第50話 情報交換
「なるほどな、ケイシマンか……」
俺の話を聞いたハシレイは、腕を組んで考え込んだ。やはりケイシマンは強力な幹部なのだろう。ケイブマンを撃破した途端に出て来たこともあり、悩むのは当然だ。
「ハシレイ、お前はケイシマンについて何か知っているのか? ケイブマンの時はかなり反応していたようだが……」
「いや、ワシはケイシマンのことはそんな知らんのや。ケイブマンについてはある程度知っとったんやけどな。あいつはワシの仇やったからな」
「仇……? ケイブマンに何かされたのか?」
「せや! ワシの大事にしとった泥団子を潰されたんや! あの恨みは忘れへんで……」
「子どもか! そんなしょうもない恨みを持つな!」
「でもピカピカの泥団子やったんやで? サラ粉もたっぷり付けて、太陽の光を反射してそれはそれは綺麗やったんやで!」
「どうでもいい! だから子どもかって!」
「あれはもう発光しとったな。MUDライトと呼んでも過言ではないな」
「LEDライトみたいに言うな! 要するに泥じゃないか!」
ハシレイの泥団子話はどうでもいいが、今回知りたいのはケイシマンについてだ。ケイブマンはもう倒してしまったから関係無い。
むしろ何故今ケイブマンの話をしているのか不思議なくらいだ。
しょうもない話をするハシレイに、鳥羽部長が素朴な疑問をぶつける。
「司令はホーテーソク団について詳しいわけじゃないのか? 私はかなり詳しいと思い込んでいたが」
「ワシかて外部のもんやからな。ホーテーソク団のことを何でも知ってるわけやない。ただ、長年ホーテーソク団と戦ってきたから知ってることもある。それだけや」
「なるほど、政治関連のことを呟けばフォロワーが簡単に増えるのか……」
「話聞いてました!? それは炎上してるだけですよ!?」
部長の相手を基地でもしなければならなくなったから大変だ。必ずと言っていいほど話を聞いていないか、関係無いことを考えているかのどちらかだからな。真面目に聞いて欲しいものだ。
だが意外だったのはハシレイがホーテーソク団にそこまで詳しくないと明言したこと。俺はハシレイがホーテーソク団の人間だと疑いをかけたままなわけだが、本当にホーテーソク団について詳しく知らないのだろうか……。もしかすると知らないフリをしているだけかもしれない。慎重に話を進めなければな。
「紅希、碧、ケイシマンは何を言うとった? それによってワシらの対応が変わってくる。もし秋祭りでわたあめの屋台をやるなら、ワシは焼きそばに方向転換せなあかん」
「秋祭りの方向性で衝突してる場合か! そんなしょうもないことで戦うな!」
「なんかよく分かんなかったけどマッチョだったぞー? サラダチキン持ち上げてダンベル食うらしいぜ!」
「だから逆だ逆! ……ああ確かにケイシマンはそう言ってたな! なんで揃いも揃ってバカばっかりなんだ!」
ハシレイと紅希、あとケイシマンのアホな発言に振り回されつつ、俺はケイシマンとの会話を振り返る。
「確かケイシマンは、これから怪人を派遣すると言っていた。自分が出るまでもないと言っていたな。舐められたものだ」
「そうなんか……。てことは暫くはケイシマンが直接出張ってくるっちゅうことは無いわけやな。あとはわたあめかどうかか……」
「わたあめはどうでもいい! なんで屋台を出す前提で話が進んでいる!?」
「黄花、自分はケイシマンについてどう思う? ケイブマンとも直接戦った者として意見を聞いときたいんや」
ハシレイはここまで黙って紅茶をがぶ飲みしていた黄花に話を振る。2リットルのペットボトルから口を離した黄花は、ハンカチで口を拭って話し出した。いやなんで2リットルペットボトルで飲んでるんだ! サッカー部か!
「私はこちらからケイシマンに突撃してもいいと思ゲフッ。ケイブマンも倒したわゲフだし、桃子さんも仲間に加わっゲフ。今の私たちなら、ケイシマンとやらにも勝てるゲフッゲッフウ!」
「ゲップをなんとかしろ汚いな! 落ち着いてから話せ!」
「こら橋田。ゲップは生理現象だ。汚くて反吐が出て外に飛び出してよさこいソーランを踊りたくなるなんて言うもんじゃないぞ」
「そこまで言ってませんし内容が意味不明です! どんな欲求なんですかそれは!?」
少し考えていたハシレイだが、ポンと手を打って立ち上がった。
「考えてもしゃーない! とりあえずワシはワシでケイシマンと派遣されて来る怪人について調べてみるわ! あと屋台はやっぱりスーパーボール拾いにしようと思う」
「すくえ! 球拾いじゃないか! そもそも屋台はどうでもいいんだ! 出すな!」
「俺も唐揚げの屋台とか出して自分で全部買ってやろうかなー?」
「金を出す意味はどこだ!? 家で作って食え家で!」
「私たちは私たちでそのケイシマンとやらについて調べたいわね。碧、会った時何か分からなかったの? 好きそうな服のブランドとか」
「知らないが多分ア〇ダーア〇マーだ! そんなどうでもいい情報を知ってどうする!?」
「おお! みるみるフォロワーが増えていくぞ!」
「だから言ったのに! 炎上してないで早く投稿消してくれます!?」
こうしてこの場は解散となり、俺たちはそれぞれケイシマンについて調べることになった。
本当にハシレイはケイシマンのことを知らないのか? 何か怪しいような気もするが……。




