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【完結】戦隊ブルーはクールでいたい〜頼むから俺を振り回すな〜  作者: 仮面大将G
幹部襲来!

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第56話 恋愛下手はクールを装う

 数日後——。俺はカッチリとしたスーツに身を包んでいた。

 いや、それだけならいつも通りなのだが、状況がいつもと違う。いつもなら出社するためのスーツだが、今日は鳥羽部長が強引にセッティングしたお見合いのためのスーツだ。


 なんでこんなことに……。改めて言うが、俺は今女性に興味が無い。誰かと交際するつもりも無いし、結婚なんて以ての外だ。

 同じことを何度も部長に言っているのだが、「人生は恋愛だ!」の一点張りで言うことを聞いてくれない。なんだその恋愛脳のシン〇バッドみたいなセリフは。大学デビューみたいじゃないか。


 そもそも人生は恋愛だと言うなら、自由にさせて欲しいものだ。お見合いは言ってしまえば最初から付き合うこと、あるいは結婚することを意識して異性と会うこと。そんなことを意識せずに女性と接し、自然と恋仲になっていくのが恋愛というものではないだろうか。


 色々御託を並べてみたが、要するに俺はこのお見合いに乗り気でないのだ。意気揚々とピンクの着物で現れた部長を見て、大きなため息が出る。なんでこの人は母親ヅラして座っているんだ……。

 まあどんな相手が来たとしても、俺が乗り気でないところを見せればいいんだ。そうすれば相手が勝手に諦めてくれるだろう。


「橋田、お相手は少し遅れるそうだ。せっかくだからキャットタワーでも作るか?」


「何が『せっかく』なんですか! 暇つぶしでやることじゃないでしょう!?」


「でもキャットタワーで遊ぶミーアキャットの姿は微笑ましいものだぞ?」


「ミーアキャットは猫じゃありません! なんで敢えて猫じゃない動物を選んだんですか!」


 こんな状況でもマイペースな部長に呆れてしまう。どうやったらこんな思考回路になるか、逆に教えて欲しいくらいだ。


「そう言えば橋田、君はどんな恋愛遍歴をしてるんだ? ばったり教えてくれ」


「こっそりとかじゃなくてですか!? そんな偶然教えないですよ!」


「まあまあそう言わず、腹を切って話してみろ」


「切腹じゃないですか! 話を聞くのにそんな理不尽なことあります!?」


 お見合い相手がいつ来るか分からない状況で、よく俺の恋愛遍歴など聞けるものだ。もし外で聞かれていたらどうするんだ?

 それに、俺の恋愛遍歴はあまり話したくはない。何故なら——。



「碧くんてなんか理屈っぽくて嫌だよね。私の感情に寄り添ってくれない感じ」


「えっ……? 俺が理屈っぽいのは常に論理的に思考しているからであって、それは性格や思考のクセの問題だから治しようは……」


「そういうところ。付き合う前はクールでいいなーって思ってたけど、話してたらずーっと理屈理屈。私はリクツエストしてない話ばっかり」


「理屈とリクエストで新しい言葉を作るな! 何上手いこと言ってるんだ!」


「ふふ、ツッコミが全力なところは好きだったよ。でも私はもう無理。頭の中が理屈でいっぱいで、粉塵爆発しそう」


「粉塵は必要だったか!? 普通に爆発で良かっただろう!?」


「じゃあね、碧くん。きっと私よりいいネアンデルタール人が見つかるよ」


「可能ならホモ・サピエンスを希望したいが!?」



 ——これが俺の最初で最後の恋愛だ。高校1年生の時以来、俺に彼女はいない。それもこの時は彼女から告白してきたのであって、元々俺は異性に興味の無い子どもだった。


 そもそも、俺に恋愛など向いていないのだ。異性に愛想良くもできないし、また理屈っぽいから嫌だと言われては、俺の存在自体を否定されたように感じてしまうことは間違い無い。俺は論理的に思考するのが1番だと思っているからな。


 だからこそ、今回のお見合いも乗り気じゃないし、部長に恋愛遍歴も話したくなかった。

 一通り聞いた部長は、頭を抱えてしまっていた。


「まさか橋田の恋愛観が高校生で止まっているなんて……」


 そんなに絶望されることだろうか……。確かに人より恋愛経験は少ない。だがその分俺は人よりクールに生きてきたはずだ。それはそれで本人が満足してるならいい人生じゃないのか?


 だが俺が気になっているのは部長のリアクションよりも、襖の隙間から覗いている4つの目だ。


「ひょえ〜! 碧がお見合いなんて、これは見学するしかねーぜ!」


「面白いにもほどがあるわね。もしカップルが成立したら離婚届をもらいに行きましょう」


 何段飛ばしで離婚させる気だこいつは!? 俺がお見合いなどすることが分かったらこいつらは絶対に見に来ると思ったが、案の定だったな。

 まあいい。どうせ成立はしないんだ。ゆっくり見学させて、精々がっかりしてもらおうじゃないか。


「お、橋田。お相手が来たようだぞ! さあ迎え入れるために焚き火を起こしてその周りで踊るぞ!」


「どこの民族ですか! 普通に座ってればいいでしょう!」


「このためにロボットダンスを練習してきたんだ。腕が鳴るぞ!」


「シュールすぎますよ!? なんでお見合いに入って来たら相手がロボットダンスしてるんですか! 場所を間違えたと思うでしょう!」


 紅希と黄花が覗いている襖とは反対側の襖が開き、白いワンピースを着た女が入って来る。その姿を見た瞬間、俺は絶句した。

 余りにも見覚えがあるその顔。呆れたような視線。昔は黒かった髪が赤みのかかった茶色に染まっており、ショートボブに切り揃えられている。

 ため息をつきながら入って来たのは、高校生の時俺を振ったあの女だった。

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