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第23話 ブルーの調査

 基地の奥に向かって俺は歩を進める。基地の奥には来たことが無いが、随分と広いんだな。どこまでも奥行きがあるように感じてしまう。


 部屋数も多く、廊下の両端にはいくつもドアが並んでいる。思えばこの基地自体もかなり怪しいな。ハシレイが自腹で作ったと言っていたが、ハシレンジャーの拠点として作ったならもっと小さくてもいいはずだ。

 スーツや武器の開発をしたり、敵の情報を察知したりしているとしても、2部屋あれば十分。何故ここまで広くする必要があるのか、甚だ疑問だ。


 しかしここまで部屋数が多いと、ハシレイがどの部屋に入ったのか検討も付かないな……。わざとそうしているとも考えられるが。


 正直に言うと、俺はハシレイがホーテーソク団の一員なんじゃないかと思っている。突然現れて正義の戦隊を組織し、ろくに説明もせず戦いに放り込んだ。ホーテーソク団について妙に詳しいこともあり、なんらかの目的を持って俺たちをハシレンジャーにしたんだと疑ってるんだ。そう、例えばこのハシレンジャーのスーツ。これは怪人をより強化することが目的の試作品で、俺たちを実験台に使っている……とかな。


 そうこうしているうちに突き当たりの部屋に辿り着いた。今まで見たドアには何も書いていなかったが、このドアには「はしれい♡」と書いてある。……女児の部屋か! 分かりやすいのはありがたいが、こいつの気の抜けた性格はなんとかならないものだろうか。


 呆れながら部屋のドアを開ける。するとそこには、ビールを飲みながらうちわをパタパタと扇ぎ、タンクトップと短パン姿で野球中継を見ているフルフェイスヘルメットがいた。


「何をしてるんだお前は! おっさんか!」


「碧!? 何をしとるんやここで! ここはワシのプラチナカード空間やぞ!」


「プライベート空間だろ! なんだその限度額の高そうな空間は!」


 本当に何をしてるんだこいつは……。怪しい動きをしていないか見に来たのに、なんで部屋でおっさんムーブをかましているんだ。残念な司令官すぎるだろう!?


「ワシがワシの部屋で何しててもええやろ! 勝手に覗いたらあかんでほんま! どうすんねんもしワシがポールダンスしとるとこに出くわしたら!」


「こっちもそんな姿は見たくない! そんな日常的にポールダンスしてるのかお前は!?」


「いやそんなやで。週4日ぐらいや」


「まあまあしてるじゃないか! 良かったぞ本当に今してなくて!」


「まあそれは置いといて。碧、何の用や? わざわざワシの部屋まで追っかけて来よったんは」


 ハシレイはヘルメットのバイザーを上げ、こちらを見る。その目には特に怒りや疑いの感情は見られず、いつも通りのハシレイだ。

 感情を隠すのが上手いのか、それとも本当にやましいことなど無いのか……。


 どちらにせよ、俺のやることはひとつ。今抱えている疑問をぶつけることだ。だがそのままぶつけてしまっては警戒されて終わり。あくまでホーテーソク団のことが気になって聞きに来たという体で行こう。


「実はさっきの幹部について聞きたいことがあるんだ。特徴を聞いた瞬間焦っているみたいだったが、お前はあの幹部について何か知っているのか?」


 ハシレイはテレビの野球中継を消し、体をこちらに向けた。


「せやな、ワシは自分らが出会った幹部のことを知っとる。多分、十中八九、きっと知っとる。知らんけど」


「知らないんじゃないか! 適当に話すな!」


「いや、言うてまだ情報が話し方だけやからなあ。特定まではできてへんのや。やけどホーテーソク団の幹部っちゅうのは、基本的に宇宙にある本部にいとる。地球にもう幹部が来とるっちゅうのは、どうも引っかかってなあ」


 ……やはり怪しい。ホーテーソク団について詳しすぎる……気がする。確か自分の星をホーテーソク団に滅ぼされたとか言っていたが、それだけで幹部が本部にいるなんて情報まで得られるものだろうか。


「なるほどな。ならお前が今想像している幹部じゃない可能性もあるわけだ。だが幹部の情報については俺たちにも共有しておくべきだとは思わないか?」


「うーん、そうやなあ。自分らに今幹部の情報を伝えたところで、怖がらせてまうだけちゃうかなあとは思うねんけどな。デブに睨まれたカエルみたいに」


「ヘビだろう!? カエルが食われることには変わりないが、急に間抜けなことわざになったぞ!」


「とにかく、幹部っちゅうのはそんだけ危険な存在なんや。今情報を伝えたところで、結局自分らにできるんは経験値を溜めること、そして美味しい紅茶を探すことや」


「だからそれは黄花だけだろう! 俺たちを紅茶探しに巻き込むな!」


 ハシレイは俺から視線を外し、再びテレビをつけた。


「ああもう8回の裏やんけ! 38点ビハインドか……。まだサヨナラのチャンスはあるな!」


「ポジティブすぎるぞ! 38点ビハインドなら諦めろ! そもそもお前は何の試合を見てるんだ!」


「ああこれか? これは夏の高校野球東京都予選第2試合や。ワシはどっちも応援してへん。モルック派やからな」


「じゃあなんで熱くなれるんだ! あと野球と比べるなら大体サッカーとかバスケだろう! 何故モルックと比べる!?」


「まあとりあえず、幹部についてはワシが調べとくから。なんか分かったら教えるし、あんま気にせんでな。ほな!」


 そう言うとハシレイは俺をドアの外に押し出し、ドアを閉めてしまった。


 結局、疑惑が強まっただけだったな……。こいつは本当に俺たちの味方なのか? 紅希と黄花は何故か信用しているようだが、俺はこいつを信用しない。これからも注意してハシレイの言動を見張っておくか。


 もやっとした感情を抱えながら、俺はハシレイの部屋の前から立ち去った。


「ふう、行ったか。バレてまうとこやったな。カムフラージュしてて正解やったで」


 後ろで何か聞こえた気がしたが、ハシレイの姿はそこには無かった。

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