5-33 ガイシュ迷宮
竜暦6561年8月16日
今朝は宿の厨房を借りたサリスが朝食を作ってくれた。
「サングリエの肉と野菜のガレットよ、どうぞ」
そういって食堂のテーブルにサリスとアミがガレットの盛られた皿を並べる。
「美味しそうだな」
「たまにはドルドスの味もいいかなと思ってね」
「これがガレットですか」
「そういえばオルは初めてだったな」
「そうですね」
「ガレットは美味しいのです!」
俺達は美味しいガレットを味わったあと、薬草茶を飲みながら迷宮の打ち合わせを行う。
「まずはオオハさんからプレートを受け取る、次に売店で破砕粘土を購入しようと思う」
「そのあと迷宮突入よね」
「その件ですけど、いいですか」
オルになにか考えがあるらしい。
「昨日の説明で、クエストの事後報告って話がありましたよね」
「ああ、そうだな」
「迷宮に入る前に、FからDまでの依頼の出ている魔獣の採取する部位を調べる必要があります」
「あー、そうか。知らない魔獣だと困るな…。でも依頼票の補足に書かれてるんじゃないかな?」
「詳しく採取部位が書いていればいいんですけど、ただ肉と漠然と書かれていると困りますので」
「じゃあ、解体関係の確認はオルに一任するよ。確認の手が足りないようなら指示をしてくれ」
「わかりました」
オルがうなずいてから、さらに話を続ける。
「それと水魔石の件ですけど、遭遇したDランクの魔獣が水魔石を出さない場合ですが、入口からの再チャレンジをせずに倒すほうがいいと思います」
「理由を聞いてもいいかしら」
サリスが首をかしげながらオルに尋ねる。
「魔石工房に水魔石を持ち込んで、井戸用水魔石にしてもらおうという話でしたよね。でも魔石工房では水魔石以外も様々な加工を行うので、どの魔石でも持ち込めばそれなりに喜んでもらえると思います」
俺はそこまで聞いて、オルの言いたいことを察した。
「なるほど、魔石工房に他の属性の魔石を持ち込んで、同じ程度の水魔石と交換してもらうのか」
「ええ、そうです。再チャレンジの手間を考えると、こちらの方がメリットが多いと思うんですけど、どうでしょうか?」
「わたしはオルに賛成ですー」
「私もいいわ。あまり長く迷宮に潜るのは疲れも溜まって危険だしね」
「俺も同じ意見だな、今回の迷宮での目的は、井戸用水魔石と修行の2点だから、それさえ満たせれば問題ないよ」
「次にCランクの水魔石で井戸用水魔石がいくつ出来るかですけど、魔石工房の腕によって変わると思いますが20個前後できると思います」
「そうなると、Dランクを9匹は倒したいわね」
「そうですね」
「今までの調達の知識もあるし魔石工房との交渉もうまくやってくれると思うから井戸用水魔石の件もオルに一任するよ、サリスとアミももそれでいいかな?」
「はい」
「はいです」
「わかりました」
そこまで話がまとまった所で、俺達はガイシュ迷宮都市の冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに着くと俺はプレートを受け取りにいき、サリスとアミとオルは掲示板に掲示されている魔獣の情報を集めに行った。
受付の職員に副代表のオオハさんを呼んでもらう。
ほどなくして受付に副代表のオオハさんが姿を見せた。
「おはようございます」
「昨日はゆっくりできたようね」
「はい」
「これがプレートよ、大事にしてね」
「返却はガイシュを離れるときでよろしいですか?」
「ええ、それで結構よ」
「わかりました」
俺はそういってオオハに頭を下げて、その場をあとにする。
そのあと受付近くの売店にいくとカウンター内にいる職員にプレートと冒険者証を提示してから、俺は職員に尋ねる。
「ここでDランク冒険者が買うことが出来る品のリストはあるでしょうか?」
「少々お待ちください」
そういって職員がカウンターの奥の棚にいって3枚の紙を持ってきた。
「それぞれランク毎に買える品になります」
「このリストは貰ってもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。それとリストに載っていても品切れの場合もありますので注意してくださいね」
「ありがとうございます」
俺は礼をいい、そのまま掲示板に向かった。
そこには別々に分かれて職員と話をして情報を集める姿があった。
俺の姿に気付いたオルが声をかけてくる。
「今日の掲示に出ているDランクの魔獣については、かなり情報が集まりましたよ」
「ご苦労様」
そこにサリスとアミも戻ってくる。
「EランクとFランクは素材を回収しても、あまりお金にならなさそうね」
「そうなると狙いはDランクだな…。あとはEランクとFランクの戦いが回避できれば最高なんだが」
「さっき僕もそれを聞いたんですけど、無理みたいですね。転送された先の魔獣を全滅させないと、その先の転移床が起動しないようです」
「それって厄介ですー」
「まあ、Eランクあたりは個人の修行に使えそうだけどな」
「それもいいわね」
俺はここで三枚の用紙を三人に見せた。
「冒険者ギルドの売店で買えるリストだそうだが、宿でじっくり確認しようと思うけどいいかな?」
「いいですね」
「はい」
「はいです!」
「じゃあ、まずは迷宮に入ろうか」
俺達は中庭に移動して、そこにある申請受付のカウンターで入場申請を行うと採取箱を受け取る。
運よく依頼の魔獣と遭遇した場合に採取部位を入れる為の箱という話だった。
俺達は中庭にある祠に向かい、迷宮灯をつけてから祠の中に進んだ。
迷宮灯に反応して床がボンヤリと光ってるのが見える。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・ゲートブロック>>→魔獣:パッシプ:空属
Fランク
HP 1997/2000
筋力 1
耐久 64
知性 1
精神 1
敏捷 1
器用 1
(あー、やっぱり魔獣か。ブロックってことは、この床全体が魔獣の体になっているのか…)
どうやら入口の床自体が冒険者を迷宮に誘い込む魔獣だった。
しかし迷宮によって、こんなにも構造が違うというのは不思議だ。
「よし、それじゃ行くから合図をしたら、一斉に光る床の上に乗ろう」
三人がうなずく。
俺が手を上げて振り下ろした瞬間に四人まとめて光る床の上に乗った。
視界が歪んだと思った瞬間、俺達は行き止まりになっている通路の端に転移された。
「転移石の感覚と似ていますね」
「そうだな」
「どこに転移されたか分からないのはつらいですー」
周囲を見渡すと石造りの壁や床、天井がぼんやりと光を放っているので、そこまで暗いと感じさせない。
迷宮灯がなくても問題ないくらい明るいが、罠を考えるとやはり迷宮灯は必須だろうと思った。
しかしどうして壁が光っているのかが謎である。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・ブロック>>
無属
魔力 20
耐久 1991/2000
(魔獣ではないようだけど無属というのが気になるな…)
「ちょっとここに何か書いてるわ」
サリスが壁を指差す。
そこには何か記載されているので、目を凝らして書かれている文字を確認する。
『この先スライム→』
「おいおい、ここの通路の先にいる魔獣を記載してくれてるよ」
「以前きた冒険者が記録で残したんでしょうね」
「助かるですー」
「歴史の長い迷宮だけあるわね」
「作戦も立てやすいし、これは助かるな」
そういうと三人がうなずく。
「スライムだし、私が一人で片付けるわ」
そういうとサリスが走り出すので、俺達もついていく。
しばらく進むと、縦横高さともに20mほどある広い部屋に出る。
部屋の中心にスライムが4匹いるのが見えたが、サリスが《ヒート》と呟いて躊躇なく切り込む。
あっという間に4匹のスライムがフレイムストームソードで切り刻まれて倒された。
「準備運動にもならないわね」
魔石を回収しながらサリスが嘆く。
「サリスが強すぎるのさ」
「ですですー」
「本当にそうですね」
スライムを倒すと部屋の一部の床がぼんやりと光ってるのが見える。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・ゲートブロック>>→魔獣:パッシプ:空属
Fランク
HP 1998/2000
筋力 1
耐久 64
知性 1
精神 1
敏捷 1
器用 1
(今の魔獣が倒されたから、さらに強い魔獣のところに送ろういうわけだな…)
なかなか考えられている迷宮だと俺は感心した。
最初から一番強い魔獣のいる場所に、転送しない理由が思いつかなかったが俺達としては助かる仕組みだ。
俺達は光る床の前に立つと、また合図と共に一斉に床の上に乗った。
また視界が歪んだと思った瞬間、先ほどと同じように俺達は行き止まりになっている通路の端に転移されていた。
「この転移の繰り返しなのね…」
「狙う魔獣は選べませんけど、修行には適していますね」
「クシナ迷宮とは違う意味で、冒険者の修行向きの迷宮なんだな」
「楽しいですー」
毎回違う魔獣と戦えるという緊張感をアミは楽しんでいるらしい。
俺もその気持ちがなんとなく分かる。
するとまたサリスが壁に書かれた文字を見つけた。
「この先はガルムって書かれてるわね」
「ガルムなら私が倒すです」
アミが《ガード》《ライト・スティング》《レフト・スティング》と三種の簡易スペルを唱えながら走り出す。
「サリスさんもアミさんも走るのが速いですね」
「えっと、パム迷宮で修行してた時は、ほぼ迷宮内を走って移動してたんだよ」
「そんな修行をしてたんですね」
「あれで結構体力がついたわよね」
しかし俺達のクランの女性陣は元気である。
そういえば、トウキについてから戦闘らしい戦闘をしてなかったので、ウズウズしていたのかもしれないなと俺は思った。
広間は見えてきたがアミもまた躊躇なくガルムに突撃していく。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・ガルム>>→魔獣:アクティブ:闇属
Eランク
HP 125/125
筋力 4
耐久 2
知性 1
精神 1
敏捷 4
器用 4
(亜種はいないな、数は3匹か…)
アミに気付いた手前のガルムが襲いかかってきた。
ガルムの牙がアミに届こうとした瞬間、アミがサイドステップでかわし、そのまま右手のパイルシールドガントレットで頭部を殴りつけた。
アミの渾身の一撃で、パイルが頭部を貫通している。
その一撃でガルムが崩れ落ちた。
危険を感じ取った残った2匹のガルムが左右に分かれて、アミを挟み撃ちしようとする。
まず右のガルムがアミの足を狙って鋭い牙を見せながら、地面を這うように襲いかかってきた。
さらに左にいたガルムが、右のガルムと連携してアミの首元を狙い、飛びかかってきた。
アミは手馴れた感じでガルムの挟み撃ちを冷静に対処する。
まずは身を屈めて、足元の飛び掛ってきたガルムの攻撃を避けると同時に右から足元を狙ってきたガルムの攻撃を盾で受ける。
ジュッと音がして毛が焦げた臭いが漂う。
高熱を放つの盾は防ぐだけでもダメージを与えるのだ。
たまらずガルムがひるむ。
アミはその瞬間を逃さず、胴体に回し蹴りを放つと顔面が爛れたガルムが吹き飛んだ。
顔面の爛れたガルムに追い討ちを仕掛けようとアミが立ち上がったが、もう一匹が反転して襲いかかろうとしているのに気付き、そちらに駆け出して距離を詰める。
助走が取れないガルムが詰め寄るアミから距離を取ろうとするが、アミのほうが速い。
アミがパイルシールドガントレットで左右の連打を繰り出すと、そのうち一発がガルムの胴体に深々と突き刺さる。
ガフッっとガルムの呻く声が離れてみたいた俺達の所まで聞こえてきた。
たたらを踏んだガルムにアミがさらに追撃を加えていくと、ガルムが血を吐いて倒れこんだ。
残るは顔面の爛れたガルムだけになると、アミの一方的な展開で幕を閉じた。
「ふー、いい汗かいたです!」
「アミさん、お疲れ様」
そういってオルがアミにタオルを渡すと、アミがそのタオルで額の汗をぬぐう。
「つぎガルムがいたら、私が倒したいわね」
「次はサリスにゆずるです!」
本当に俺達のクランの女性陣は元気である。
ガルムから魔石を回収すると、ぼんやりと光る床の前に集まる。
「次はDランクだから注意しよう」
三人が大きくうなずく。
俺の合図で床の上に乗ると、視界が歪み転送される。
転送先は、これまでと同じく行き止まりになっている通路の端だった。
「ここまで、ほぼ同じ展開だな」
「そうですね」
周囲の壁を見ていたアミが何か見つけたようだ。
「魔獣の名前っぽいのがあるです。えっとカンジャゴウって書いてるです」
俺はヒノクスの魔獣図鑑を取り出して確認すると、カンジャゴウの書かれたページを見つけた。
(あー、これってどう見ても地獄の番犬ケルベロスだな)
挿絵を見ると頭が3つある犬型の魔獣が描かれていた。
脇から覗いきこんでいたサリスとアミが唸る。
「3つも頭があるのね…」
「視界がひろそうです」
オルを見ると、メモを確認している。
「カンジャゴウは牙の採取依頼が出ていますね」
「オル、報酬はいくらです?」
「えっと牙1個あたり銀貨6枚ですね」
「挿絵を見る限り、一つの口で上下あわせて4本の牙があるから全部で12本だろうな」
「大もうけできるです!」
「アミさん、そうでもなさそうですよ。討伐するのに頭を狙う必要がありますから、採取に適した牙が何本残るか分かりませんね」
オルがそういうとアミが顔をしかめて唸る。
「とりあえず慎重に進んで広間を目指そう」
通路を先に進むと、広間が見えてきたが中央に大きな魔獣が横になっている。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・カンジャゴウ>>→魔獣:パッシブ:火属
Dランク
HP 431/431
筋力 8
耐久 4
知性 4
精神 1
敏捷 4
器用 4
(…かなり大きいな)
挿絵では分からなかったが頭までの高さは地面から3mほどある。
大きな牙のある口は、人を丸呑みできるほどの大きさだ。
「注意すべきは噛み付き攻撃のようね。アミが心配だわ」
「確かにあの牙のある口は、脅威ですね」
サリスとオルがそういうとアミが胸を張って答える。
「平気です。前足まで接近すればあの巨体の口では届かないです」
「なるほどな。体が大きすぎて懐の中のほうが安全なのか」
「はいです。それと足にダメージを与えれば、駆け回ることも出来なくなるです」
俺は腕を組んで、じっくり作戦を考えてから三人に提案する。
「アミは前足、サリスは後足の担当して、まずは攻撃を仕掛けるよう。それと破砕粘土を渡しておくので合図をしたら足へ取り付けて離脱して欲しい」
二人がうなずくので、破砕粘土を二つづつ渡す。
「オルはアミが噛み付き攻撃を受けないようする為に、弓でカンジャゴウの顔を狙って攻撃をして欲しい」
「破砕粘土付きの矢は使う?」
「いや牙の採取もあるから使わないようにしよう。俺もチェーンハンドボウで顔を狙って援護するよ」
「了解」
「ある程度足へダメージを与えたら、足に破砕粘土を取り付けて全員距離を取ったあとに足を吹き飛ばそうと思うけどいいかな?」
三人から異論がないようなので、今回はその作戦を取ることにした。
アミが《ガード》《ライト・スティング》《レフト・スティング》と呟くと、サリスも《ガード》《ヒート》と続けて呟く。
二人の武器が高熱を発していく。
アミとサリスが目で合図をして、二人揃ってカンジャゴウに向かって走り出す。
二人に気付いたカンジャゴウが立ち上がったところで、オルが矢を放ち、そのカンジャゴウの中央の顔に突き刺さる。
「「「ガルアァァァァ!!!」」」
カンジャゴウの3つの口から激怒した唸り声が聞こえた。
その隙に懐にもぐりこんだアミとサリスが攻撃を加える。
足元の激痛に顔をしかめたカンジャゴウが前足でアミを踏みつけようとするが、素早くステップでかわすとパイルシールドガントレッドで連打を加える。
太い右前足が徐々に血で赤くそまっていくのが見える。
パイルでの串刺しはカンジャゴウにとって脅威であった。
その場から離れようとするが、後ろ足のほうでもサリスがフレイムストームソードの斬撃を加えている為に、カンジャゴウが体を動かしづらそうにしている。
身をよじって右の顔の口でアミに噛み付こうとした瞬間、その顔目掛けて放たれたオルの矢と俺のスパイクが突き刺さる。
四方からの攻撃で、たまらず四つの足をじたばたと上下させるが、アミとサリスは冷静に足を避けながらダメージを与えていく。
顔には無数の矢とスパイクが刺さり、傷を負った足を引き摺りはじめたところで、俺はマルチロッドを構えてアミとサリスに合図を出した。
二人が傷口に破砕粘土をねじこんでから、距離を取る。
カンジャゴウがアミを追いかけようとしたが、足のダメージでうまく動けない。
さらにオルが援護の矢を顔面に放つので、そちらに気をとられてしまう。
俺は二人が十分に距離をとったのを確認してからカンジャゴウの足元に火の玉を2発放つ。
火の玉が着弾すると、大きな爆発が2回起こり右前足と左後ろ足が弾けとんだ。
さすがに足が吹き飛ばされたことで、カンジャゴウが巨体を支えきれずに倒れこむ。
倒れこんだ体をジタバタさせたが、こうなってしまうとカンジャゴウとしても出来る攻撃は限られてしまう。
俺達は冷静に倒れたカンジャゴウの急所を狙って攻撃を続け、しばらくしてカンジャゴウが動かなくなった。
(【分析】【情報】)
<<ラビリンス・カンジャゴウ>>→魔獣:パッシブ:火属
Dランク
HP 0/431
筋力 8
耐久 4
知性 4
精神 1
敏捷 4
器用 4
(よし死亡したな…)
俺は討伐したカンジャゴウに近寄ると、三人も近寄ってきた。
「確実に死んだのかしら…」
「もう動いてないようだよ」
「牙も無事なようですー」
「12本全て回収できそうですね」
「採取さえなければ、頭を吹き飛ばすほうが楽なんだろうけどなー」
「そうね。でもいい修行になったわ」
「はいですー」
「牙の採取はオルに任せていいかな、俺達は魔石を回収するよ」
オルがうなずくと、俺達は手分けして作業を進める。
カンジャゴウの牙12本と、Cランクの火魔石を回収したところで、俺達は近くに落ちていた転移石をいくつか拾ってガイシュ迷宮から地上に戻った。
時間を見ると14時を過ぎている。
「陽の光が眩しいわね」
「疲れたし、ゆっくりしたいです」
「そういえばトウキに湯屋があったけど、ガイシュにもあるのかしら」
「あー、湯屋があるなら行ってサッパリしたいな」
「いいですね。ヒノクスに来て知りましたが、お風呂というのは最高ですよね」
「クエストの事後報告が終わったら冒険者ギルドの職員に湯屋について聞いてみよう」
俺はDランク掲示板のカンジャゴウの依頼票を剥ぎ取ってから、牙と一緒に受付に提出する。
「12本確かに問題なくありますね。こちらが報酬の銀貨72枚です」
俺は職員から報酬を受け取ると湯屋の場所を聞いて、3人のところに戻る。
「オル、アミの分も含めて報酬の銀貨36枚だよ」
そういってオルとアミの報酬を渡してから湯屋の件について話す。
「ギルドを出て目抜き通りを10分ほど行った場所に湯屋があるそうだよ」
「宿に近いんじゃない?」
「そうみたいだな」
「お風呂いくです!」
アミがそういって駆け出そうとする仕草を見せるので、俺達は思わず噴き出しそうになった。
初めてのガイシュ迷宮の挑戦は無事に終わった。
明日からの迷宮探索を想い描きながら、俺達は湯屋に向かって目抜き通りを歩いていく。
2015/05/18 誤字修正




