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第27話 碧の占い

 俺がスマホで電話をかけた相手は、会社にいる鳥羽部長。勤務中だが恐らく今は広報の仕事でスマホを使える状況にあるだろう。

 2、3秒呼出音が流れ、部長の声が聞こえた。


「サンバ! サンバ! ハシレイサンバ!」


「何をしてるんですか部長! まだサンバを引きずってるんですか!?」


「あ、ああ橋田か。すまない、今ちょうど経理の方で作業をしてたんだ」


「経理のどの作業でサンバを口ずさむんですか! 陽気すぎるでしょう!?」


「口ずさむだけじゃないぞ。ちゃんと踊った上で録画してSNSに上げるところだ」


「絶対にやめてくださいね!?」


「なんでだ? 私のピンクのサンバ衣装を見たくないのか?」


「誰が上司のそんな姿見たいんですか! そんなことより部長、頼みごとがあるんですが」


 レッドとイエローがウラナイマンに向かって行っては転ばされるのを見ながら、俺は電話口に向かって話し続ける。


「どうした橋田? ああ! お前もネイルをしたいんだな? 鷹の爪ネイルとかか?」


「なんでトウガラシにネイルするんですか! どんなネイルをするのか逆に気になりますが!?」


「そりゃあれだ、『シシトウ』とか書けばいいんじゃないか?」


「ややこしいでしょう!? いやそんな話じゃないんです!」


 どれだけマイペースなんだこの人は……。明らかに緊急事態だろうに。


「今かなり厄介な敵と戦ってるんです。エナジードリンクが必要なので、持って来てもらえませんか?」


「なら司令官に頼めば……ああ、それは今は難しいか。よし、私が基地に行って持って来よう」


「助かります。頼んでおいてなんですが、急ぎめで来ていただけると」


「分かってるさ! トラクターで向かおう!」


「急ぐ気無いじゃないですか! 土を耕さないでください!」


「草刈機は取り付けた方がいいか?」


「付けないでいいしそもそもトラクターに乗らないでもらえますか!? なんで畑作業するんですか!」


「とにかく急いで向かうぞ! 耐えていてくれ!」


「本当に! 本当に急いでくださいね!」


 最後の言葉を言い終わる前に電話が切られ、俺はウラナイマンの方へ向き直る。


「ブルー! 何してんだー! 早くこっちに来て戦ってくれよー! こいつ強えんだよ! このままじゃ目が立たねー!」


「歯じゃなくてか!? 目が自立したら怖いだろう!?」


「ブルー、無責任にもほどがあるわね。そのスマートフォンをボクシング占いに使ってあげようかと思ったわ」


「なんだボクシング占いとは!? 嫌な予感しかしないぞ!」


「もちろん、そのスマホ目がけてパンチを繰り出すのよ」


「ただ殴ってるだけじゃないか! 俺のスマホはサンドバッグじゃないぞ!」


「大丈夫よ。ちゃんとKOまで持っていくわ」


「何も安心できないんだが!?」


「ブルーの運勢ハ、大吉デース! イエローのパンチをたくさん受けられマース!」


「俺がドMの前提で占うな! 何が悲しくて味方に殴られなきゃいけないんだ!」


 どいつもこいつも好き勝手言ってくれるな。だが部長が来ればこちらも多少優勢になる。それまでどう耐えるかだが……。


「アナタたちノ運勢は、大凶デース! 私のパンチを雨のように浴びられマース!」


「こんのやろー! なら俺は対抗してランチだー!」


「飯を食うなこの状況で! よくそんな呑気にできるな!」


「痛いにもほどがあるわね。ブルーの一人称が『吾輩』だった時ぐらい痛いわ」


「俺にそんな時期は無い! あと痛いのベクトルはそれで合ってるのか!?」


 軽口を叩いているようだが、かなりピンチだ。この状況を乗り切るには、部長の持って来るエナジードリンクが必要……なのだが、このままでは部長が来る前にやられてしまう。

 考えろ。クールに考えるんだ。この状況を打破するには——。


 ……分かったぞ。俺は何を悩んでいたんだ。簡単なことじゃないか。


「ブルー、アナタの運命はもう決まってイマース! このまま地獄にオチぶっほあ!!」


 ウラナイマンが言い終わる前に、俺は近くにあった籖筒を投げつけていた。


「何故俺はお前に占われるのに従っていたんだろうな。俺がお前を占えばいいだけだったのにな。お前の運勢は、大凶だ! 籖筒の逆襲に震えろ!」


 そう言ってもう一度籖筒を投げる。俺の行動に気づいたレッドとイエローは、そこら中に転がっている籖筒を拾い上げ、同じように投げつけた。


「うおおおおおおおお!!」


 そのまま俺たちは、ウラナイマンが見えなくなるまで籖筒を投げ続ける。

 籖筒が無くなった頃、ウラナイマンは体中に籖筒が刺さった状態で倒れていた。


「しゃー! 重いじっちゃま!」


「思い知ったかだろう! なんだその太った老人は!」


「皮肉にもほどがあるわね。自分の商売道具でロコモコにされるなんて」


「それを言うならボコボコだ! 美味しく調理してどうする!」


 俺のツッコミが入った瞬間、ウラナイマンは大爆発。俺たちの勝利が決まった瞬間だった。


「よし、これでインチキ占い師事件は解決だな。基地に帰ってゆっくりするか……」


「ブルー! いい判断だったぜ! これで晩飯の焼きティッシュ丼も気持ちよく食えるな!」


「なんだその常軌を逸した貧乏飯は! そのティッシュは灰になっていないか!?」


「私も今日は流石に疲れたわね。レッドみたいにスタミナを付ける料理を食べなければいけないわ。回鍋肉のムニエルとか」


「ムニエルにする必要はあったのか!?」


 俺たちは話しながらチェンジを解除し、帰る方向へ歩き出す。


「碧、あなたの晩ご飯は何にするの? 良かったら私の焼き海苔占いで……」


「占いはもうたくさんだ!」


 俺は紅希と黄花にツッコミを入れながら、基地へと向かった。

 後で部長から鬼のように電話が来たのは言うまでも無い。


「ハシレンジャー、順調に成長しとるな。そろそろワシも頑張らんとな……」


 基地でハシレイが何かを言っていたようだった。

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エナジードリンクで何をする気だったんだブルーさん…!部長にあやまりなさい!部長急いできたんだぞ!…おそらくコンバインで…そりゃ遅いだろうなあ…
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