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第17話 灼熱の基地で涼を取れ!

「暑いな……」


 俺がそう呟いたのは基地の中。コンクリート打ちっぱなしで見た目だけはクールな基地だが、この夏になりかけの時期にはきついものがある。夏になりかけと言っても、外の気温は30℃以上あるのだが。

 ましてや俺はいつも通りビシネススーツを着ており、きっちりネクタイまで締めているから耐えられたものじゃない。エアコンはどうやってつけるんだ? 基地の中を見回しても、リモコンやエアコンらしいものは見当たらないが……。


「ひゃあー! あっちぃなー! 壁も触れねーぐれーあちぃじゃん! これなら壁できゅうりの1本漬けとか作れんじゃねーか?」


「火を通さないものを作ってどうする! どこでも作れるだろう!」


「蒸し暑いにもほどがあるわね。サウジに来ているようだわ」


「サウナじゃなくてか? サウジアラビアも確かに暑そうではあるが……」


「私夏の時期は冷房が効いた部屋しか受け付けないの。碧、何かギャグでも言って温度を下げてもらえる?」


「何故スベる前提なんだ! ……いややらないぞ!」


 しかし本当に暑いな。ハシレイにエアコンの場所を聞くか……。あいつは基本的に基地の奥に引きこもっているようだが、奥は冷房が効いているのだろうか。


 そんな時、ちょうどハシレイが入って来た。


「おうおうお疲れさん! 今日は暑いなあ。こんな日はこたつに入ってうどんでも食べたいもんや」


「我慢大会が定番の世界から来たのか!? やめておけ死ぬぞ?」


「司令、そんなに暑いならそのヘルメットを脱げばいいんじゃない?」


 黄花がしれっと爆弾を放り込む。そう、俺たちはまだハシレイがヘルメットを取った姿を見たことが無いのだ。バイザーを上げた時に目だけは見たことがあるが、その目も片方は眼帯がしてあってよく見えていない。つまり、俺たちはハシレイの顔を知らないのだ。


 少し期待してハシレイの方を見ると、ハシレイはバイザーを上げて目を覗かせた。


「それはできひん相談やなあ。ワシの顔は地球に墜落した時の怪我でまだグチャグチャなんや。自分らに今顔を見せたら、引かれてまうやろ?」


「そーなのかー? 俺そんなことで嫌いになんねーぞ?」


「まあまあそこはワシのわがままやと思ってくれや。ヘルメットは脱げへん。それだけや」


「ならひとつだけ教えてくれないか? ずっと気になっていたんだが、お前の右目の眼帯は何だ? それも地球に来た時の怪我なのか?」


「ああいや、これはちょっとな。ものもらいがなかなか治らんくてな」


「なんだそのくだらない理由は! 早く眼科に行け眼科に!」


「毎日目薬も指しとるんやけどな、なんで治らんのやろなあ……」


「だから眼科に行け! 何ヶ月放置してるんだお前は!」


 軽口を叩いているが、どうもこいつは読めない。本当に墜落した時の怪我で顔がグチャグチャなのか、右目はものもらいなのか、全て俺は半信半疑だ。これまでの大ボケっぷりから見るに本当でもおかしくはないが、俺たちに何かを隠しているんじゃないかと疑う自分もいる。


 まあ今はそれより冷房だ。エアコンはどこにあるのか聞かないとな。


「ハシレイのおっさんよー、流石にちょっとあっちぃぜ! エアコンねーのエアコン!」


「ああすまん。この基地にエアコンは無い」


「はあ!? なんで無いんだ! コンクリートで囲まれてるんだから、エアコンは必須だろう!?」


「いやあすまんなそれは。この基地を作った時にエアコンまで付ける金は無かったんや。なんとかして自分らで涼んでくれ」


「そんな無責任な……」


「やれやれね。やっぱり碧のギャグで冷やしてもらうしかないわね」


「だからやらないし何故スベる前提なんだ! 俺がどんなギャグをするって言うんだ!」


「それはあれよ。国歌をロック調で歌うとか」


「ちょっと面白いじゃないか! ……いややらないぞ!」


 すると紅希が立ち上がり、拳を突き上げて言った。


「よーし! じゃあ今から涼み対決だ! おめーら、どんな手を使ってでも涼むぜ!」


「あらいいわね。乗ったわ」


「こういう意味でクールになりたいんじゃなかったんだがな……。今は仕方ない、死活問題だからな」


「しゃー! 行くぜー!」


 俺たちは何とかして涼もうと手を尽くした。


「まずは俺だー! この冷やしステーキをみんなで食うぞ!」


「ただの冷めた肉じゃないか! 噛み切れなくてむしろイライラするぞ!」


「じゃあ私が風鈴を付けてあげるわ。風が吹くと肉が焼ける音を鳴らしてくれるものよ」


「紅希に乗っかるな! 余計暑くなるだろう!?」


「じゃあこの肉を煮込む音が鳴る風鈴はどうだー?」


「ほぼ同じじゃないか! なんで涼みたいのに選択肢が肉しか無いんだ!」


「わがままにもほどがあるわね。碧だけ冷凍肉でも触ってれば?」


「その皮肉が1番マシな提案なのが悲しいぞ俺は……」


 まともな提案がひとつも出ないのがこいつららしいな。だがこのままでは本当に熱中症になってしまう。なんとかしなければ……。

 そんな時、黄花が首を振りながら立ち上がった。


「仕方ないわね。お父様に頼んでこの基地にエアコンを設置してあげるわ」


「おい、それができるなら最初からやれ!」


「無茶言わないで。私だって今思いついたんだもの」


「エアコンの話になった時点で思いついて欲しかったぞ……」


「エアコンって何だー? 食えるのかー?」


「さっきまで知ってただろう!? 記憶をどこに捨てて来たんだ!」


 数時間後基地にエアコンが設置され、ようやく俺たちは涼むことができた。

 やれやれ、涼みたいだけなのに何故か疲れてしまったな。


 それにしても気になるのはハシレイだ。あいつの言っていることはどこまで本当なのだろうか……。

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