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第48話 朝の出来事

 鳥羽部長がハシレピンクになってから数日——。俺は久しぶりの休日に、朝から散歩をしていた。


 清々しい朝だ。そよ風が吹き、太陽も照っている。気温が下がってきて、晴れていても暑くない。むしろ涼しいくらいだ。

 こんな心地のいい朝にのんびりと散歩をする。これほどまでに爽やかな過ごし方があるだろうか。


「ティッティラオーック!」


 小鳥の鳴き声とニワトリの鳴き声が混じり、朝の訪れを告げる。……ん? ニワトリ? やけに違和感のあるニワトリだった気が……。

 目を凝らすと、茶髪を立ち上げて赤いレザージャケットを着た青年が、小鳥に向かって鳴き声を上げていた。


「ティッティラオーック!」


「……紅希。お前は朝から公園で何をしている?」


「おー! 碧じゃねーか! 俺は小鳥と遊びたくてさ、鳥の鳴き真似をしたら仲良くなれんじゃねーかなってやってたんだ!」


「だとしたら鳴き真似のチョイスがバグってるぞ!? なんでフィリピンのニワトリなんだ!」


「だって俺それしか鳴き真似できねーからさ、できることからやってくのが1番だろー?」


「理論は間違ってないが目的が意味不明だ! そもそもお前は小鳥と何をして遊ぶつもりだったんだ!」


「そりゃー賭け麻雀とか」


「鳥が何を賭けるって言うんだ! お前いっちょ前に麻雀はできるのか!?」


 相変わらずハチャメチャな紅希に呆れつつ、俺は近くにあったベンチに腰掛ける。

 全く、せっかく爽やかな朝だったのに無駄にツッコミをして疲れてしまったじゃないか。なんでこいつは1人でいてもこんな感じなんだ……。


「ところで碧は何してたんだー? 担保かー?」


「散歩だ! 唐突に連帯保証人にするな!」


「散歩かー! あれだろ、次の塁に向かって走るやつだろ?」


「お前は散歩のことを盗塁だと思ってるのか!? どうやったらそうなるんだ!」


「朝から散歩なんて碧は意識が高いな! よっ! ホームラン王!」


「せめて盗塁王だろう! なんで全部例えが野球なんだ!?」


 休日までこんなアホの相手をさせられるのか……。疲れを取るための1日を過ごしたかったのに、更に疲れさせられてしまうぞ。

 呆れながら紅希の方を見ると、バカみたいに口をあんぐり開けた紅希が、明後日の方向をじっと見ていた。


「どうした紅希? また肉ビュッフェでも見つけたのか?」


「そんなんじゃねーよ……。碧、あれ見てみろ!」


 紅希が指差した方を見ると、車高が極端に低いパトカーが停まっていた。パトカーのくせにヤンキーじみた車だな……。


 するとシャコタンパトカーから大柄な男が降りて来る。警官のような服装をして制帽を被り、涼しくなってきたというのに腕まくりをしている男の顔は、まるでロボットのようだった。機械的な顔に直角三角形で黄色く光る目が付いており、ひと目でホーテーソク団だと分かる顔だ。


「ああもうやってらんねえなあ。なんで俺様が出て来なきゃならねえんだよ! ケイブマンのやつ、あっさりやられやがって……」


「……お前、何者だ?」


「ああ? てめえらに名乗ってやる義理なんかねえが、知りてえなら名乗ってやるよ。俺様はケイシマン。ホーテーソク団の幹部だよ。暇な時はサラダチキンを持ち上げたりダンベルを食ったりしてる」


「聞いてないし逆だ逆! ダンベルを持ち上げてサラダチキンを食え!」


「てめえらがケイブマンをやったハシレンジャーってやつだな? やつは幹部でも最下級の男だったが、それでも地球人なんかにやられるようなやつじゃねえ。てめえら、何しやがった?」


「そんな趣味の悪い車に乗っているやつに答える義理は無い。普通のパトカーに乗ってから出直して来い」


「ああ!? んだと!? この車すげーイカしてんだろうが! 見ろや、窓ガラスにステッカーも貼ってあんだぞ! 『廉価上等』って」


「せめて喧嘩上等だろう!? 何故安くする!?」


 さてはこいつ、紅希と同じかそれ以上のバカだな? マッチョヤンキーっぽい雰囲気だが、脳筋を通り越してただのバカだ。


「おめー幹部なのかー? ならまた叩き潰してやるぜ! 俺たちハシレンジャーがな!」


「てめえらに俺様は倒せねえよ。俺様はケイブマンとは違う。見ろよこの筋肉! 美しいだろう?」


 そう言ってケイシマンは俺たちに上腕二頭筋を見せつける。ロボットの見た目をしている割に、真っ黒な筋肉がもろ見えになっていて気持ち悪いな……。


「筋肉がなんだってんだよー! そんなもん俺が食い尽くして、脳筋からノー筋にしてやるぜ!」


「地味に上手いこと言うな! 俺がツッコむ隙がなくなるだろう!? ……いやそんなもの無くていいんだ!」


 ケイシマンは両手を組んで一度伸びをすると、再びパトカーのドアに手をかけ、乗り込む姿勢になる。


「まあとりあえず今日は顔見せだけだ。俺様が派遣する怪人どもに精々やられるがいいぜ。ま、てめえらなんか俺様が直接出張るまでもねえってこった。じゃ、俺様は帰ってランニングマシンを抱えて外に走りに行くからよ」


「なんで素直にランニングマシンで走らない!?」


 パトカーに乗り込んだケイシマンは、そのまま走り去ってしまった。


 一体何だったんだ……? 余裕をぶっこいていたが、ケイブマンに代わって俺たちを倒しに来た幹部ということなのだろうか。

 とりあえずハシレイに報告しなければな。だがハシレイ、あいつの姿を最近見ていない気がするが……。

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