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【完結】戦隊ブルーはクールでいたい〜頼むから俺を振り回すな〜  作者: 仮面大将G
幹部襲来!

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第57話 変わってないね

 驚愕する俺に目もくれず、そそくさと座り出すその女。「早く終わらせましょう」とでも言いたげだ。


「じゃあ紹介するぞ橋田! こちらはフランス国王ルイ16世の王妃だ!」


「どこがマリーアントワネットなんですか! ブルボン朝の要素無いですよ!?」


「ああすまない。こちらは私の妹、鳥羽栞だ。普段はドーナツの穴を売る仕事をしてるぞ」


「じゃあ詐欺師じゃないですか! 適当に話さないでもらえます!? ……え、ていうか妹ですか!?」


 俺の正面に座る女——栞は、鳥羽部長の妹だったというのか……? 確かにボケ気質なところはあったし、そう言えば苗字も鳥羽で同じだが……。


「そして栞! こちらは私の部下であのハシレンジャーのブルー、ハシダーリ・

アオインティヌスだ」


「勝手にギリシャ人みたいにしないでください! なんですかアオインティヌスって!」


「普段は目的も無く走って山を超えているぞ」


「『無駄に走るメロス』じゃないですか! ただ己を鍛えたい人ですか!?」


「百均をおかずに白飯を食べるらしいぞ」


「特殊な食欲! そろそろちゃんと紹介してもらえます!?」


「ううん、紹介する必要は無いよお姉ちゃん。百均をおかずにご飯食べることも知ってるから」


「嘘をつけ嘘を! 俺がいつそんな奇行をした!?」


 姉妹揃って適当なことを……。だが栞が言うように、紹介する必要など無い。お互いに知った仲だからな。


「おお? もしかして2人は資利合(しりあい)なのか?」


「なんですかその利益しか考えてない変換ミスは! 逆にそれを出す方が難しいでしょう!?」


「そう、私たちは知り合いだよ。お姉ちゃんには言ってなかったけどね」


 栞……どういうつもりだ? 高校生の時に別れてそれっきりだが、今になってお見合いに現れるなんて……。意味が分からない。


「おおそうか! 2人はどういう関係なんだ? 運転手と車掌か?」


「なんで関係性が電車内で完結してるんですか!」


「ならなんだ? ドア前を陣取る人とその正面に立つ人か?」


「1回電車降りてもらえます?」


「ぽとり途中下車の旅だな!」


「落ちてるじゃないですか! 放り出されてどうするんですか!」


 俺たちのしょうもないやり取りを遮って、栞が会話に入って来る。


「お姉ちゃん、この人は私の高校時代の元カレだよ。突発的にドラミングをする癖が嫌で別れたの」


「そんな癖は無い! 俺はゴリラか!」


「そうだったのか、橋田はニシローランドゴリラか……」


「真に受けないでください部長! あと種類を限定しなくていいですから!」


「……ん? ちょっと待てよ? 橋田が付き合ったことがあるのは1人と3杯だったはずじゃ……」


「イカの数え方! 軟体動物と付き合ったことは無いです!」


 部長は俺と栞を交互に見て、ゆっくりと立ち上がった。


「では、後は若い者だけでゆっくり……」


「逃げないでください部長! ああちょっと本当に出て行くんですか!?」


 俺の制止を聞かず、部長は部屋を出て行ってしまった。栞と2人で取り残された状況だ。

 栞は俺と目を合わせず、お茶菓子を少しずつ齧っている。

 数分気まずい時間が流れ、栞が唐突に口を開いた。


「ご趣味は?」


「お見合いを継続するのか!? この状況で!?」


「確かスプーンの先をカットして先割れスプーンにするのが趣味だったよね。順調?」


「順調なわけあるか! 金属のスプーンで先割れを作るのは見たことが無いぞ!?」


 なるほど、栞のボケ気質は遺伝だったんだな。部長よりは強烈ではないかもしれないが、俺を振り回していることには変わりがない。難儀なものだ。


「久しぶりだね碧くん。見た目は全然変わってなくて卑弥呼だけど、今までどうしてたの?」


「誰が邪馬台国の女王だ! どうやったらそう見えるんだ!? ……まあそれなりにな。普通に生きてきたよ」


「お姉ちゃんが碧くんの写真を送ってきた時はびっくりしたよ。まさか高校時代の元カレとお見合いをセッティングするなんてね」


「栞はなんでここに来た? 俺と会う理由なんて無いはずだろう?」


 俺が尋ねると、栞はふっと笑って初めて俺の目を見た。


「うーん、久しぶりに会ってみたかったからかな。碧くんがどんな大人になってるのかちょっと気になったし。でも楽しそうに生きてて良かったよ。ドラミングする癖は変わってないけど」


「ドラミングは昔からしていない! そんなクールじゃないことを俺がするか!」


「……やっぱりまだクールを目指してるんだね。でも碧くん、気づいた方がいいよ? 碧くんはクールでいるよりも、面白いツッコミをしてる時が1番輝いてることに。まるで常夜灯みたい」


「そんなに光ってないじゃないか! なんでそんな地味なもので例えた!?」


「ふふ、やっぱり変わってない。そういうところ、結構好きだったよ」


 そう言うと栞はそっと立ち上がり、部屋を出て行こうとする。


「もう行くのか?」


「うん。久しぶりに会いたかっただけだし。碧くんともう一度付き合うつもりは無いからね。あと碧くんには私よりいい人がいるよ。お姉ちゃんをよろしくね」


「……は? どういう……」


 俺が意味を尋ねる前に、栞は部屋から出て行ってしまった。取り残された俺は、後ろを向いてお茶菓子を2つ投げる。


「さぼんっ!」


「ばすろまんっ!」


 入浴剤みたいな悲鳴を上げ、紅希と黄花がおでこを抑えているのが見えた。とりあえずこいつらを締め上げるのが先だな。しかし栞の言葉の意味は一体……。

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