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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ヒノクス旅行編】
159/192

5-47 正午計

 竜暦6561年8月30日


 サリスに朝6時に起こされた俺は大きなあくびをしながら馬車の外に出た。


「おはようです」

「おはよう」


 オルとアミが街道脇に動力車付き馬車を止めて魔獣2体を解体していた。

 よく見ると大きなフクロウの姿をしている夜のハンター、マオトーインだ。


「昨夜襲ってきたんだな」

「ええ、休憩したときに解体にしようと馬車に括りつけておいたんですよ」

「マオトーインの羽根は質がいいんだっけ」

「ええ。この手の魔獣の羽根は矢羽根に最適ですからね」


 サリスと見るとシートを敷いて調理中だ。

 俺はチェーンハンドボウを持って馬車の屋根に乗り周囲を警戒する。


 俺は【地図】を実行する。


(イコサ、ショト、リオマの村を通って歓楽都市ジョアンも過ぎたところか。結構進んでるな)


 俺は地図を見ながら少し考える。

 このままのペースだとガイシュ迷宮都市に着くのは今日の夜中になる可能性がある。

 中途半端な時間になりそうだ。

 しかもオキオ村とガイシュ迷宮都市の間には鬱蒼としげる森があるが、あそこを夜間進むのは少し遠慮したい。


(大河都市キワガで一泊するほうが安全そうだし、アミとオルの仮眠も心配しなくてよくなるな)


 サリスが食事が出来たと呼ぶのでシートに集まる。

 アミとオルもマオトーインの解体を終えていた。


 サリスがご飯の上に肉野菜炒めを乗せた料理を差し出してくれた。

 転生前の世界でいうなら肉野菜炒め丼ってやつだ。


「手軽にすませる為に一つのお碗に全部のせちゃったんだけどごめんなさい」

「とっても美味しいですー」

「肉と野菜を炒めたソースがライスに絡んで美味しいですね」

「うん、肉汁がライスとあうな!」

「手抜き料理なんだけど喜んでもらえると嬉しいわね」


 サリスの料理の発想は本当に柔軟である。

 美味しいものを食べれるということに幸せを噛み締めた。


(サリス、ありがとうーーー!)


 丼物を食べ終えた後、サリスがグリーンティーを入れてくれた。

 ちなみに俺は砂糖抜きにしてもらう。


 グリーンティーを飲みながら今日の宿泊の件について三人に提案してみる。


「このまま進むと深夜にガイシュ迷宮都市に着きそうなんだけど、時間調整のために今日の夜は大河都市キワガで宿泊しようと思ってるけどいいかな」

「わーい。ベッドで寝れるです!」

「でも早く戻ったほうがいいんじゃない?」

「オキオ村からガラキ村、さらにガイシュ迷宮都市まで深い森もあるだろ。夜中に通りたくないってのも理由があるんだけどね」

「たしかにあったわね…」

「それに夜間を馬車で進まなければアミとオルもガイシュ迷宮都市についてすぐに活動できると思うんだよ」

「たしかにそれはありがたいですね」

「じゃあ今日はキワガで一泊するのね」

「うん、無理をしてもいけないしね」

「了解」

「わかったわ」


 飲み物を飲みおえると片付けをしてアミとオルは馬車の中に仮眠をとるために入る。

 俺は御者台に座り手綱を持ち、サリスが隣に座る。


「出発するよ。《オン》、《ドライブ》」


 手綱を緩めるとスルスルと動力車付き馬車が動きだし、徐々に加速していく。


 東に向かって街道を進むが、あまりに朝陽が眩しいのでガードマスクをつける。

 ガードマスクのサングラス効果は本当に凄い。


 あれだけ眩しかったの陽の光がそんなに眩しく感じない。


(目の保護部分だけ売ってるといいな。キワガの装備工房に寄ってみようかな…)


 そんなことを考えながら街道を進む。

 しばらく進むと陽もかなり高くなってきたのでガードマスクを外した。


 草が生い茂る草原の中の街道を進む。

 前方に村が見えてきた。


「あそこの村って首都にいくときによったかしら…」

「夜中に通り過ぎた村だな」

「それで見覚えがなかったのね」


 街道は村の中を通っているので、そのまま動力車付き馬車で村に立ち入る。


 広場にいた村人に話をきくとヤカ村というらしく宿場として生計を立てているらしい。

 歓楽都市ジョアンがあるのでこの村に泊まる人が多いのだろう。


 ついでにこの先にある村も教えてもらったがイアクト村といい同じく宿場で成り立っている村らしい。

 俺とサリスは村人に礼を言って、さらに東に進むことにした。


 さらに馬車を進めると1台の乗合馬車を追い抜く。

 ヤカ村からイアクト村に向けて移動している馬車らしい。

 人もかなり乗っていた。


 さらに1時間ほど進むと前方から乗合馬車がくる。

 こちらは先ほどと反対でイアクト村からヤカ村に向けて移動している馬車らしい。

 同じく多くの人が乗っていた。


「この街道はすごいわね」

「港湾都市から首都へ繋がってるし、さらに歓楽都市もあるからな。ヒノクスでも主要な街道だろう」

「本当にそうね」

「ドルドスだってパムから首都フラフルまでの街道は賑わってるらしいよ」

「一度いってみたいわね」

「動力車付き馬車も手に入ったし来年あたり行ってみようか」

「いいわね!」


 嬉しそうな顔をサリスが見せる。

 しかしドルドス人である俺とサリスはドルドスの首都にいくより先にヒノクスの首都にいくんだから、かなり貴重な経験をしているんだろうなと俺は思ってしまった。


 ほどなくしてイアクト村が街道の脇に見えてきたが、そのまま通り過ぎてさらに東に進むことにした。

 時間を確認すると11時だ。

 かなりいいペースで進んでいる。


 サリスが中天に近い陽を見て正午計を取り出し、付属の方位計を見て南に向ける。


「そろそろお昼よね?」

「11時だね」


 正午計を確認してからしまう。


「あまり大きく時間はズレていないみたいね」

「まあ海上と違うしね。時刻合わせも必要ないよ」


 俺は添乗員時代に教えてもらった知識を思い出した。

 地球の赤道付近を参考にすると、外周約40000kmを24等分した約1667kmが1時間ずれが発生する距離になる。

 赤道以外の場所となると、1667kmに三角関数のcosを緯度に当てはめる計算で求めることができる。


 難しい数値は忘れてしまったが、東京の北緯35度では約1365kmだったという数値だけ覚えている。

 そう考えると、ヒノクスの国内を移動するだけならさほど時間は変わらないはずだ。


 先ほどサリスが取り出した正午計は太陽が真南を指したきた時間を昼0時にする道具だ。

 船乗りの間では貴重だという話をエワズで聞いた。

 たしかに長い距離を航海をする場合時刻のずれを調整するのは重要になってくる。


 移動時間やこの時間のずれを見ても、この世界は転生前の地球とほぼ同じ外周約40000kmではないかと俺は思っていた。

 そうすると確実に他の大陸も存在すると思われる。


 外洋に生息している大型の水棲魔獣の問題がなければ他の大陸に調査にいけるのだが本当に残念だ。

 やはり飛行船の開発がないかぎり他の大陸への旅は厳しいだろう。


 他の大陸にいけばそこに人族が生活している可能性もある。

 スタード大陸とは別の文化を形成していることも考えられるのだ。

 これはロマンである。


 そんな海の向こうに存在するかもしれない大陸を想像をしていると前方に村が見えてきた。

 時刻は13時半である。

 村の近くに進むと道を歩いている村人がいたのでこの周辺のことを尋ねてみた。


 この村はアヨガン村といい農業で生計を立てているという話が聞けた。

 礼を言ってから東に向けて動力車付き馬車を進める。


「さっきの人が言ってたけど、このさきはもうキワガなのね」

「夕方には着きそうだな」

「はやく着くなら食材屋に行ってみようかしら」

「俺は装備工房でガードマスクの目の保護部分だけ売ってないか調べてみたいな」

「口元部分はいらないってこと?」

「夕暮れ時や朝早くだと太陽が眩しいときがあるよね。あのときにあればいいかなって思ってね」

「あー。あれは確かに眩しいわよね」

「そうなんだよね。それで目だけ保護する部分があれば楽になるかなって思ったのさ。キワガになければガイシュでも聞いてみようと思ってるけどね」

「旅の事になると、いろいろ考えてるわよね」

「少しでも快適に旅をしたいからね」

「4歳の頃の夢をかなえるって本当に凄いわよ」


 そういってサリスが呆れている。

 本当は転生前から数えると4歳どころの話ではないのだが…

 とりあえず俺はにっこりと笑っておいた。


 天気の良い空を見上げ、周囲に広がる草茂る平野をみながら俺は思った。


(やっぱり旅って最高だなーーー)


2015/05/27 誤字修正 

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