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第20話 動物は大切にしましょう

 赤いTシャツを着た怪人が掲げるプラカードには、「動物を食べるな」と書いてある。なるほど、読めてきたぞ。恐らくこいつはヴィーガンマンとかそんな名前だろう。紅希の干し肉を盗んだのもこいつだな。


「あんたらがあのハシレンジャーだね! あたいの餌食になってもらうよ!」


「お前か、紅希の干し肉を盗んだのは。俺たちもそう簡単にやられるわけにはいかないんでな。覚悟しろ、ヴィーガンマン」


「あたいはヴィーガンマンじゃないよ! 完全菜食主義マンさ!」


「じゃあヴィーガンマンでいいだろう!? 何故日本語訳にした!?」


「日本語の方が風情があって気に入ってんのさ! ヴィーガンじゃ欧米かぶれだろ?」


「どこに拘ってるんだ! そんな愛国心の強い怪人は見たことが無いぞ!」


 なんだこいつは……。欧米かぶれを気にする怪人とは前代未聞だな。なんで俺たちの敵はこうも気の抜ける相手ばかりなんだ?


 まあいい。結局俺たちのやることは、ホーテーソク団の怪人を倒すこと。ただそれだけだ。


「こんな気の抜けた相手だが仕方ない。紅希、黄花、行くぞ!」


「待ちなさい碧。紅希のこの状況を見たでしょう? 今紅希が戦えると思う?」


 ああそうだった……。紅希は今肉が足りなくてへたへたになってしまっているんだ。

 紅希にそんな弱点があるとは知らなかったが、そうなってしまえばこの完全菜食主義マンほど相性の悪い相手はいない。どうしたものか……。


「碧、紅希は一旦置いておきましょう。私たちだけでやるしかないわ。大丈夫よ。今日の私の運勢は、足の薬指占いによると末小吉よ」


「お前は毎回何で占いをしてるんだ! 末小吉は信用できないが……。仕方ない、実際紅希抜きでやるしかないな。行くぞ黄花!」


「OKよ」


「ハシレチェンジ!」


 俺と黄花の周りを青と黄色のタイヤが回り出す。俺たちはハシレンジャーへと姿を変え、ヘルメットの右側面にあるタイヤを押して武器を出す。


「覚悟しろ完全菜食主義マン。レッドがいなくても、お前など敵ではない!」


「言ってな! あたいの中にある動物たちの悲鳴が、あんたたちを襲うからね!」


 そう言うと完全菜食主義マンは俺たちに向かって両手を突き出した。

 すると牛や豚がこちらに向かって飛んで来る。……いやダメだろう!? 動物たちを守るという建前でヴィーガンやってるんじゃないのか!? 動物を攻撃に使ってたら本末転倒じゃないのか!?


「あんた今あたいが動物を粗末に扱ってるって思っただろ! その通りさ! あたいは動物の肉は食べないけど、生きてる動物は粗末に扱うのさ!」


「なんで自ら矛盾を宣言してるんだ! 動物を守らなくていいのか!?」


「死んじまった動物は可哀想だろ? だから食べないのさ! だけど生きてる動物は話が別! 死ぬまではどう扱ってもいいからねえ!」


「逆だ逆! 生きてる動物こそ守れ!」


「意味がわからないにもほどがあるわね。とりあえずあの牛と豚をなんとかしなさい、ブルー」


「丸投げするな! ああもう、罪の無い動物を撃つわけにもいかない。こういう時はこうだ!」


 俺は力尽きている紅希を拾い上げ、こちらに突進して来る牛に向けてひらひらと振った。すると牛は俺が振っている紅希の方を目掛けて僅かに方向を変え、そのままとんでもないスピードで走って来る。

 俺は紅希を持ったままひらりと回転し、牛の突進を躱す。赤いレザージャケットを着た紅希を使った戦法。闘牛の要領だな。そのまま俺は紅希を後ろへ放り投げる。


「ブルー、なかなかねあなた。仲間をそう使うのはびっくりだわ」


「使えるものは使わないとな。チェンジできなくても、紅希には役に立ってもらうぞ」


「性格が悪いにもほどがあるわね。まあいいわ。じゃあ私はあの豚をどうにかしましょう」


 少し呆れていたイエローだが、遅れて走って来る豚に向かって行った。イエローはそのまま豚の頭を抱え込み、耳元で何か囁いたようだ。すると豚は震えながら動きを止め、その場でうずくまってしまった。


 満足気に戻ってくるイエロー。何をしたんだこいつは……。


「おいイエロー、豚に何か言ったのか?」


「ええ。『このまま私たちに危害を加えるようなことがあれば、あなたはすぐにミルフィーユ鍋になるわよ』って言ったらすぐに止まってくれたわ」


「お前の方が性格が悪いじゃないか! よく人のことを言えたな!」


「とにかく、これであの怪人の攻撃は攻略したわね。さあどうするの怪人さん?」


「なかなかやるねえあんたたち……! でもレッドが復活しない限り、あんたたちがあたいに勝てることは……」


「しゃああああ!! ふっかああああつ!! エンジン全開だー!!」


「……なっ!?」


 さっき俺がポイ捨てしたはずの紅希は、いつの間にかいつものテンションに戻り、完全復活していた。


「あんたら……何をしたんだい!」


「あら、気が付かなかったのかしら? 私が豚さんと戦っている間に、あなたの持っていた干し肉が無くなっていたことに」


「なんだって……!?」


「悪いな。盗まれたものは盗み返すのが筋ってものだろう? イエローが豚の方へ行っている間に、返してもらったぞ」


 そう、俺はイエローの戦闘(恐喝)を横目で見ながら、怪人から干し肉を取り返していたのだ。それをしれっと紅希の方へ放り投げ、紅希が食べるのを待っていた。俺の思惑通り、飢えた紅希は干し肉にがっついてくれたようだ。


「小癪な……」


「小癪ってなんだー? ジューシーなのかー?」


「なんでも肉だと思うのをやめろ! 復活したのはいいが、バカがすぎるなお前は。とりあえずチェンジしろ!」


「しゃー! 行くぜー! ハシレチェンジ!」


 紅希の周りを赤いタイヤが周りだし、紅希はハシレッドへと姿を変えた。

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