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第22話 ハシレイへの疑惑

 基地に着いた着いた俺たちは、デスクの上に足を置いてセルフフットネイルを施しているハシレイに声をかける。


「なんでお前はフットネイルをしてるんだ! いつもブーツを履いているから見えないだろう!?」


「おおなんや、帰っとったんか。いやな、碧んとこの部長おるやろ? 桃子ちゃん。あの子にネイルの良さを語られてなあ。ワシも挑戦しとったんや」


「だとしてもなんでフットネイルなんだ! 手でやれ手で!」


「手やったら見えてまうし恥ずかしいやんか。爪に『夜露死苦』とか書いてあったらガーリーすぎるやろ」


「どこがガーリーだ! ヤンキーじゃないか!」


 ずっと思っていたが、こいつは俺たちが出動してる間何をしてるんだ? 鳥羽部長とネイルの話をしていたり、動画広告用の宣伝文を読まされていたり、今回はフットネイルをしていたり……。暇なのか? ならこいつも戦ったりして欲しいものだが。


 いやそんなことはどうでもいい。ハシレイに報告があるんだった。


「ハシレイ、大事な話がある」


「ええ!? 体育倉庫裏とか行った方がええか?」


「誰がお前みたいなのに告白するか! ホーテーソク団のことに決まっているだろう!」


「碧、照れなくてもいいのよ。誰かが誰かを想う気持ちは止められるものではないもの。それにしても碧と司令……。きついにもほどがあるわね」


「だから違うと言っている! 黄花まで乗っかるな!」


「何が乗っかってるんだー? チャーシューかー?」


「なんでお前だけラーメンを食べようとしてるんだ! 食うなら勝手に食え!」


 頼むからちゃんと話させてくれ……。周りがバカばっかりだと本当に疲れるな。まともに話せる相手が欲しいものだ。


「ハシレイ、さっきの戦闘でホーテーソク団の幹部らしき者が現れた」


「幹部やと……? まさかそんな、まだ出て来るはずは……」


「あら司令。幹部が出て来るタイミングが分かってたっていうのかしら?」


「いや、話の展開的にまだ出てこーへんもんやと思っとったんや。まだ言うても序盤やろ? 怪人もそんな倒してへんしや」


「メタいことを言うな! そんなことで幹部の登場タイミングが分かってたまるか!」


「ああでもあれやな。第1話から幹部が出て来るタイプの戦隊もあるもんな。それと比べたら遅いねんなあ。中途半端やなあ」


「だから番組的な観点でものを言うな! 俺たちは俳優じゃないぞ!」


 相変わらず適当なやつだ……。だがこれも本当にボケているだけなのか? こいつはどうも怪しいんだ。実は幹部が出て来るタイミングも、本当に分かっていたんじゃないだろうか。


「自分ら、その幹部はどんなやつやったか覚えとるか?」


「いいえ、声だけしか聞いていないから分からないわ。でも私が声から想像するに、『金』と書いてある赤い前掛けをして、まさかりを担いだおかっぱ頭の少年かしらね」


「そんな金太郎みたいな怪人がいるか! 強そうではあるが!」


「パンダに跨って現れるのよね」


「熊じゃなくてか!? なんでそんなユルい動物に乗ってるんだ!」


「パンダってなんだー? 食えるのかー?」


「お前はそろそろ自分で調べるということを覚えた方がいいぞ」


「うーん、見た目が分からんとなるとどの幹部か判断できひんなあ。他になんか特徴は無かったんか? 例えば語尾が『サービス残業』やったとか」


「ブラックすぎるぞ! そんな限界会社員みたいな幹部がいるのか!?」


「でも話し方は割と特徴的だったわよね。一人称が『ボク』でちょっとおちゃらけた話し方だったわ」


 それを聞いたハシレイはヘルメットのバイザーを上げ、目を覗かせた。


「それはほんまか? 『〜だヨ』って話し方やったか?」


「そんな感じだったぞー! 気持ちわりー感じがしたなー」


「そうなんやな……。分かった、ワシの方でちょっと調べてみる。自分らはゆっくり休んで力を蓄えるんや。ちゃんと精進料理も用意してあるで」


「なんで力を蓄えるのに精進料理なんだ! 俺たちは坊さんか!」


 ハシレイは本当に精進料理を出して来ると、そのまま基地の奥へと消えて行ってしまった。


 出された精進料理を無視して紅茶を飲み始める黄花と、小鉢を眺めて苦い顔をしながら唐揚げを取り出す紅希。

 いつも通りの光景に戻ったが、俺はハシレイへの疑いがより強くなっていた。


「碧ー、どーしたんだー? これ食わねーのかー?」


「お前らも手をつけていないだろう! 何故俺にだけ食わせようとする!?」


「私たちはそれぞれお肉と紅茶っていうキャラがあるもの。碧にはそのキャラが無いのが可哀想だわ。これからは精進料理キャラになりなさい」


「なんだ精進料理キャラとは!? 出家する予定は無いぞ!?」


「出家ってなんだー? 鮭の仲間かー? 碧はクマにでもなるのかー?」


「俺はとりあえず紅希に国語辞典を買うことを決めたぞ」


「国語辞典ってなんだー? 食えるのかー?」


「こいつなら本当に食ってしまいそうで怖いな……。それよりお前ら、ハシレイに違和感を覚えたりしないのか?」


 俺の言葉に、紅希と黄花は顔を見合わせパチクリと瞬きをする。


「違和感なんて無かったぞー? 碧は司令のこと疑ってんのかー?」


「ああ、かなりな。俺たちはあいつのことを何も知らないだろう? ハシレンジャーを組織しておきながら、自分の情報は何も開示しない。違和感があると思わないか?」


「考えすぎにもほどがあるわね。私たちのやるべきことは、ホーテーソク団を倒すことと、美味しい紅茶を飲むこと。それだけよ」


「紅茶はお前だけだ! ……はあ、やはりお前らは何も考えていないか……。俺はハシレイについて調べようと思う。何か分かったら、紅希と黄花にも知らせよう。どうもあいつの言動は引っかかるんだ……」


 俺の話を聞いているのかいないのか、紅希と黄花はそれぞれ唐揚げと紅茶を口にする。

 呑気な仲間を持ってしまったが、こんなのでも仲間だ。ハシレイが何を企んでいるのか知らないが、こいつらに危険が及ばないようにしなければな。


 俺は紅希と黄花をちらりと見てから、ハシレイがいる基地の奥へと向かった。

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