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魔法使いと少女  作者: 徒然花
その後の二人
13/14

王都、再び

結婚後、半年ほどたってからの二人です。前後編です。

私と私の師匠改め旦那様である(キャー、照れるね!)アレッサンドロ様は、ただ今生活拠点の東の森ではなく王都にいる。今回は王城ではなくアル様のご実家であるクリスタル侯爵家に滞在しております。

なんでまた王都にいるのかって?

最近王都ではおめでたが続いているからみたい。

王妃様が出産されたのが半年ほど前だったんだけど、ちょうどそれにアル様が召集されていたらしくて、婚姻届を出すついでに王都まで行った。どっちがついでだとツッコみそうになったけどここは賢明にも口をつぐんでおいたわ。アル様不機嫌になったら怖いもんね。

腰抜かしーの気後れしまくりーのだった王城だけど、思ったよりも早く王妃様の出産が無事に終わったのでそんなに長滞在することなく解放され、アル様のご実家のクリスタル侯爵家には顔を出しただけで東の森に帰ってきた私たちだったんだけど、王妃様の次、今度はアウイン侯爵家の奥様がご懐妊だとかで呼ばれることになったのだ。




「アウイン家の奥方が臨月だからと呼ばれた。仕方ないから行くぞ」


先程郵便屋さんが来て配達していった一通の手紙の封を開けると途端に眉間に皺を寄せて、私にそう告げるアル様。アウイン家と言われてもよくわからないけど、とにかくアウインさんちの奥さんがオメデタなんですね! 了解です!

「はーい。でも私、お留守番じゃなくてご一緒していいんですか?」

大体特殊な営業に関しては、鉄壁の結界の中私はおうちでお留守番なんだけど、今回は違うみたい。

「ああ、長くなるかもしれないしな」

そうですか、長くなるのならば鉄壁の結界をかいくぐって外に出て行き迷子になるのが関の山ですからね!

「わかりました~」

そうと決まれば旅支度。私は寝室に行って用意をしようと立ち上がった途端二の腕をグイッと掴まれてたたらを踏んだ。なんで引き留めれるんだ~? とアル様の顔を見上げれば、

「今回はクリスタルの家に滞在する。だから何も支度しないでいいぞ」

とのこと。

「え? アル様のご実家ですよね? でも、着替えくらいはいりますよね?」

「いいや。手ぶらでいい」

「?」

お泊りするのに何もいらないなんておかしな話だなぁと思いつつも、素直にうなずく私だった。




手ぶらでいいと言われた意味がクリスタル家に来て早々に判明した。

私とアル様の部屋にと案内された客間は、元々アル様のお部屋だったらしいんだけどびっくりするくらい広くって。しかもとっても大きなクローゼットには、

「うっわー……すごいたくさんの服……」

驚きすぎて絶句しちゃうくらいたくさん用意されている服! ドレスだからもちろんアル様用ではない……はず。

クローゼットの扉を開けたまま動かない私に、

「全部ガーネットにだそうだ」

疲れたようなため息をこぼしながらアル様が教えてくれたけど、

「きゃ~すごーい!! でもこんなにたくさんのドレス、着れませ~ん!!」

お貴族様ってすごーい! と感嘆の気持ちでアル様を振り返った私の口から出たのは何とも情けない言葉で。まあそれくらいたくさんの服が並べられていたのだ。

引き出しには手触り最高な下着類、靴だって何足もある。毎日とっかえひっかえしても全部を使いきれないくらいあるんだけど。

「まあどれでもいいから適当に着てやってくれ。それだけでもあの人たちは喜ぶからな」

「あの人たち?」

「ああ。母さんと、兄嫁たち」

こめかみ辺りを指で揉みながら疲れた表情のアル様。

アル様は三人兄弟の末っ子で、お兄様方はすでに結婚されていてお子様もいらっしゃって、ちなみに長兄様のお子様は12歳だそうだ。

どうやらクリスタル家は男系家族のようで、アル様も男兄弟のみだし、長兄様のところも次兄様のところも男の子しか生まれていない。お義母さまも義姉さま方もそろそろムサイ男の子には飽きてきたと女の子を渇望していて、すっかり歳の離れた私をすでに溺愛モードに入ってるらしい。

「そうなんですね。了解しました!」

私だって若い娘ですし? 実家は農家ですからこんな綺麗な服に憧れを抱いてないとは言わないよ?

というわけで、遠慮なく着させていただくことにした。




アル様は毎日様子見にアウイン家に奥様のご様子を伺いに行く。

その間私はクリスタル家でお留守番。

だからと言って一人ぼっちでお部屋にいることなどなく、お義母さまやお義姉さまとお茶をしたり、嬉々として買い物に駆り出さ……げほげほ、連れて行ってもらったりと楽しい時間を過ごさせてもらっている。滞在数日にして私たちの部屋には買ってもらったモノの箱が山積みされてしまっているくらいに。

さすがに毎日それはどうよ? たまには一人の時間も欲しいなぁと思い、

「王都を見て回ったことがないので、ちょっと観光がてらに散歩に行ってもいいですか?」

と切り出してみた。

すると、

「たまにはいいかもね。王都にはいろいろ珍しいお店もあるからぶらぶらするのも楽しいでしょうし、行ってらっしゃいな」

と、お義母さま。

「じゃあ王都で一番のパティスリーに行ってきたらどうかしら? ここからでも真っ直ぐ15分歩くだけだから近いし安全ですわ」

とは長兄のお義姉さま。

「そうですね。ちょうど散歩という距離ですしね。でもいくら王都やこのあたりが安全とはいえ護衛はつけないとかわいいガーネットに何かあっては大変ですわ」

と賛同しつつも憂い顔に変わったのは次兄のお義姉さま。

「そうよね! かわいいガーネットに何かあっては大変です!」

「護衛は前後左右で4人?」

「いえ、もっと! 前後左右ななめで8人!」

お義母さまの言葉を皮切りに、どんどんエスカレートしていく私の護衛問題。

あまりに大袈裟すぎて引くわ。それならいっそ馬車で行く方がナンボほど気が楽だよ?!

所詮私は庶民ですから護衛なんて要らんのですよ!

護衛8人説が出たところで気が遠くなりそうになり慌てて止める。

「大丈夫ですから、ちゃ~っと行ってちゃちゃ~っと帰ってきます!!」

これ以上議論が白熱したら散歩どころではなくなりそうだったので、私はそう言い残して脱兎のごとく玄関へと急いだのだった。


見送ってくれた執事さんに、『門を出たら左に曲がって、そのまま道なりですよ』と教えてもらったのでその言葉通り進んだ。



読んでいただきありがとうございました!

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