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第38話 倒し切れ!身体暴走!

「おめーら! これを飲んで身体暴走を使うぜ!」


「待てレッド、お前は身体暴走を使えるが、俺とイエローはまだ……」


 俺たちの経験値はまだ身体暴走が使える程度に溜まっていなかったはずだ。もう少しではあったが、ハシレイが適当に作ったグラフだとどれだけの経験値が必要か分からない。今エナジードリンクで強制的に身体能力を底上げし、身体暴走を使うのは危険だ。


「思い切りが悪いにもほどがあるわね。いいから飲むのよブルー」


「だが身体暴走を使うと、恐らく俺とイエローは歯止めが効かなくなってしまう! そうなった時どうする?」


「だいじょーぶだよ! そん時は俺が一人で帰るから!」


「諦めるな! 何普通に見捨ててるんだ!」


「ああもう、面倒ね。さっさと飲みなさい」


「うぐっ! ぐっ!」


 イエローが無理やり俺にエナジードリンクを飲ませた。すると体の底から力が湧いて来るのを感じる。


「さあ2本目行くわよ。腰に手を当てて一気に飲み干しなさい」


「風呂上がりの牛乳か! 別に俺は温泉に行ったわけじゃないぞ!」


 結局俺はエナジードリンクを2本飲み干してしまった。レッドとイエローも同じく2本飲み干し、立ち上がってラジオ体操第二をしている。


「なんでラジオ体操をしてるんだお前らは! 呑気か!」


「限界を超えた身体能力を使うのよ。肉離れとかしないようにしないと」


「そーだぜ! ところで肉離れって悲しい言葉だなー。俺はぜってー肉から離れねーぞ! もう語尾に肉つけてやるぜ肉!」


「肉離れの意味が違うぞ! なんだ語尾が肉って!」


「なんだってそーだなー……例えば『豪速球をジャストミート肉!』とか」


「語尾のせいでミートの意味が変わってるじゃないか! ややこしい例文を出すな!」


 俺たちが言い合っていると、ヨガ怪人たちがこちらに向かって来る。


「さあて、トドメを刺してあげましょう! ヨガり声を上げなさい!」


「いつ言うかと思って冷や冷やしていたがついに言ったな! しょうもないダジャレを言うな!」


「黙りなさい! 私語は禁止だと言ったはずですよ! そのまま軟式野球ボールのポーズをしなさい!」


「軟式である必要性はどこだ!?」


 俺たちの体はまたひとりでに丸まっていく。このままでは本当に負けてしまう……! どうする……?


「よっしゃー! 行くぜおめーら! マウスピースを食いしばれー!」


「歯じゃなくてか!? 何ちゃっかり歯を保護してるんだ!」


「いいからやるわよブルー。このまま何もせず負けて遺言で『電気ケトル』って言うよりマシだわ」


「なんでその遺言に限定されるんだ! アマ〇ンのほしい物リストか!」


「やるぜー!! 覚悟決めろー!」


 レッドの声で、俺たちはハシレチェンジャーのアクセルに手をかける。バットを持って迫って来る怪人を見ながら、俺たちはアクセルを回した。


「身体暴走!!」


 ドクンと心臓が跳ね、血の巡りが突然速くなる。とんでもない力が漲ってきて、体が勝手にヨガ怪人の指示に逆らい始めた。


「うおおおおおおお!! はあッ!!」


 俺たちはヨガ怪人の指示を振り切り、両腕を広げて立ち上がった。


「なっ!? 何故私たちの指示に逆らえるのです!? さては今日から中学生ですか!?」


「そんなわけあるか! 反抗期で能力に逆らえるか!」


「どうせ私たちが夕飯に作ったカオマンガイも食べてくれないんでしょう? 酷いですよ!」


「なんでタイ料理なんだ! そもそも俺たちの夕飯を勝手に作るな!」


「とにかく! 今度こそ強烈な指示を出しぶっごあ!!」


 ヨガ怪人の言葉を聞かずして、俺たちは怪人たちを殴り飛ばしていた。


「な、なんてパワー……! まるで働きアリのよう……!」


「例えがピンと来ないな!? そりゃ相対的には凄いパワーなんだろうが!」


「例えがピンと来ないにもほどがあるわね。それは相対的には凄いパワーなんでしょうけど」


「今全く同じ内容を言った! 何故繰り返した!?」


「よっしゃー! このまま行くぜー! エンジン全開だー!」


 俺たちがヨガ怪人に向かって走り出すと、気づいた頃にはヨガ怪人は再び宙に舞っていた。


 恐ろしいな……。自分でも今何をしているのか理解が追いつかない。ただ目の前にあるものを思い切り破壊したい。そんな衝動が俺の体を動かしているようだ。

 確か身体暴走は脳に影響が出るということだっが、意識はしっかりある。だが体の暴走が止められない。脳が勝手に体に指示を出し、動かしているということか。このまま怪人を倒したとして、俺たちはこの辺りを全て破壊してしまうのではないだろうか?


 ボコボコのスクラップのようになってしまったヨガ怪人たちは、まだ両手を向けてヨガの指示を出そうとしてくる。

 イエローがその両手を踏みつけ、拳を振り上げて言った。


「ヨガ怪人。これで終わりよ。最後に一つだけ。あなたたち、名前はなんて言うの?」


「そう言えば聞いてなかったが今聞くことか!? ずっとヨガ怪人と呼んでいたが、どうせヨガマンとかだろう?」


「いえ……私たちは2人いるので、ヨガマンではなくヨガメンです」

 

「そんなブタ〇ンみたいに!」


「終わりだヨガメン! 食らえー!」


 俺たちは各々の武器を合体させた。レッドを中心に並び、その肩に手を置く。


「暴走バスター! ハシレショット!!」


 至近距離から放たれた3色のタイヤは、すぐにヨガメンにぶち当たって空へと持ち上げた。空中で爆発するヨガメンを見ながら、俺の体はイエローに向かって行く。

 同じくイエローも俺の方へ走って来て、お互いに拳を振り上げた。

 ……やはりこうなるか。仲間同士で潰し合うのが1番良くないが、身体暴走でこうなってしまうことは予想できていた。レッドが止めてくれるのを期待するしか……。


「俺に任せろー! お前たちを眠らせてやるぜー!」


 なるほど、眠ってしまえば体の暴走も止まるかもしれない。レッドは俺とイエローの間に入り、俺たちの拳を腕で止めて叫び始めた。


「ラム肉が1匹! ラム肉が2匹! ラム肉が3匹!」


「加工してから数えるな! 羊で数えろ羊で!」

 

「ラム肉が0匹! ラム肉が1匹! ラム肉が10匹! ラム肉が11匹!」


「なんで2進数なんだ! 考えてむしろ眠れなくなるだろう!?」


「あら、なんだか眠くなってきたわね。ヤギの夢を見られそうだわ」


「なんで眠くなれるんだ!? せめて羊の夢を見ろ!」


 そう言う俺も意識がぼんやりとしてきて、チェンジが解除されたのを感じる。

 そのまま俺と黄花は眠りにつき、初めての身体暴走は無事収まったのだった。


 夢の中で羊を追いかけ回していると、体が持ち上げられ、どこかへ連れて行かれるのを微かに感じた。

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