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博士と乙女ロボ  作者: uda
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博士、恋愛してください。②

■博士■


「いやー、買った。買った。大量だわー」


 満足そうにミヤコは言いながら、運転席に乗り込んだ。

 イベントが終わった夕方頃、博士とミヤコは両手に持った紙袋を後部座席に置く。助手席に乗り込んだ博士はちらりと後ろを見るとアニメの柄の少女や少年の描かれた大きな紙袋がずらりと並んでいる。紙袋の口元からは丸められたポスターの柄が飛び出ているものもある。


「フランケンさん。イベントはどうだった」


 車のエンジンを静かにかけながら博士は今日連れてこられたイベントを思い返す。

 ホール内に敷き詰められ並べられた簡易なテーブルで囲まれたいくつもの枠、その内にいる人々が制作した創作本というものを販売し、やってきた人々がそれを買う。巨大なバザーのようなものであった。

 ただ徹底的に違う事があるとするなら、席によっては長蛇の列があり、買うまでに一時間以上かかるものがあるということ、なぜか周囲の人々のほとんどの目がぎらついているようであったということだ。


「凄い人々だったな、あと蒸し暑かったか」

「まぁ、初心者にはちょっときつかったかな」


 ホールは冷房も聞いていなかったため蒸し暑く、ミヤコが持ってきたドリンクがなければ今頃干からびていただろう。


「ごめんね、あんまりイベントはおもしろくなかったでしょ」

「まぁな」


 博士が今回のイベントでやったことはミヤコの後ろに付き従い、彼女の買った荷物を持っておくというほとんど荷物係に近い仕事であった。

 当然、今回のイベントというものに興味もなく、面白いとは到底思えなかった。


「けど、ミヤコさんが楽しそうに生き生きとしている姿はおもしろかったぞ」

「そう、ですか」


 人差し指で頬を掻きながら小さな声で「どーも」と答えた。

 エンジンがかかった車の空調からはようやく冷房が効き始め、ひんやりとした空気が博士を心地よくさせる。

 車は発信する様子はない。


「それで、これからどうするのかね」

「じゃあ、どこかで休んでいきましょうか。どこか行きたいところある」


 行きたいところか。しばらく考えた末、博士は答える。


「ふむ、ではラブホにでも行くか」

「あははは、面白い事を言うわね」


 口調は笑っているがミヤコの目は笑っていなかった。


「ねぇ、今日はどうしたの」


 少し落ち着いた声でミヤコは問う。


「どうしたとは?」

「だって、今日は元気ないし、さっきみたいに変な発言するから。何か前回会った時と少し様子がおかしいと思ったのよねー」


 博士は考える。このような疑問に一度ぐらいなら誤魔化そうと思えばできる自信はある。だが、彼女に尋ねられるのは今日これが初めてではなかった。何度かイベント中に聞かれ、それを気のせいだろうと答えていた。

 加えて二人っきりで車内という状況。言い逃れはできない。しかし、悩んでいる内容を話すとすればロボ子を作った目的である女性の内面の話や前回の喫茶店での出来事を裏でアドバイスされていたことなどを言わなければいけない。


 会うのは二回目でしかない女性にすべて話すのはさすがの博士としても気が引けた。

 だが、ふと博士は前回でのミヤコとの会話を思い出す。そういえば彼女は最後には自分自身の事を正直に話したのだ。どうせ長く付き合うならバレれることなのだしいい機会だと博士は決意した。


「で、実際のところどうなの」

「それは、だね」

「うん、言うてみ、言うてみ」

「私は、乙女心を持ったロボットを作ってみたのだよ」


 博士は覚悟を決めて秘密にしていたロボ子の詳細を話すことにした。





「――というわけでロボ子に人の気持ちというものを分かるようにしたのだが、ロボットと認識するあまりスランプのようになってしまったのだよ」


 その為に今までいろいろとロボ子とともにナンパの練習をしたり、デート中にアドバイスを貰っていたことも話し終えた。車はエンジンをかけているが発進する様子はない。

 てっきり、怒るか、呆れられたような顔をされると思っていたのだが、運転席に座るミヤコはふーんと表情を変えずにつぶやくだけであった。


「おこったか?」

「まぁ、すこしね。……しかし、なるほどねー」


 ミヤコは少し考える仕草をする。

 一発ぐらい殴られても仕方ないかなどと博士は思っていたがそんなことは特になく会話を続けている。


「じゃあ、困っているようなら、協力してあげましょう」

「なに?」


 突然の予想外のセリフに博士は珍しく驚いた。


「どういうつもりだ」

「あら、そんなに疑わしく見ないでちょうだい。ちょっと興味がわいたのよ。それで、要は彼女が自分自身をロボットだと理解したまま彼女は人の心を持っていると理解させてあげればいいのでしょ」

「そうだ」


 ふふふ、と含みのある笑いをするミヤコ。どうやら何か考えがあるようだ。


「そうと決まれば行きましょうか」


 言いながら車を発進させるミヤコに博士は礼を言う。


「すまんね。助かる」

「かわり、その可愛らしい少女ロボット紹介してよね。いやーいいわねー、美少女ロボット。一度でいいから拝みたかったのよ」


 駐車場から出た車は来た時とは別の道を進んでいき、博士は不思議に思い訊ねる。


「……というかどこに行こうというのだ」

「それは着いてからのお楽しみよ。じゃあ、ミッションのスタート」

「何故楽しそうに言うのだ」

「いいわねーこういうのテンションが上がるわねー」


 不気味に笑うミヤコに少し不安を覚えながら、博士の乗った車は隣町の中心部へと向かっていった。

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