表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ヒノクス旅行編】
163/192

5-51 ガバナンスライム

 竜暦6561年9月3日


「ガイシュ迷宮の転移の仕組みにも慣れたわね」

「最初は驚きましたけど確かにそうですね」

「迷宮ごとに仕掛けがちがって楽しかったです」

「今回の旅行でパム以外のクシナやガイシュの迷宮を見て感じたけど本当に不思議だよな」

「そうよね」


 Eランク魔獣の広間に向かいながら俺達は迷宮の感想を話していた。


「アミさん聞きましたけどパム迷宮は迷路のようになってるんですよね?」

「ああ。マップがないと移動がきつい場所だな」

「楽しみですね」


 オルの顔を見るとパム迷宮での修行も楽しみらしい。


「しかし迷宮って不思議な事が多いわよね。魔獣の死体をそのままにしてれば床に吸収されちゃうし、定期的に魔獣が転移で補充されるし」


 サリスが首をかしげるので、俺は以前から思っていた自論を話した。


「迷宮は大きな魔獣の体内かもな」

「「「え?」」」


 三人が驚いた顔を見せたが俺は話を続けた。


「人でも魔獣でもいいんだけど死体となった場合、時間をかけて迷宮に吸収されるってことは食事を取ってるような感じだと思ってね」

「面白い考えですね」

「そうすると落し穴や落石の罠なんかもそれで補充されるってことも説明がつくわね」

「あくまで仮設だけどな」


 アミが通路の壁をいきなり殴ってみる。


「こうやると迷宮は痛みを感じるです?」

「これだけ巨大だとその程度の痛みは感じないんじゃないかな」

「そもそも意思があるかどうかも怪しいわね」


 そんな会話をしているとEランク魔獣のいる広間が見えてきた。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ジャイアントサーペント>>→魔獣:アクティブ:水属

 Eランク

 HP 176/176

 筋力 2

 耐久 1

 知性 1

 精神 1

 敏捷 2

 器用 2


(亜種はいないな)


 広間の中央に2mほどある蛇の魔獣が3体いるのが見えてきた。

 鱗が光ってるのが見える。


 俺はチェーンハンドボウを持って駆けだし、鎌首を持ち上げて威嚇するジャイアントサーペントに向けてスパイクを次々と突き刺していく。

 太さ15センチほどの図体を貫いたスパイクによってジャイアントサーペント達が身をよじる。


 俺は的確に距離を取りながらジャイアントサーペントの頭部を狙い止めをさしていく。

 3匹が動かなくなったところで魔石の回収を行った。


「この程度じゃ相手にならないわね」

「チェーンハンドボウが無かったら苦戦してるよ。武器のおかげさ」


 俺がそういうと魔石を回収しおえたアミとオルが口を開く。


「でも当てるのは上手くなってるです」

「たしかに動きながら狙いをつけるのは難しいですしね」

「そういってもらえると嬉しいな。ありがとうな」


 感謝の気持ちを伝えたあと、光る床の前に集まる。

 合図と共に光る床に乗るとDランク魔獣のいる広間につながっている通路に転送された。


「さてこれが最後のガイシュ迷宮での戦いだな」


 俺の言葉に三人も大きくうなずく。

 かなり気合いを入れているのがひと目でわかる。


 先人の残した魔獣の情報を探すと、俺は壁に書かれた魔獣の名前を見つけた。


『この先ガバナンスライム→』


 俺はヒノクスの魔獣図鑑を開いて確認する。

 挿絵と説明を読むと巨大なスライムである。

 物理攻撃に強くエンチャント武器もしくは火でないとマトモにダメージが入らないと書かれていた。

 三人にそのページを見せる。


「破砕粘土を使って一気に片付けるか、修行も兼ねて時間をかけて仕留めるか、どうするか迷うな」

「私は時間をかけて仕留めたいわね」

「わたしもですー」

「僕は修行もしたいですけど危険な相手ならすぐに倒すほうが安全だなと思いますけど」


 三人の意見を聞いた俺は少し思案して三人に提案する。


「そうしたら最初は近接主体で攻撃を仕掛けよう。そしてダメージを与えたら俺がマルチロッドを使って仕留めるよ」

「僕はどうします?」

「オルには火矢で援護してもらおうか」

「了解」

「あと戦っていて危険な兆候があったら、即座に破砕粘土を用いて倒そうと思うからアミとサリスは即座に距離をとってくれ」

「はい」

「はいです」


 打ち合わせが終わった俺達は通路の進み、ガバナンスライムのいる広間を目指す」

 しばらく進むと広間の中央に巨大なスライムが見えてきた。

 高さは3mほどあり緑色をした図体の表面がうねうねと蠢いてるのが見える。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ガバナンスライム>>→魔獣:パッシブ:無属

 Dランク

 HP 521/521

 筋力 2

 耐久 16

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 2


(防御に特化しているようだけど、あの巨体に取り込まれたら危険だな)


「スライムが巨大になると不気味なんですね」

「あーー、やっぱり遠慮したいかもです」

「私もそうしようかしら」


 サリスとアミがガバナンスライムの不気味な姿を見てちょっと腰がひけたみたいだ。

 俺もあの姿に近寄るのは遠慮したいのでよくわかる。


「ふむ、そうしたら破砕粘土を使おうか」

「そうだね」


 オルが破砕粘土付きの矢を番え、サリスとアミは盾を構える。

 俺はマルチロッドに火魔石をセットしてからオルに合図を送る。


 広間の入口付近からオルが破砕粘土付きの矢をガバナンスライムに突き刺すのを見てから、俺は《バースト》と呟く。

 火の玉がガバナンスライムに直撃して身を捩じらせるのが見えたが爆発が起こらない。


「え!」


 オルがその様子をみていたようで驚いた顔をしてから俺達に状況を話す。


「破砕粘土付きの矢が取り込まれました!」


 俺は状況を把握したガバナンスライムに取り込まれたことで火の玉による破砕粘土の爆破が成功しなかったのだ。

 ガバナンスライムが俺達のほうににじり寄ってくる。


「破砕球はどうだろう」

「取り込まれる際に紐の火が消える可能性があるのでダメだと思います」


 俺とオルはにじり寄ってくるガバナンスライムを避けながら策を考える。

 ガバナンスライムが体の一部を伸ばして横薙ぎを繰り出してきたがアミが高熱を発する盾で防いでくれた。


 その隙に伸ばした体の一部をサリスがフレイムストームソードで切断する。

 俺も移動しながら《バースト》で火の玉をあてていく巨体の一部をえぐっていく。


 俺達は広間の外周を移動しながら、少しづつガバナンスライムにダメージを与えていった。

 それと共に徐々に徐々に巨体が小さく萎んでいくのがわかる。


 高さが2mほどになったところで取り込まれた破砕粘土付きの矢が露出したのを見て俺は三人に合図をする。


 全員がガバナンスライムから距離を取ったのを確認して俺がマルチロッドを構えて《バースト》と簡易スペルを唱える。

 火の玉が射出されて破砕粘土付きの矢の近くに着弾すると大きな爆発と共にガバナンスライムの巨大が弾け跳んだあと大きな魔石が転がり落ちた。


「やっと倒せましたね」

「やったです」

「でも取り込む攻撃って危険ね」

「確かにスライムほどの大きさだと問題ないけど、さすがにこの巨体だと脅威だな」


 その言葉に三人がうなずく。

 それからオルが大きな水魔石の回収を終えると、俺達は清浄送風棒でガバナンスライムの飛び散った破片を除去してから転移石を使いガイシュ迷宮の外に出た。


 オルとアミは魔石工房に井戸用水魔石を調達に行くというので冒険者ギルドから出て行く。

 俺とサリスはプレートの返却のために冒険者ギルドに残った。


 副代表のオオハと話しをしてプレートを返却した。


「良い修行は出来たようですね」

「はい。また機会があればガイシュ迷宮に挑戦しに来たいです」

「そういってもらえると嬉しいわね。ドルドスに戻ったらガイシュ迷宮の宣伝をしてもらえると嬉しいわ」

「ヒノクスの冒険者で挑戦する人が減ってるんですか?」

「話によるとガイシュ迷宮が出来た頃よりは他の国からくる冒険者が減ってるらしいのよ。もっとこの都市が栄えるには多くの冒険者に集まってもらったほうがありがたいのよ」

「たしかにそうですね」

「では旅の無事を祈ってるわね」


 オオハがにっこり笑って別れを挨拶をしてくれた。

 俺とサリスも頭を大きく下げてからその場をあとにした。


「短い滞在時間だったけど貴重な体験が出来たわね」

「うん。ヒノクスに来て本当によかったな」


 大通りをサリスと二人で歩く。

 またいつか来ようと俺はガイシュ迷宮都市の街並みを心に刻み込んだ。


2015/06/02 表現修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ