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第45話 突然のゲーム

 時刻は12時を回り、俺は部長と休憩室に向かっていた。


「しかしどうしたら私も変身できるんだろうなあ」


「まだ言ってるんですか部長。いい加減諦めてください」


「そう言われても私も変身したいんだ! 諦めろなんて簡単に言うもんじゃないぞ橋田。ヒーローになるのは私の子どもの頃からの夢、英語で言うとドワーフだ!」


「ドリームです! 小人になりたいのかヒーローになりたいのかはっきりしてください!」


「うーん、じゃあ間を取ってコーローになるか」


「なんですかコーローって! ホイコーローですか!?」


「いや、厚労省だ」


「厚生労働省ですか!? そのもの!?」


 相変わらずむちゃくちゃを言う部長に振り回されながら、サラダにドレッシングをかける。俺は紅希と違ってちゃんとサラダを食べるからな。特に昼食はサラダだけで済ませることも多い。OLか! とかいうツッコミは受け付けないぞ。


「はあ……。どうすればハシレンジャーと一緒に戦えるんだ」


「しつこいですね部長。わざわざ危険に身を投じなくてもいいでしょう」


「だが私はみんなを守りたいんだ! 家族を守れなかったあの時、私にはそんな想いが芽生えたからな」


「家族を守れなかった……? 子どもの頃に何かあったんですか?」


 あの部長にも暗い過去があるんだな……。この人はずっと明るく生きてきたものだと思っていた。こんなことを言っては不謹慎だが、部長にどんな過去があったのか興味はある。家族を失ったというのだから、相当な話なのだろう。


「ああ。あれは私が小学1年生の頃だったか……。誤って家族が殺されてしまったんだ。私の母の手によって」


「え? どういうことです?」


「私の母は毎日のように彼を追いかけ回して、なんとか追い出そう、あるいは殺そうとしていたんだ。あれを見ているのは辛いものがあったな……」


 そんなに目の敵にされている家族がいたのか……。「彼」ということは父親、または男兄弟のことだろうか。祖父なんかの可能性もあるな。


「彼は素早く逃げ回っていたんだが、ある日母の手によって潰されてしまった。母が手を振りあげた瞬間、私は終わったと思ったよ」


 ……ん? 潰された? どういうことだ? 人間がそう簡単に潰されるはずもないだろうが……。


「母のスリッパの裏に付いた彼の遺体は、私が責任を持って庭に埋めてお墓を作ってあげたよ。悲しかったなあ」


「待ってください、その『彼』ってまさか……」


「ん? ああ説明を忘れていたか。彼というのは、同居していたゴキブリのことだ」


「やっぱりそうじゃないですか! 途中からおかしいと思ってましたよ! ゴキブリのこと家族だと思ってたんですか!?」


「当たり前だ! 同じ家に住んでいるものは皆家族! 当然の価値観だ!」


「価値観がぶち狂ってますね!? ゴキブリはどちらかと言えば侵入者とか害虫でしょう!?」


「おい橋田! 私の家族に悪口を言うな! 富士大海は立派なゴキブリだったんだぞ!」


「力士みたいな名前! 無駄に強そうにしないでください!」


「とにかく! 私は富士大海を守れなかった過去から、いつかヒーローになることを決意したんだ! それを私より先に後輩が変身してしまうなんて……ずるいぞ橋田!」


 この手の話で聞くんじゃなかったと思うのは珍しいな。俺の興味を返して欲しい。そんなくだらない理由からヒーローになりたいと思ったのか……。ブレずにめちゃくちゃな人だな。


「いいですか部長、ヒーローというものは……は?」


 部長にヒーローとは何たるものかを説こうとしたその時、俺の周囲は真っ暗になっていた。部長の姿も見当たらない。

 これは……何かされたか? そう思った瞬間、パッと明かりが点く。


「よーーーうこそハシレンジャー! 私のデスゲームへ!」


「デスゲームだと……? ふざけたことを言う前にここから出して欲しいものだが?」


「せっかちにもほどがあるわね。私はブスゲームというものに興味があるわ」


「黄花! お前もいるのか!? あとブスゲームはただのにらめっこじゃないか!?」


「やっと明るくなったぜー! あれ? 俺が食ってたトンカツの豚肉味はどこ行ったんだー?」


「紅希! お前もか! それはただのトンカツだろう!?」


 まさかの仲間たちの揃い踏みに驚く間も無く、どこからか聞こえてくる声はとんでもないことを宣言した。


「私はデスゲームマン! 君たちハシレンジャーを倒すために派遣されたホーテーソク団の怪人さ! 今から君たちには、デスゲームに参加してもらうよ! 生き残れるのは、1人だけさ」


 1人だけだと……? つまり俺たちは今から、仲間を犠牲にして生き残るためのゲームに参加しなければならないということか?

 ふざけたことを。どうにかして全員で脱出しなければならないな。


「何言ってんのか分かんねーけど、俺たちが全員でお前に勝てばいーんだろ? みんな、行くぜ! ……あれ?」


 紅希の掛け声でハシレンジャーにチェンジしようとしたその時、俺たちはハシレチェンジャーが無いことに気が付いた。


「あーーー言うのを忘れていたね! 君たちの物騒な変身アイテムは、取り上げさせてもらったよ! てことで、君たちは私に直接攻撃することはできない! つ・ま・り、ゲームに参加するしか無いってことさ!」


「いいわ。やってあげましょう。どうにかしてこいつを出汁抜いて、全員で脱出してやるのよ」


「変換ミスが酷いぞ! なんだその味が薄くなりそうな変換は!」


「しゃーねーなー、やってやんよ! で、俺たちがやるゲームは何だ?」


「物分りが良くて助かるよ。君たちがやるゲームは、生き残りを賭けた大縄跳びさ! うちの戦闘員が回し手をやるから、誰か1人でも引っかかったら君たちの負け。全員死んで第七王子に転生してもらうよ!」


「おい話が違うしラノベみたいな生まれ変わりをさせるな! 待て、勝手に始めるな!」


「じゃあスタート!」


 突然現れた戦闘員2人が縄を回し始め、俺たちは否応なしに縄を跳び始めた。

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