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美人ギャングに育てられてたら強くなりすぎた  作者: F.R


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第15話 こはるぼっち疑惑 体育祭に向けて

 昼休み。


 俺の昼ご飯はいつも通りの弁当。


質素なものだが、自分で作っているので文句はない。


 そして、これもまた、いつも通りの光景だった。


「いただきまーす」


 こはるが、自分の弁当を持って俺の隣に座る。


 初日から、ずっとだった。


 隣が空いているから、という理由なのかと思っていたが、


今日ふと気づいた。


(……あれ?)


 教室を見回す。


みんな、それぞれグループを作って食事をしている。


 こはるは、、


 誰とも混ざっていない。


 教室で、こはるが女子同士でワイワイやっているところを見たことがない。


 バレー部のときも、体育館の隅で一人でボールをついている姿のほうが多かった。


(……友達、いないのか?)


 そう思ってしまった自分に、少し驚く。


 今まで“他人の事情”に、ここまで気を向けたことがなかったからだ。


 こはるは、俺と話すときは普通に目を合わせて笑ってくる。


 だけど、他の誰かと話すときは――


「うん、いいよー」

「うん、わかったー」


 愛想笑いと、適当な相槌ばかりだ。


(なんでもニコニコ“OK”するイエスウーマン、って感じだな)


 断れないんだろう。


 頼まれごとには全部応じるタイプ。


 だが、バレーをしているときだけは違う。


 ネットの向こうで、


 ボールに飛びつき、指先で押し戻し、


 サーブを叩き込む姿は――本当にかっこよかった。


 そこだけ、作り笑いじゃなかった。


「どしたの?」


「え?」


「さっきから、なんかじーっと見てくるから」


「……いや、なんでもない」


 慌てて弁当に視線を落とす。


 こはるはくすっと笑った。


「体育祭、楽しみだね」


「そうか?」


「うん。……遥希君は嫌い?」


「んー。初めての体験でワクワクはしてる」


「そっか」


 こはるはそれ以上何も聞いてこなかった。


(……なんだろうな)


 少しだけ胸の奥がざわつく感覚を、


 まだ俺は上手く言葉にできなかった。



 放課後になると、俺は体育館へ向かった。


 マネージャーとしての仕事は、前よりもスムーズになってきている。

 

水の準備、タオル、ボール、タイマー。


 女バスの練習を眺めながら、時々ぼんやり考え事をする癖もついてきた。


(こはるって、なんであんなに“ひとり”なんだろう)


 そんなことを考えていたところで――


「おーい、マネージャー」


 背後から顧問の声が飛んできた。


いつもジャージ姿で、髪をざっくりまとめた女教師。


 俺を完全に“からかい対象”として見ている人だ。


「今日もどの女見てるんだ?」


「見てないっす」


「今、完全にコートの隅見てただろ。あれ誰だ?」


「誰も見てません」


「ふーん?」


 顧問はニヤニヤしながら俺の肩を軽く叩いた。


「高校生はよく見とけよ。

 青春はすぐ終わるからな」


「顧問がそれ言います……?」


「言うよ。説得力あるだろ」


 からかうような空気に、周りの部員も笑っている。


 くだらないやり取り。


 でもこういう時間が、少し楽しくなってきている自分がいた。


 部活は、いつものように熱を帯びて、


 いつものように汗と笑いで終わった。


 片付けをして体育館を出ると、


 すでに空はオレンジから藍色に変わりかけていた。


 

体育館からアパートへ向かう道を歩いていると、

後ろから勢いよく何かが突っ込んできた。


「うりゃあああ!」


「うおっ!?」


 背中に衝撃。

 振り向かなくても、誰か分かる。


「亜蓮……いつもタックルしてくるな」


「だってさぁ、遠くから声かけるより早いじゃん!」


 部活帰りらしく、首にタオルをかけている。


「一緒に帰ろ!」


「……まぁ、方向一緒だしな」


 二人並んで歩く。


 アスファルトの上を、スニーカーの音が二つ響く。


「体育祭、種目決めた?」


「いや、出ないつもりだったんだがな」


「えー? もったいない!」


「何がだよ」


「遥希ってさ、なんか“走れる匂い”するもん」


「犬か」


「狐かも!」


「自分で言うなよ」


 どうでもいい会話が、妙に楽しい。


「亜蓮は?」


「私? スウェーデンリレーだよ!」


「あー、なんか盛り上がるらしいね」


「うん、二組の三走! こはるちゃんと勝負だね!」


「…なんか張り合ってたわ」


「ふふん。まぁ私は負ける気ないけど?」


 亜蓮は口角を上げた。


 その目は、いつものおちゃらけとは別の、

 本気のスポーツ選手の目だった。


「そんな亜蓮が出るなら、俺が応援する必要もないだろ」


「えー? 応援してよ!」


「同じクラスのこはる応援するわ」


「はぁ!? ずるい!」


「クラスメイト大事にしないとだろ」


「むぅぅぅ……」


 頬をふくらませる亜蓮。


「じゃあさ、こうしよ!」


「なんだよ」


「遥希はさ、スウェーデンリレーは“どっちも”応援する。

 それで、私が勝ったらなんでも言うこと聞いて」


「なんで俺が?」


「勝利の味は甘くないとね!」


(甘い?)


「……負けたら?」


「んー……じゃあ、こはるちゃんのほうにジュース奢る!」


「俺のメリットってないんだ、」


「ない!」


「んーじゃ、キスしてあげる」


(恥)


「嘘ぉー、何本気にしてんのー」


 くだらない話で笑いながら、家までの道を歩いた。


 そのホワホワした空気が――

 このときの俺には、たまらなく心地よかった。


 そして、あっという間に一ヶ月が過ぎた。


 体育祭当日。


 いつもの校庭が、まるで別の場所に見えた。


 色とりどりのクラスTシャツ。


 頭にはちまきを巻いて、髪を少し巻いてきた女子たち。


 スマホで写真を撮り合って騒ぐ声。


 ヤンキー校とは思えないほど、明るい空気が広がっていた。


 ……もっとも、四分の一の不良どもは、案の定欠席だったが。


(まぁ、あいつらがいないほうが平和か)


 俺も、クラスカラーのはちまきを額に巻いていた。


 鏡を見て、自分でも思った。


(俺、ちゃんと“高校生”やってんな……)


 クラスのテントの近くで、こはるを見つけた。


「おーい」


「おはよー」


 こはるは、いつもと同じ笑顔だった。


 髪もいつもと同じ。


 派手なメイクも、特別なおしゃれもしていない。


 だか、それが良い


 こはるは軽くストレッチをしながら言う。


「ちゃんと応援しててよね」


「観客モード全開でチアは絶対見る」


「……チアは真剣に見すぎないようにね?」


「いや、それはちょっと約束できない」


「もぅー」


 こはるが呆れたように笑う。


 そのやり取りだけで、この体育祭が楽しくなりそうな気がした。

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