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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
乳児期~少年期
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1-15 異常事態

 竜暦6557年8月20日


「そっちに一匹逃げたわ!」

「たあああ」


 逃げ出したラビットの背に槍の一撃を入れ、ラビットが絶命した。

 すべてのラビットを倒し終えたところで、俺達は額の汗をぬぐう。

 目の前に13匹のラビットの死体が横たわる。

 セリスが倒した数は9匹、俺は4匹。


「はー、予想以上に疲れちゃったわね」

「ああ、体力が減ったら全力で逃走するのがたちが悪い」

「その上、仲間が駆けつけて来るのも厄介だったわ」


 俺達はFランククエストのラビット狩りでパム郊外東部の林にきていた。

 報酬が高めだったから受けたのだが、ここまで厄介とは思ってなかった。


「さてと、さばいて魔石を入手したら、採取箱にラビット入れていこう」

「今回の討伐数は10体だから、もう終わっちゃったわね」

「大変だったけど時間としては短時間で終わったし、あっけなかったね」

「うん」

「じゃ時間も余ったし回収おえたら街に戻って別のクエストでも行ってみる?」

「えっと、せっかく林まできたんだし、この先にある泉で休憩しようよ」


 サリスから休憩を提案するのは珍しいし、確かに疲れていたので首を縦に振る。

 そそくさと回収を終えた俺達は木陰を歩きながら泉まで歩いていった。

 泉の近くの空き地に座って休憩を始めるとサリスが語りかけてきた。


「ベック、今朝渡した鞄をアイテムボックスから出してくれないかしら」

「ああ、ちょっとまってね」


 アイテムボックスから受け取った鞄を取り出すとサリスに渡した。

 その鞄からサリスはランチボックスを取り出し、頬を紅潮させて俺に渡す。


「作ってみたの食べてみて…」


(うはー、愛妻弁当きたわー!!!)


「あ、ありがと」


 交際を始めたといっても、ほぼ毎日冒険者としてクエストに一緒に出かけるのが中心で、いままで恋愛イベントらしいのがなかった俺としてはちょっとドキドキしちゃってる。

 いや交際始めたんだからこういうイベントが、もっとあっても良かったんだが、どこで道を間違えたんだろう?

 もっとエロエロなイベントあってもよかったよね、あー、もっと早く気付けば…


 ランチボックスをあけるとパンとハムと果物が調理前の状態で入っていた。

 サリスを見るとうつむき加減でこちらに見てくる。


(やっぱりこうしてみるとサリスは可愛いな~)


 そう残念系美少女は健在だった。


 俺はパンを頬張り、ハムをアイテムボックスから取り出したナイフでスライスしながら食べてから声をかけた。


「美味しいよ」

「わーい」


(俺が料理覚えたほうが幸せになれそうだな…)


 俺はナイフでパンとハムをスライスし、ハムをパンでサンドしてからサリスに渡す。


「どうぞ」

「あ、ありがと」


 サリスが小さなお口でサンドを頬張りポニーテールを揺らしながら幸せそうな笑みをうかべる。

 旅の資金集めに気がいってしまって、こういったサリスを大事にする時間を作ってこなかった俺に原因がありそうだな。

 これからはサリスにも気を配っていこう。


「サリスに提案なんだけどいいかな」

「なあに?」


 食後、アイテムボックスから水筒を取り出し喉を潤したあと俺はサリスに語りかけた。


「最近クエストやりすぎてると思うんだよね、クエストいくのは二日に一回にしないかい」

「え、ベック疲れちゃったの」

「いや、サリスともっとゆっくり過ごす時間が欲しいしさ」

「え」


 そういうとサリスの顔がみるみる紅くなっていく。


「い、いや変な意味じゃなくて、街でゆっくり買い物したりさ、部屋でくつろいだりさ、お茶したりしたほうがいいんじゃないかとおもってね」

「う、うん」


 サリスが顔を紅くして俯いてる。

 破壊度最強だな、これ!

 これが青春ってやつなのか…


「えっとサリスを大事にするね」

「よ、よろしくお願いしましゅっ」


(おいおい、ここで噛むとかお約束すぎんだろ、このやろーーーー!)


 俺はサリスの肩に手をかけ引き寄せる。

 サリスの肩はびくんと一瞬震えたが、すぐに体を預けて、俺の肩に小さな頭を乗せてきた。

 肩寄せ合い、手を寄せ合って握りしめ二人は泉でゆったりした時間を過ごす。


(幸せだなー)


 俺は某若大将みたいなことを思い描いてボーッと泉を見つめた。


 その時だ!

 ぐわんと視界が歪み、強烈な悪寒が全身を駆け巡る。

 サリスも異変を感じて握っていた手に力を込める。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・シード>>→不明:不明:不明

 不明

 HP 不明/不明

 筋力 不明

 耐久 不明

 知性 不明

 精神 不明

 敏捷 不明

 器用 不明


「逃げるぞ!サリス!」


 俺は恐怖で全身から冷汗が吹き出すのを感じつつ脱兎の如く飛び上がり、サリスの手をひいて林の出口へ向かって猛然と無我夢中で走った。

 林の出口についても背後から受ける悪寒が消えず、結局俺達は何かから逃るように街に駆け込み、異常事態が発生したことを冒険者ギルド受付のジュイスに告げた。


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