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プレゼンテーション「人類」


「それでは今から人類についてのプレゼンテーションを行います。」

「うむ、頼む。」


「まず、人類には500万年以上の歴史があります。彼らは猿人、原人、旧人、新人と進化していき。今に至るまで発展を続けています。火星まで飛ばせる機械を製作できていることが、それを証明しております。」

「いいな」

「また、彼らには学習能力があり、生活に関する知識はもちろんのこと、独自の科学技術、情報学、経済学、そして、エンターテイメント技術といった、長い年月をかけて生まれた様々な技術と学を持っています。」

「いいではないか。」


「はい、しかし、同時に、彼らには多くのデメリットがあります。」

「?というと?」

「例えば、彼らは怒りという感情を持ちます。」

「それはなんだね。」

「怒りとは、なぜか突発的に凶暴化することです。最悪、手の施しようがなくなり、仲間同士にも関わらず殺し合います。怒り以外にも、妬み、憎しみ、悲しみ、強欲、嫌悪といった複数の感情を持ち、それらすべてが殺し合いに発展する場合があります。つまり、戦争です。」

「なんと愚かな。同じ種同士で争いあって何になるのだ。」


「全くですね。それから、人類はお互いの顔色をよく窺います。」

「何?」

「特に、二ホンという場所ではそれが顕著です。こちらの画像をご覧ください。これは「カイシャ」と呼ばれる彼らの組織の中で撮影されたものです。これを見るとこの二人は一見仲良くしゃべっているように見えますが、実際は「めんどくさい。早く終わらせられねーかな。」「こいつの話興味ねえんだよな。でも、聞かねぇと仕事に支障が出るし…」とお互い仕方なく会話しています。二人だけではありません。「ジョウシ」と呼ばれる人物による説教、ご近所との世間話、「ガッコウ」と呼ばれる場所での「トモダチ」や「センセイ」との会話、「ケッコン」呼ばれる行為を促す親との面談、というふうに、この場所はよくお互いの顔色を伺い、嘘をついてまで場を保とう、同調しよう、従ったふりをしよう、嫌われないようにしようと、懸命に謎の努力をしているのです。」

「狂っているのか?そこまでしてなぜ共同体を維持しようとする?自分を騙そうする?嫌なら嫌といえばいいではないか。そしてなぜ、嘘をついて他者との関係を持とうとするのだ?種を守りたいのなら、嘘をつくという行為は種全体に悪影響をもたらすのに。全く、理解できん。」


「はい、異論はありません。他の場所によって差異はありますが、なんでも人類は嘘が得意なようです。他にも、なぜか抜きんでた能力のある仲間を追い込んだり、自らと同じDNAを一部持つ個体に攻撃を与える者もいます。人類たちは、種を残すことよりも、社会的圧力や他人からの評価を重視するようです。なかには好き勝手暴れ、己の快楽を満たすためだけに、同じ種を貶めたり、命を奪う者もいます。」

「ええい、論外だ。そんな奴らの能力を手に入れたとしても、嘘や醜い感情を同時に手に入れてしまっては、我々の種は遅かれ早かれ滅亡するだろう。」

「…では、今回の食べて能力を身に着けるに値する生命体として、人類は…」

「不合格に決まっているだろう。プレゼンは終わりだ。」

「かしこまりました。」


その日、惑星ホシクイによる人類の食料化計画は、破談となった。




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