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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
青年期【パラノス旅行編】
103/192

4-16 メガプテル

 竜暦6561年6月3日


 港湾都市バイムを馬車で出発してから、そろそろ5時間が経つ。

 陽がかなり傾いてきていた。


「野営に良さそうな場所があればいいな」

「見通しが良い場所ね」


 俺とサリスは御者台で会話しながら、周囲を警戒しながら野営場所を探す。

 それから1時間ほどして街道の脇のひらけた場所に大きな2本の木が立っていた。

 馬を繋いでおけそうだなと、そこで野営の準備をすることにした。


 馬車の中ではアミが寝ているので、できる限り起こさないように俺とサリスは静かに行動する。

 まずは馬車をとめて、馬を木に繋いでから、野営の準備にうつる。

 俺は馬車の屋根に上って見張りをし、サリスは外で手早く調理をしていく。


 サリスが作ってくれた夕食はパラノスの食材を使ったポトフだった。

 ひさびさの優しい味に気持ちがほっこりする。


 俺が食べている間はサリスが見張りについてくれていた。

 完全に辺りが真っ暗になる。

 サリスが迷宮灯をセットする。


「美味しかったよ、ポトフ」

「やっぱりたまには食べたくなるわよね」

「その通りだな。さて見張りを交代するから、サリスもゆっくり食べてくれ」

「お願いね」


 俺は再度馬車の屋根に上ってから周囲を警戒する。

 下をみると馬車の脇でサリスが美味しそうにポトフを食べている。


 俺はチェーンハンドボウを構えながらサリスの様子を眺めて、バセナへの馬車の旅行を思い出す。


(また馬車の旅行が出来るとはな、やっぱりのんびりと旅をするのも楽しいな)


 前を見ながらそんな事を考えていると、かすかに聞いたことの無い音が聞こえてくる。

 周囲を見渡す。

 夜空に飛ぶ黒い影が視界に入る。


(【分析】【情報】!)


 <<メガプテル>>→魔獣:アクティブ:闇属

 Eランク

 HP 113/113

 筋力 1

 耐久 1

 知性 1

 精神 1

 敏捷 8

 器用 1


(空を飛ぶのか!)


 俺は咄嗟に構えていたチェーンハンドボウで空を飛ぶメガプテルを狙いスパイクを連射する。

 メガプテルが素早いせいか、距離が離れているせいか、カートリッジを空になるまで撃ったが当たらない。


「サリス、魔獣だ!」


 俺が叫ぶ前に、チェーンハンドボウを撃つ音でサリスは食事をやめて、剣を握って周囲を警戒していた。


「空を飛んでいるんだ!」


 カートリッジを交換して再度メガプテルに狙いを定める。

 しかしメガプテルは、迷宮灯のあかりを嫌っているのか、なかなか近寄ってこない。

 サリスが膠着した状態を解決するために俺に提案してきた。


「埒が明かないから迷宮灯を消しましょう!」


 俺はサリスのそばに駆け寄り、小さく頷いてから迷宮灯を消すと、辺りが暗くなり星明りだけが頼りになった。

 ここで俺は気付いたが、魔獣の分析のマーカーが出たままになっていて位置が把握できた。


 いままで暗闇の中で戦闘したことがなかったので、気付かなかったがこれはかなり便利だった。


 俺は辺りが暗くなったことで空中から襲ってくるメガプテルを狙い、チェーンハンドボウでスパイクを至近距離から撃ち込んだ。

 羽根を胴体を貫通したらしい。

 ドサっという音と共に、地面に落ちたので俺は急いで迷宮灯にあかりをつけた。

 サリスが地面に落ちたメガプテルに駆け寄って、胴体を剣で切り裂き、止めをさした。


「よくあの暗さの中で当てたわね」

「星明りのおかげだよ」

「でも、助かったわ」


 倒れているメガプテルを良くみると、羽根を広げると2mくらいある大きさだった。

 特徴的なのは頭部には2本の角があり、口の中には細かい牙がたくさん生えていて、尻尾が1mほどある点だった。

 まあ全体の雰囲気としては、でっかい尻尾の長い蝙蝠というほうがしっくりくる。


「なんて魔獣かしらね」


 サリスが魔石を回収しながら名前を知りたがっていた。

 港湾都市バイムでパラノスの魔獣図鑑を買えればよかったのだが品切れで買えなかったのが辛い。

 分析で俺は名前を知っているが、そのまま伝えるわけにはいかないのだ。


「バイムのEランククエストに書いてあったメガプテルじゃないかな?」

「たしかに人を襲ってきたしEランクなのは確かよね」

「もう1件、フォレストテグレは討伐したことあるし、メガプテルの可能性が高いと思うな」

「討伐証明どうしましょ」

「翼と角、あと尻尾あたりを回収しておこうか」

「わかったわ」


 俺も手伝い討伐部位になると思う部位を回収しておく。


「あと迷宮灯があれば襲ってこないみたいだし、次現れてもすこし様子を見ようか」

「ベック、それは駄目よ」

「えっ?」

「襲ってこなくても魔獣が周囲をうろついてると馬が怯えちゃうわ」

「あーーーー、そうだった、ごめん。サリスの言うとおりだ。馬のことを忘れてたよ」


 俺はサリスに頭を下げる。


「いいわよ、それよりあんまり頻繁に襲撃されちゃうと困るわね」

「そうだよな、しかも空を飛んでるし…」

「とりあえずはアミとの交換時間まで空も含めて警戒しましょ」


 今まで以上に集中して俺とサリスは見張りをすることになった。


 結局、22時にアミを起こして見張りを交代するまで、もう1匹のメガプテルと戦う羽目になった俺がいる。


2015/04/28 誤字修正

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