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第16話 身体暴走!ハシレッド!

「待たせたな、ハシレンジャー!」


 ピンク色のビジネススーツを身に纏い、高いヒールで器用に走って来るその人物は、同じくピンク色の缶を3本抱えていた。


「……鳥羽部長!? 何してるんですか! 危険です!」


「ハシレンジャーのピンチを黙って見てられるわけがないだろ! さあ、エナジードリンクを持って来たから飲め!」


「エナジードリンクならさっき飲みましたが……。追加で飲むと何か起こるんですか?」


「ああ! トイレに行きたくなるぞ!」


「じゃあダメじゃないですか! この格好でトイレに行きたくなるのは困ります!」


 何を言ってるんだこの人は……。そう言えば今までこの格好で用を足したことは無いが、実際どうやってするのだろうか。一度チェンジを解除しなければならないのかもしれないな。


 ……いやそんなことを考えている場合ではない。追加効果のあるか分からないエナジードリンクを飲むより、ここをクールに乗り切る策を考えなければ……。


「おー! さっきのエナジードリンクじゃんか! 俺1本もーらい!」


「あ! 待てレッド! それを飲むとただ利尿作用が……」


 俺の制止を聞かず、レッドはエナジードリンクの缶を開けた。どうやってか知らないが、ヘルメットの口部分からエナジードリンクをごくごくと飲んでいる。


「ああ……。すぐにトイレに行きたくなっても知らないぞ……」


「うおー! なんかパワーが湧いてきたぜ!」


 俺の心配とは裏腹に、レッドは無事パワーアップしたようだ。なんだあのエナジードリンクは……。ただのエナジードリンクで何故ここまでパワーを引き出せる?


 そんなことを考えていると、レッドはハシレチェンジャーのアクセルを回した。


「身体暴走!」


 そう叫ぶと、レッドの体に変化が現れる。全身の筋肉が盛り上がり、ただでさえピッタリとしたスーツがよりピチピチになってしまった。


 身体暴走はまだ俺たちには使えない機能だったはずだが……。エナジードリンクを飲んだことで体に力が漲り、一時的に身体暴走を使えるようになっているということか?


 思考を巡らせる俺を置いて、レッドはトレーナーマンに向かって走り出す。すると一瞬でトレーナーマンの元へ辿り着いたレッドは、その下腹に拳を叩き込んだ。


「ぐあああぁぁぁぁっっ!!」


 するとトレーナーマンは遥か後方へ吹っ飛んで行く。恐らく曲がり角にぶつかったであろうトレーナーマンは、壁に埋もれてしまっていた。


「おおー! こいつが身体暴走のパワーか! これならトレーディングカードゲームでも勝てる気がするぜ!」


「頭脳戦には関係無いだろう!? しかし凄いパワーだな……」


「馬鹿力にもほどがあるわね。あれならニットも引きちぎれるんじゃないかしら」


「分かりにくい例えをするな! どこまで凄いのかいまいち伝わらないぞ!」


 トレーナーマンは壁から抜け出し、片膝を着きながらこちらを睨んだ。


「どこにこんなパワーが……! ですがいいでしょう! どうせ私の言うことには逆らえないのです! ハシレッド! 魚をあげるから私の手当をしなさい!」


「やなこった! 誰が魚なんかで釣られるかよ!」


 そう言うとレッドは再び一瞬でトレーナーマンのところまで移動し、いつの間にか取り出していた鉄パイプを振りかぶった。


「食らいやがれ! 身体暴走! ハシレストライク!」


 鉄パイプは赤く熱されたように光り、トレーナーマンの腹に食い込んで煙を上げる。


「ぎゃあああああ!! 熱い! 熱いですって! 神引きのガチャぐらい熱い!」


「例えはそれで合ってるのか!?」


 俺のツッコミと同時にレッドが鉄パイプを振り抜き、トレーナーマンは壁をぶち抜いて空高く飛んで行った。


「しゃああああ! 倒したぜー!」


「身体暴走……。恐ろしい機能だな。しかし身体暴走を使うと歯止めが効かなくなるという話だったはずだが……」


 チェンジを解いた俺が考え込んでいると、ハシレチェンジャーにハシレイから通信が入った。


「紅希! 初めての身体暴走おめでとう! どうや、限界を超えた身体能力を発揮した感想は?」


「おう! なんかめちゃくちゃ気持ちいいぜ!」


「ハシレイ、身体暴走を使うと歯止めが効かなくなるというのはどういう意味だ? 今のところいつもの紅希にしか見えないが」


「ああ、あれは脳に影響が出るんや。力を振るうことしか考えられんくなるんやけど、紅希の場合は普段から何にも考えてへんから影響が出んかったみたいやな」


「なんだそれは!? つまり紅希には身体暴走のデメリットが無いのか!?」


「むちゃくちゃにもほどがあるわね。なら紅希は常にあのエナジードリンクを飲んでいた方がいいわね。人工衛星がそう告げているわ」


「なんでそんな機械的なものがお告げをくれるんだ! 星じゃダメだったのか!?」


 俺と黄花が呆れているのを他所に、紅希は鳥羽部長にひたすら話しかけている。


「ねーちゃんはこのエナジードリンク飲まねーのか? 力湧いてきてすげーぞ!」


「私はいいんだ。まだハシレンジャーじゃないからな。いつか変身した時に飲めたら嬉しいが」


「おー! そいつはいい夢だぜ! ねーちゃんも俺と一緒に干し肉食って力付けるか?」


「いいのか? なら私も紅希くんと一緒に干し肉パーティーに参加するとしようじゃないか!」


「おっしゃー! じゃあ今から後転で帰るぜ!」


「よ、よし、頑張ってみよう! あわよくば私も変身したいからな」


「ノらなくていいんですよ部長! そいつの言うことは無視してください! あと最後なんて言いました?」


 やれやれ、いつものメンバーだけでも大変なのに、部長まで入ったら俺の負担が凄いな。こんなのはクールじゃない。もっとスマートにいきたいものだ。


 それにしてもあのエナジードリンク、一体何がどう作用して俺たちのパワーアップに繋がっているのだろうか……。

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