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第7話 隠された機能

「さてさて、早速話していくで! ハシレンジャーのスーツについてと、卵かけご飯の作り方についてや!」


「後半は要らないから早くスーツについて話せ!」


「まずは炊きたてご飯をよそって真ん中を凹ますやろ? そしたらそこに卵を落とすんや」


「卵かけご飯をメインで話すな! スーツについてだっただろう!」


「ああせやったな。すまんすまん。で、スーツについてなんやが、武器を出す以外にも機能がある」


 ハシレイはそう言うと指をパチンと鳴らした。すると天井からモニターが降りて来て、ハシレンジャースーツが映し出される。


「これが自分らが今使ってるハシレンジャースーツやな。まず、実はこのスーツにデフォルトで付いてる機能がある。それが身体能力の向上や」


「限界暴力? なんだそりゃ?」


「なんだその我慢できなくなって手を出したみたいな言葉は! 身体能力だ!」


「頭が悪いにもほどがあるわね。身体能力が上がるのよ。パルクール将棋ができるようになるわ」


「そんなアクロバティックな将棋があるか! お前らいいから黙って聞いてろ!」


 ハシレイは一つ咳払いをすると、再び話し始める。


「まあ要するに普段の自分を超えた動きができるようになっとるっちゅうことやな。自分らは戦闘の素人やけど、思ってるよりは戦えるようになっとるで。今までは名乗り爆発戦法しか使ってなかったから知らんかったやろけどな」


 なるほど。筋肉痛が酷かったのは、体が無理をしていたからか。俺は銃メインで戦っていたが、戦闘員たちの攻撃を避けながらの射撃だった。足に来ていたということだろう。


「それから、ハシレチェンジャーのアクセル。ここを回したら、更に身体能力を底上げできる。デフォルトで付いとる身体能力向上は自分の限界を引き出すもんやけど、このアクセルは限界を超えた身体能力を引き出す。その代わりちょっと歯止めが効かんけどな。身体暴走っちゅう機能や」


 おい、そういう大事なことは最初に言っておけ。何故何も知らない状態で今まで放っておいたんだ?


「その身体暴走っていうのを使えば、バク転オセロができるのね?」


「どういう競技だ! さっきからアクロバティックなボードゲームをするのをやめろ!」


「俺は倒立しながら肉食いてーなー!」


「吐くからやめておけ! 何故お前はすぐ倒立をする!?」


「それからもう一つ、大事な機能があるんや」


「よく普通に話を進められるな!」


 ハシレイはモニターに映るハシレンジャースーツのヘルメット部分を指差した。


「このヘルメットの左側にあるタイヤ。これを押したら、更なる機能が解放される。それが思考暴走や」


「歯槽膿漏? それはどーいう機能なんだよ!」


「お前はもう少しちゃんと話を聞け! あと歯磨きをしろ!」


「思考暴走は、その名の通り考えてることが暴走する機能や。イメージが暴走して具現化し、武器なり戦い方なり自由にできるようになるんや」


 思考暴走……。要するにイメージしたことをなんでも現実にできるということか。チートじみた機能だな。


「なるほどね。じゃあ今その機能を使って紅茶の王様を出すこともできるのかしら? その名も紅茶テングよ」


「キングじゃないのか!? いやそれより、まだ俺たちにはその機能は使えないって話じゃなかったか?」


「その通りや。自分らにはまだ思考暴走どころか、身体暴走も使えん。戦闘で経験値を得ることで、段階的に機能が解放されるんや」


 えらく抽象的だな。具体的にどんな経験値が必要で、その経験値はどうすれば溜まっていることが分かるのか、そういう情報が欲しいところだが……。


「お、碧はいい目をしとるな。今すぐ卵かけご飯のレシピを実践したいって目や」


「そっちはどうでもいい! 経験値というものを具体的に教えて欲しいと思ってるんだ!」


「ああそっちか。しゃーないな、教えたるわ。ハシレチェンジャーのウインカースイッチを押してみい」


 俺たちは言われた通り、バイクのハンドルのようになっているハシレチェンジャーのウインカースイッチを押した。

 すると俺たちの前にモニターが浮かび上がり、そこに「けーけんち」と書いてあった。


「せめて漢字で書け! なんだこのダサい画面は!」


「それはワシが地球に来たばっかりの時に作った画面やからしゃーないやろ。ひらがな書けるだけで褒めて欲しいもんや。あ、でもギリシャ文字は書けるで」


「なんで余計な文字だけ覚えてるんだ!? ……しかしこれが俺たちの経験値か」


 「けーけんち」という文字の下には棒グラフのようなものがあり、その目盛りはほとんど上がっていなかった。俺と黄花は2目盛り、紅希は1目盛りだ。


「おい! なんで俺だけ少ねーんだよ! はっ! まさか俺が和式便所に引っ越したからか!?」


「まずトイレから離れろ! 基地に住めるんだから住めばいいだろう! 紅希の経験値が低いのは、あのコウソクマンとかいう怪人に動きを封じられていたからだろう。俺たちはその間戦闘員を倒していたからな」


「そうね。あれだけの戦闘員を倒せば、多少は経験値になるみたいね。ねえハシレイ、この経験値はいくらで売ってるの?」


「買収しようとするな! とにかく、この経験値を溜めれば機能が解放されるんだな?」


 ハシレイは大きく頷き、よそったご飯に卵を落とす。


「おいなんで今卵かけご飯を作ったんだ! いつの間に用意した!?」


「自分らの経験値は、戦闘で溜めるしかない。ただし、雑魚の戦闘員だけを倒してても経験値はほとんど溜まらん。あくまで怪人と戦って溜めるもんやからな。せやからこれからも怪人が現れたら積極的に倒しにホフッホフッ! 思ったより熱いなこれ!」


「卵かけご飯を食うな! 大事な話をしてるんじゃないのか!?」


 俺がハシレイに呆れていると、基地にサイレンが鳴り響く。


「ほーら言うてたらお出ましや。またこないだのコウソクマンやな。よっしゃ! ハシレンジャー、出動ホフッホフッ!」


「食うのをやめろ! ああもう、呑気なやつらだな!」


「よーしお前ら! 行くぜ!」


 俺走り出した紅希と黄花の背中を追い、俺は呆れながら出動した。


 ——というのがこいつらのバカエピソードだ。紅希と黄花もバカだが、ハシレイは狙ってやっているのか、とにかくツッコミどころが多い。仮にも司令官なのだから、ちゃんとやって欲しいものだ。


 それよりも、この後コウソクマンと戦った時は少し苦戦したんだ。……まあコウソクマン自体が強かったというわけではなくて、主に味方のやらかしなのだが……。

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