第64話 決闘!ケイシマン!
「ほな自分ら、頼むで!」
ハシレイが俺たちの背中を1人ずつ叩いていく。珍しく気合いの入った俺たちは、基地を走り出て虹色の空間に入った。
虹色の空間を抜けると、大きな崖のそびえ立つ荒れ地に出た。
荒れ地の真ん中では、ベンチプレスを黙々と続けているケイシマンの姿がある。
「おう、やっと来たかハシレンジャー。待ちくたびれてリッチになっちまうとこだったぜ」
「なるとしたらマッチョだろう! なんで筋トレしてるだけで金が増えるんだ!」
「んじゃ、早速始めっか。だるまさんがころんだでいいか?」
「いいわけあるか! 戦うんじゃないのか!?」
「なんだてめえら、俺様と戦いてえのか? なら戦ってやってもいいぜ。だるまさんがころんだでいいか?」
「だからなんで遊びになるんだ! 何度このやり取りをさせる気だ!?」
「じゃー俺が鬼なー! みんな動いちゃダメだぞー?」
「乗るなバカ! ちゃんと戦え!」
せっかく気合いが入った後に気が抜けてしまったが、ようやく俺たちはケイシマンと向かい合う。
「さあてめえら、かかって来いよ。ねちゃねちゃにしてやるぜ」
「気持ち悪い擬音だな! ガムでも踏んだのか!?」
「ちげえよ、チューインキャンディーだよ」
「どっちでもいい! なんでそこに拘るんだ!」
「行くぜおめーら!」
「ハシレチェンジ!」
俺たちの周りを4色のタイヤが回り出し、俺たちはハシレンジャーへと姿を変えた。
「赤い暴走! ハシレッド!」
「青い突風! ハシレブルー!」
「黄色い光! ハシレイエロー!」
「ピンクに突撃! ハシレピンク!」
「エンジン全開、突っ走れ! 暴走戦隊!」
「ハシレンジャー!」
俺たちの背後で大爆発が起こり、爆風で砂塵が舞う。
「じゃあ私が鬼をやるわ。みんな早く後ろに下がりなさい」
「だるまさんがころんだはもういい! チェンジした意味はどうするんだ!」
「あら、私がやろうとしているのはだんごむし鬼よ」
「マイナーな鬼ごっこをしようとするな! いいから戦うぞ!」
「じゃあ私は不倫調査の鬼になるぞ!」
「ドロドロした鬼やめてください!」
「しゃー! エンジン全開だー!」
ボケるイエローとピンクを無視し、レッドの声で俺たちは走り出す。
向かい合うケイシマンも俺たちに向かって走り出した。
「食らいやがれえええ!!」
レッドが鉄パイプを取り出し、ケイシマンに殴りかかる。だがケイシマンは何かで鉄パイプをガードし、そのままレッドを殴り飛ばした。
「うあーっ! な、何したんだー!?」
「大したこたあしてねえよ。ただランニングマシンでガードしただけだ」
「お前は1回ランニングマシンに怒られろ!」
するといつの間にかケイシマンの後ろに回っていたイエローが、背中にダガーを突きつけた。
「甘えんだよっ! ルイボスティーぐらい甘えっ!」
「そんなに甘くないじゃないか! なんでほんのり甘いものを選んだ!?」
アホなことを言いながらも、ケイシマンはランニングマシンを振り回してダガーを吹き飛ばしていた。
「ッ! やるわね……! チェンジしてなかったら軽く関東甲信越を飛び越えていたわね」
「飛びすぎだ! 妙に具体的な地名を出すな!」
そんな俺のツッコミの後ろから、大きな爆弾が2つ飛んで行く。ピンクだ。
「こんな爆弾はこうだ!」
ケイシマンはランニングマシンを振り回し、爆弾2つを弾き飛ばした。
こいつはこれしかできないのか!? 見た目通り脳筋なやつだ。
「おいブルーよお、てめえは何もして来ねえのかよ? そこで仁王立ちのまま絶命するつもりか?」
「弁慶か! そんな最期を迎えるつもりは無い。気づかないのか? お前がもう俺の策に嵌っていることに」
その瞬間、ケイシマンの周りの地面が一気に落ちた。
「何ィッ!? この決闘はドッキリだったのかよ!」
「そんなわけあるか! 売れ始めの芸人じゃないんだから!」
ご丁寧に場所まで提示してあったものだから、俺は事前にこの場所に落とし穴を作っておいたのだ。バレないようにしっかりと穴に蓋をし、仲間がケイシマンに攻撃している間にその蓋の淵を少しずつ撃ち抜いていたのだ。
どうだ? クールな策だろう?
「てめえ……! やりやがったな! 俺様の後頭部を刈り上げやがるとは……!」
「なんだそれ知らないぞ!? お前が落ちた時に勝手にちぎれたんじゃないのか!?」
「虎刈りになっちまったじゃねえか……! この恨み、どうしてくれようか……」
「そもそもお前そのロボットみたいな見た目で髪の毛があるのか!?」
俺たちハシレンジャーは、ケイシマンが落ちた大穴を覗き込む。自称虎刈りになってしまったケイシマンは、後頭部を掻きむしりながら俺たちを見上げた。
「てめえら、よくもやってくれやがったな! 今上っててめえらを4月してやるぜ!」
「始末だろう! なんでエイプリルするんだ!」
「4月したら5月して6月して、9月してやるぜ!」
「夏休みだけ飛ばすな! 1番大事なところだそこは!」
俺がツッコミを入れている間にピンクが無言で爆弾を配る。爆弾を受け取った俺たちは、一斉に穴の中に爆弾を投げ込んだ。




