことはないのだが船旅で疲れているのだろう。

 オルがアミになにかを囁いくと途端にアミの機嫌がよくなった。


「がんばるです」


 全天候型レインコートを羽織るとすぐにアミが後部デッキに出ていった。

 俺はオルになんていったのか尋ねてみた。


「えっと島嶼都市タゴンについたら、またあの宿に泊まりましょうって言っただけですよ」

「あー、あそこの宿はアミのお気に入りだからな。でもそれだけであの頑張りようは解せないな」

「ここで魔獣に襲われて船が傷ついたら、あそこで泊まる日程が取れないかもとも言ったんですよ」

「なるほど、それであのやる気につながったのか」


 その話を聞いていたサリスが口を挟んできた。


「アミはタゴンでそれぞれペアで泊まることを考えてるんだから、オルもしっかりしないとね」

「え!」

「行きは四人部屋だったけど、帰りはたしかに二部屋取れる可能性があるな」

「そうね」

「オルもがんばらないとな!」


 また四人で水上コテージに泊まると思っていたオルにとっては青天の霹靂であった。

 みるみるオルが緊張していくのが分かる。


 今までも宿の同じ部屋で一緒に過ごしているんだから、そんなに緊張することはないんだけどなと思いながら俺も全天候型レインコートを羽織りガードマスクを着けてから後部デッキに出た。

 ほどなくしてオルも同じように全天候型レインコートを羽織りガードマスクを着けて船室から出てくる。


 スピードを落とした小型船は波飛沫が飛んでるくる荒れた波の中をゆっくり進み入り江にたどり着いた。

 俺は碇を落として停泊準備を行う。


 入り江の中の波は比較的穏やかなので、ここで天気の回復を待つことにした俺達は海を眺めて異常がないか見張りを続けたが特に問題なさそうだった。


「魔獣はいなさそうだな」

「戻るですー」

「そうですね」


 船室に戻ろうとしたとき海上に黒い影がおちるのが見える。

 俺は空を見上げると魔獣が襲いかかってきていた。


「頭を下げろ!!!」


 咄嗟に身を屈めたことで俺達は魔獣の爪に襲われずにすんだ。

 遠ざかる魔獣の姿目掛けて俺はチェーンハンドボウでスパイクを連射する。

 カートリッジが空になるまで撃ち込んだが、そのうちの数本が魔獣に命中したようだ。

 海上に落ちていく魔獣を狙ってオルがハープーンアローを放つが一射目は外してしまった。

 そのまま着水し波間に漂う魔獣目掛けて二射目を放つと今度は胴体に当たった。


(【分析】【情報】)


 <<シーファルコン>>→魔獣:アクティブ:風属

 Eランク

 HP 35/168

 筋力 2

 耐久 2

 知性 2

 精神 1

 敏捷 8

 器用 2


(かなり弱ってるな)


 アミが高強度ロープを引っ張りシーファルコンを引っ張る。

 船縁まで引っ張ったところで俺は至近距離からシーファルコンの頭部をチェーンハンドボウで狙ってスパイクを撃ち込み息の根を止める。


 シーファルコンを引き上げてから観察したが翼を広げると4mほどある猛禽類の魔獣だった。

 足の爪がかなり鋭いのがわかる。


「海上の影に気づいたんだがみんな無事でよかったよ」

「ベックのおかげで助かったよ。ありがとう」

「ありがとですー」

「たまたまだよ。さてと魔石の回収と最初に放ったハープーンアローの回収をしないとな」


 アミは一射目で外してしまったハープーンアローを高強度ロープを引っ張って回収している。

 オルはシーファルコンから魔石を回収している。

 俺はパラノスの魔獣図鑑に載っているシーファルコンの記述を見つけた。

 挿絵を見る限り、目の前の魔獣と同じだと思える。


 オルとアミにシーファルコンのページを見せる。


「シーファルコンという魔獣なんですね」

「ああ、しかし魔獣図鑑だと討伐証明の場所とか食べれる場所とかの記述は載ってないな…」

「羽根だけでも毟るです!」

「そうだな」


 そこにサリスが後部デッキに出てきた。


「片付いたみたいだけど、操舵輪で待機しなくてもよさそうね」

「ああ、声をかけるのが遅くなってごめん」

「いいのよ」


 サリスが図鑑を覗き込む。


「え!この魔獣がシーファルコンなの!」

「サリスさんはシーファルコンを知ってるんですか?」

「どこかの討伐掲示板に書いてあったっけ?」

「古塔都市クバでカオマンガイを食べたでしょ、あの時に使ってた鳥肉がシーファルコンの肉なのよ。食材屋で聞いたから間違いないわ」

「そうすると肉も採取できるってことだな」

「美味しいお肉で嬉しいです!」

「今度調理してあげるわね」

「わーい」


 思いがけない場所で食材が調達できたことに俺達は喜んだ。

 魔獣を解体しおわるのを待っていたのか大粒の雨が降り出した。

 俺達は急いで船室に戻る。


 時計を見ると15時20分だった。


「少し早いけど食事にしようか」

「そうね。ちょうどいいからシーファルコンの肉を焼いちゃいましょうか」

「大丈夫?」

「波も静かで停泊してるから調理するのは問題ないわよ」

「それじゃあ、お願いするよ」


 サリスがうなずいて船室に向かうとアミもついていく。

 操船室に残った俺はオルと雑談しながら料理の出来上がりを待っていた。

 しばらくして船室の扉が開く。


「出来たわよ。塩コショウして焼いただけの簡単な料理だけど美味しいと思うわ」

「良い香りですー」

「今日の夕食はご馳走になったな」

「そうですね」


 皿に盛られたシーファルコンの焼いた肉を頬張ったが確かに美味しい。

 野性味のたっぷりの噛み応えがある肉だが噛めば噛むほど肉汁が溢れ出てくる。

 俺達はシーファルコンの肉を堪能したあと薬草茶を飲みながら一息つけた。


 キャビンの壁にあたる雨音が激しくなっていく。

 アミに天気が回復するか尋ねてみた。


「うーん。止むのはもっとあとになりそうです」

「そうなると出発できるのは夜になりそうなんだな」

「はいです」

「休息をとって明日に備えましょ」

「そうですね」

「じゃあ、少し横になっておくか」


 俺はこの入り江を出発する時間によって明日の予定が変わるなと思いながら、船室の寝台で横になって目を閉じるのであった。


2015/06/11 表現修正

2015/06/11 誤字修正

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