第92話 合流
「みんな! 大丈夫か!」
俺と鳥羽部長は残りの3人と合流していた。紅希たちは海の方まで飛ばされたようで、少々来るのに時間がかかってしまった。無事だといいんだが……。
「おー! 碧じゃねーか! 何してんだこんなとこで! 釣りか?」
「そんなわけないだろう! お前たちと合流するために来たんだ!」
「おお碧やんか! どないしたんやこんなことで。釣りか?」
「今やったそれ! 耳がついていないのかお前は!?」
「あら碧じゃない。どうしたのこんなところで。スリ?」
「せめて釣りであれ! なんで俺が海辺で泥棒するんだ!」
「橋田、どうしたんだこんなところで? 1人組体操か?」
「どうやってやるんですかそれ! 部長は今一緒に来たでしょう!?」
なんで全員同じボケ方をするんだ……。大喜利大会じゃないんだぞ。
そんなことはどうでもいい。とりあえず見た感じ全員無事なようだが、基地へ戻ってケイシソウカンマンの対策を練らないといけない。
「みんな、歩けるか? 今から基地へ戻るぞ」
「おー! 元気いっぱいだぜ! 誰が1番早く基地に戻れるか競走するかー?」
「子どもか! そういうのは今いいから、全員で戻るぞ!」
「いや碧、ちょっと待ってくれ。ハシレンジャーロボを回収したいんや」
そう言えばハシレンジャーロボを放置したままだったな。ケイシソウカンマンの戦闘員たちに光弾を浴び、俺たちがロボから放り出されてしまったから、どこにあるのかも分からない。
「ワシのヘルメットでハシレンジャーロボの信号を探すで。まだ完全に壊れてはないはずや」
「信号……? そんなものが出ているのか?」
「せやで! よう見たら胸のところに赤黄青の信号が付いとる」
「そっちの信号なのか!? それをヘルメットで探すとはどういうことだ!?」
「そら音を拾うねん。『信号が青になりました』って音鳴るやろ?」
「それ歩行者信号で鳴る音じゃないか!? なんで車両用でそれが鳴るんだ!」
「お! 見つけたで! 今交通整理しとるみたいや」
「なんでだ! あんなでかいのがどうやって交通整理するんだ!?」
「ほな自分ら、ハシレンジャーロボを回収しに行くで!」
ハシレイの声で、俺たちはハシレンジャーロボが交通整理をしている場所へ向かった。
「おい本当に交通整理してるじゃないか……。なんで俺たちが中にいないのに動いてるんだ?」
「ハシレンジャーロボは元々ケイシカンマンやからなあ。本能的に交通整理とかしたくなるんやろな」
「そんなところにケイシカンマンの意思が……」
どうやら光弾によって本来あった信号機が壊れているようで、ハシレンジャーロボは信号機の代わりをしていたらしい。健気なことだ。
「よっしゃ、ほな車通りが無くなったからロボを回収するで」
俺たちはハシレンジャーロボに乗り込み、基地の方へ歩き出した。
「ところでよー、あのホーテーソク団のモス……じゃなくて、ロス……じゃなくて、カス……」
「ボスだ! なんでそんなに出てこないんだ!?」
「ああそーそー! でそのドスがよー」
「ボスだと言っているだろう!? なんで急に凶器になった!?」
「なんかあいつ、気になること言ってたんだよなー」
気になること……? そんなこと言ってたか? 俺がツッコミを入れすぎて気づいていないだけかもしれないが。
「なんだっけ、スコーンパンビップ? がどうのって言ってたろー?」
「もしかしてスポーツマンシップのことを言ってるのか!? なんだその小麦ばっかり食べるVIPは!」
「スポーツマンシップがどうしたって言うの? 正正々堂堂々戦ってくれるってことじゃないのかしら」
「1個ずつ多いぞ! エコーみたいに聞こえるじゃないか!」
「そーなんだよ! 正々堂々戦ってくれるってことはよー、俺たちにまた果たし状みたいなの送ってくんじゃねーの? 多分今回のは俺たちを倒す気は無かったって言うかよー」
なるほど……。俺はケイシソウカンマンがそういうボケキャラなのだと思っていたから特に気にしていなかったが、確かに「スポーツマンシップに則り」という言葉を信じるなら、今回のように突然現れるのはフェアじゃない。俺たちも準備ができていないわけだからな。
ということは、今回は俺たちに顔見せをするつもりだった——ということか?
もしそうなら、あの光弾は挨拶程度の攻撃だったということ。つまり、ケイシソウカンマンはめちゃくちゃに強い……そうなってしまう。
「ケイシソウカンマンを倒すにはよー、俺たちも思考暴走ともうひとつ何かパワーアップしとかないといけねー気がするぜ!」
「そうだな! なら私はこのレモンサワーに手刀をするぞ!」
「サワーチョップしてどうするんですか! パワーアップしてください!」
「なら私はゴルフの練習をする器具を買ってくるわ」
「それはパターカップじゃないのか!? ゴルフが上手くなっても敵には勝てないぞ!?」
「ほなワシは全員分のリーゼントカスタムを調整しとくで」
「なんでお前はまともなんだ! お前がボケるターンだっただろう!?」
ハシレンジャーロボを歩かせながら、俺たちはケイシソウカンマンの対策を練り始めた。




