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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【ヒノクス旅行編】
124/192

5-12 クラゲ

 竜暦6561年7月21日


「出来たわよ」


 サリスとアミがテーブルにブイヤベースを運んできた。


「タゴンの魚介でも美味しく作れるのはさすがだな」

「手に入らない香辛料があるから少し味がちがうけど我慢してね」

「この味は優しいですよね」

「すごく美味しいです!疲れが取れるです」


 ブイヤベースを味わいながら、今日めぐった島々の話で俺達は盛り上がった。


「最初の小島にあった砂浜はすごかったわね」

「細長い砂浜がずっと沖まで伸びているなんて、珍しい場所ですよね」

「ああ、写真を撮っておいたけど珍しい景色に興奮しちゃったよ」


 俺がそういうとアミもうなずく。


「水面を歩いているようだったです」

「そうだな」

「あとは3番目にいった島の岩が面白かったです!」


 アミが手を大きく動かして岩の形を再現する。


「キノコのような形だったわよね、上が大きくて下が細長かったし」

「波によって削られたんだと思うけど、たしかに見応えあったな」

「でも、波の力であれだけ削れるものかしら」

「前にみた石灰岩洞窟みたいに、このあたりは石灰質の岩が多いのかもな」

「洞窟で聞いたけど石灰岩って水に溶けやすいんだったわよね」

「ああ」


 俺がうなづくとオルが俺の知識に感心する。


「ベックはいろいろと詳しいんだな」

「幼い頃から本ばかり読んでたからね」

「そうね、教会で私と出会ったときも図書室に長くいたわよね」

「そうだったっけ」

「私が外で遊ぼうって誘っても無視されたのは、今でも覚えてるわよ」

「よくそんな昔の事を覚えてるな」


 サリスの記憶力のよさに俺は驚いた。


「くやしい思いをしたことは忘れないのよ」

「俺恨まれてたのかよ…」


 アミとオルが笑う。


「幼馴染は羨ましいです」

「僕もそう思うよ」

「二人はそれぞれ年の近い子が少なかったんだししょうがないわよ」

「そうだな、でも今はこうやって出会いもあったんだし二人とも良かったんじゃないかな」


 俺がそういうとオルが力強くうなずく。


「そうですね。アミさんと出会えたのは僕にとって幸運でした」

「わたしもオルと出会ってよかったですー」


 アミもオルを見て嬉しそうに微笑む。

 本当にお似合いの二人だ。

 ここ数日タゴンで、観光を楽しんできたが仲もそれなりに近づいているようだ。

 今日も2番目の島で、オルが自然にアミの体を支えていたのを見てサリスが目を丸くしていたのを覚えている。

 ちょっと前のオルならあんな態度は恥ずかしがって出来なかったはずだった。


 そういえば2番目の島といえば、あのクラゲの大群は凄かったなと今日見た光景を思い出す。


「ベックどうしたの?」

「ああ、いや、ちょっとクラゲの大群を思い出しちゃってね」

「2番目の島の入り江でみたクラゲね」

「あれはちょっと…苦手です…」

「アミさんが苦手に思うのもしょうがないよ、僕もあの数のクラゲは気持ち悪かったからね」

「珍しい景色だから、そこはいいんだけどな。さすがに人におすすめするのは難しい場所かな」

「私は楽しかったわよ。襲ってくるわけじゃないし、クラゲもぷかぷか浮かんでるだけだったでしょ」


 サリスはクラゲの大群が苦手ではないらしい。

 たしか転生前の世界でも癒し効果があるとクラゲの愛好家がいたが、どうやらサリスはその手の人にちかい。


 俺の脳内でサリス×クラゲの触手の組み合わせのイケナイ映像を想い描いてしまった。


(ゴメンネ、サリス)


 俺は反省した。


 食事を取り終わり、アミの淹れてくれた薬草茶を飲みながら明日の予定を俺は話す。


「昼間もいったけど、明日出港しようと思うけど問題ないかな」

「調達も終わってるし、いつでもいいよ」

「食材も買ったし問題ないわ」

「大丈夫です!」

「じゃあ、明日7時に出発しようか。あと次の寄港地の古塔都市クバだけど大型帆船の移動記録を見る限り、小型船でも3日程度かかるかもしれないから心して欲しい」


 三人が薬草茶を飲みながら小さくうなずく。


「多めにブイヤベースを作っておくわね」

「井戸用水魔石も十分あるから3日なら問題ないよ。そのかわりクバでは確実に補充が必要になるけどね」

「そのあたりは任せるよ」


 ふとみるとアミが名残惜しそうに部屋の中を見渡している。

 この水上コテージが本当にアミは気に入っているようだ。

 オルもそんなアミの態度に気付いたらしい。


「ヒノクスからドルドスに戻る際にもタゴンによるんだよね。ベック」

「ああ、そのつもりだよ」

「アミさん、またタゴンに来るし、そのときまた泊まれるから元気だしてね」

「…はいです。あとありがとです。オル」


 さりげなくアミを気遣えるようになったオルと見て、俺とサリスは、ついつい口角を上げてしまった。


「戻るときにタゴンに来たらオルとアミで一部屋確保しないとな」

「そうね」

「はいです!嬉しいです!」

「あ、え!、うーんと、そ、そうなれるように、が、がんばります…」


 少しは覚悟が出てきたオルを見て俺は少し安堵した。


(さて明日は出港だし、次の寄港地にみんな無事で着かないとな)


 水上コテージのバルコニーに出て星空を見ながら俺は旅の安全を祈願した。


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