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第24話 部長の協力

 カタカタカタ——。パソコンのキーボードを叩く音だけが響く中、俺はデスクで頬杖をついて考えごとをしていた。もちろんハシレイのことだ。会社でこんなことを考えるのも良くないが、気になって仕方がないのだ。


 どうにも俺はハシレイが純粋な味方だとは思えない。ホーテーソク団とどのような関係があるのか、俺が独自に調べないとな……。


「橋田、どうしたんだ? 今にもサンバを踊り出しそうな顔をして」


「そんな陽気な顔をしてますか!? 自分では深刻そうな顔のつもりだったんですが!」


「そう言われればそうも見えるな。人によって見え方が変わるんじゃないか?」


「俺はだまし絵か何かですか!? どう見ても楽しそうには見えないでしょう!?」


「私には橋田の肌がベージュ、唇が赤に見えているが、ストレスが溜まっている人には肌が青、唇が紫に見えるぞ」


「ただ凍えてる人じゃないですか! 俺の血色でストレスチェックしないでください!」


 相変わらず鳥羽部長はマイペースだ。人がこんなに真剣に悩んでいるのに、わけの分からないことを言って振り回してくる。


 だがもやもやした気分を少し晴らしてくれる人でもある。こういう明るい人間の存在というのは、時に必要なものなんだな。

 そんなことを考えながら、俺の頭に紅希と黄花の顔が浮かぶ。そういえばあいつらも能天気で明るいな。もしかしたら俺はあいつらに救われている部分もあるのかもしれない。もちろん疲れさせられている方が重いのだが。


「それで、なんでそんな顔をしてるんだ? 私で良ければ聞くぞ。なんなら一緒に踊ってやってもいい」


「だからサンバは踊らないんですよ! なんで踊る方に持って行くんですか!」


「ああすまない。ルンバの方だったか?」


「ダンスの種類で怒ってないんです! 踊らせないでください!」


「踊らないのか? なら私だけ踊ろう。よさこいソーランでいいか?」


「良くないです! 踊らないで落ち着いて聞いてもらえますか!?」


「むう、仕方ないな。じゃあとりあえず聞かせてもらおうじゃないか」


 そう言うと鳥羽部長は俺の隣に腰掛ける。いつの間にか用意していたコーヒーを俺と自分のデスクに置き、話を聞く体勢になった。


「部長に話していいことなのか分かりませんが、他のメンバーでは話にならないので客観的な意見をいただければと思います。実は俺は、司令官のハシレイがホーテーソク団側なんじゃないかと疑っているんです」


 俺は部長に今までのハシレイの言動について話した。俺の質問を躱すような態度が多く、自分の情報を何も開示しないこと。話すことも事実かどうか現段階では判別が付かないこと。ヘルメットを頑なに取らないこと……。洗いざらい話した形だ。


 一通り聞いた部長は、啜っていたコーヒーを置いて腕を組んだ。


「なるほど……。司令官は普段そんな感じなのか。確かに怪しいと思えなくもない。他のメンバーは疑ってないのか?」


「黄花が時々鋭い発言をするんですが、本人としては疑っていないようです。天然でしている発言かと」


「そうか……。私が接していた感じだと、司令官に悪い印象は持たなかったんだがな。野球の話で少し盛り上がったぐらいだ」


「また野球の話してたんですか! そういえば部長も野球がどうこう言ってましたね」


「そうなんだ! 好きなポジションの話で盛り上がってな、私は当然ブルペンキャッチャーで、司令官はランナーコーチが好きらしい! やはり野球というのは面白いな!」


「なんでどっちも試合に出ない人なんですか! どこで面白さ感じてます!?」


 なんでこの人たちは野球の裏方で盛り上がれるんだ……。俺も野球に詳しいわけではないが、普通は選手を見るものだと思っていたぞ。


「そんな感じだったから私は司令官のことを疑ってなかったが、君がそこまで言うなら何か裏があるのかもしれないな。そういう調査は戦隊メンバーである君より、私みたいな部外者の方が適任かもしれない。気を抜いてボロを出すかもしれないしな」


「なるほど、それは一理ありますね。エナジードリンクの補充とか適当に名目をつけて、部長も基地に自由に出入りできるよう手配してみます」


「それは助かるぞ! 司令官のことを探るのももちろんだが、君たちハシレンジャーを1番近くで応援できるようになるな! そしてあわよくば私も……」


 部長が何か言いかけたところで、ハシレチェンジャーに通信が入る。


「碧、今大丈夫かしら?」


「黄花、どうした? ホーテーソク団か?」


「まだ確定ではないのだけれど、怪しい動きをしている場所を見つけたの。今話題の占い師を知ってるかしら?」


「……あいにく、俺はその類のものを信じていなくてな」


 俺は科学的な根拠のあることしか信用しない。占いなんてものは、大抵の人間に当てはまるよう都合良く作られているものだ。


「あらもったいないわね。占いというのは頼りになるものよ。私もよく自分で扇風機の羽占いをするのだけれど」


「なんだその聞いたことの無い占いは!」


「花占いと同じやり方よ。1枚ずつ羽をちぎって占うの」


「扇風機を占いで壊すな! そのやり方なら毎回同じ結果じゃないのか!?」


「まあそれはいいのよ。その占い師がやってる占いの館。どうも怪しいのよね。場所を送るから来てもらえる? あと紅希にはスマホで地図と内容を転送しておいてね」


「おい、お前まさかその役目を俺に押し付けるために通信してきたのか?」


「さあ、どうかしらね。とにかく私はリトマス試験紙で紅茶を飲みながら待ってるわ」


「それはどうやってるんだ! そっちが気になって仕方ないぞ!」


 俺がそう言った時には、既に通信は切られていた。なんて自分勝手なやつだ……。


「どうした橋田? また怪人か?」


「かもしれません。とりあえず行ってきます! また調査の件はよろしくお願いしますね」


「ああ! 笹舟に乗ったつもりで任せておけ!」


「頼りなさすぎませんか!?」


 部長の一言で急に不安になりつつ、俺は黄花が送ってきた地図の場所へと向かった。

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