35.ベータ5経過観察(6) 遠足
孤児院で遠足に行くことにした。
遠足と言っても言わば社会見学だ。
何処に行くのかと言うとベータ5の地下世界だ。教師5名と孤児50名を母船(空中母艦)に乗せて向かう。宇宙戦艦でも良かったけど今回は地下世界なので母船にした。
まず母船を見てびっくり仰天だった。
そして中にはいって映し出される周りの映像にびっくり仰天。
地下世界への入口を見て、びっくり仰天。
更に荒廃した地下世界を見て、びっくり仰天。
「大昔に地上には進んだ文明が栄えていた、ところが文明がもたらした自然破壊から生き延びるために地下世界に逃れていった。これがその人たちの末路だ。
今の地上世界は地上に残された生き残りの末裔だ」
「遠足だっていったら、楽しみにして来たのに、主、これ悲惨な現実を知らされたってことですよね」
「遠足だ」
「騙された」
「社会見学とも言う」
「でも、そういうことなんですね。我々の世界は」
「更に...」
「まだなにかあるんですか?」
「2000年後にはこの星は崩壊すると推測される」
「「「え゛ーーーー」」」
まだ先のことだ、眷属以外は代が変わっているので他人事のようなものだ。
「精霊の森が出来た年を精霊の森起源0年として精霊歴2000年に災いが起きると言い伝え...」
ライディがぷっと笑った、お前これをやりたいがために遠足を催したとでも言いたげに此方を見た。
そのとおりだ。
「...後世に残すように。」
「それをなぜ我々に?」
「新天地を目指すにしてもそれなりの文明レベルが必要だ、人材も、資材もね
今のまま放っておいたらそれすら危うい。
眷属の3人は長い取り組みになるだろうが協力して頑張ってほしいって事だ」
ーーーーー
ナビくん、この星の精霊石を生み出す機械ってどうなっているの
ーー精霊石を生む機械も精霊も既に存在しません。地下世界は死の世界です。
追加出来る?
ーー女神様に手配してみます。ですが、星の延命にはなりません。人類は生き延びられるようにはなると思いますが。
お願い!
ーーーーー ファースト、セカンド、サード
「おいっ俺達責任重大だぞ」
「こんなことになっているなんてね」
「やりがいはあるわね、
心配事があるわ、主、我々のこと覚えておいてくれるかな?
話を聞いているとむちゃくちゃ忙しそう」
「誰か主に付けよう」
「誰を?」
「3人で行こう」
「そうですね、どうせ直ぐに何か出来るわけではないし、主にべったり張り付いていたほうが色々学べて良さそうね」
「「「決定!」」」
ーーーーー ギルド
「それで報告は?」
「とても言いにくいです」
「言わないと報告にならんが」
「人払いをお願いします」
「分かった」
「それで?」
「いい話と悪い話がありますが、どちらから聞きたいですか?」
「なんだもったいぶって、悪い方からでいい」
「はい、悪い方ですが、2000年後にこの星が崩壊するそうです」
「何だと! あっ、いや儂は死んでいるな
だが長寿種族は他人ごとでは無いな」
「良い方の知らせですが、精霊国、つまり進入不可域で国が建国されます。そして崩壊前に新天地への脱出計画が発足します」
「だが中には入れんぞ」
「何らかの選別が行われるかと」
「選ばれるためには?」
「文明レベルが必要だそうです」
「こんな状態でか?」
「はい、ですからまずやんわりと告知して危機感を徐々にあげる事が必要だと
例えば、予言書が見つかったとか、あやふやな情報として流すのです
そのために予言書の複製を大量に作って売りさばきましょう」
「儲かりそうだな『精霊記』とでも名付けて、お前その原本を書け」
「わかりました、お任せ下さい」
ーーーーー とある貴族
「報告を」
「はい、良い知らせと悪い...」
「それはいい、報告だけしろ」
「はい、
精霊の森、進入不可域で精霊国の建国がなされます。
これは、2000年後にこの星が崩壊するのに備えてこの世界の文明レベルを上げるためです。」
「んーーーとんでも無いことを淡々と言うなあ」
「報告だけと言うことですので」
「取り込めそうか?」
「無理です、どちらかといえば取り込まれた方が良いかと」
「よし、国にはそのまま報告して、我々は取り込まれて内情観察に徹すると言う事にしよう
そしてそのまま取り込まれよう」
「懸命な判断だと」
「精霊国の者に会えるか」
「中の者は出られないし出入りできるのは我々教師だけなので通常では無理ですね」
「通常でない方法では?」
「私が、精霊国の主に直接交渉するしか方法がないですね、採用時から既に内通者としてバレていると思いますので、交渉する事自体は問題ないかと、ただこちらの交渉のカードは何も無いです」
「これまでの報告から彼らの目的は金銭や領地では無く、『精霊と精霊と自然と人の関わり改善』と『文明レベル向上』だろう、
幸い我が家の影響力はこの国のトップレベルだ、教育面とかで充分協力できるだろう」
「わかりました交渉してみます」
「この件に関しては全権を移譲する、頼んだぞ」




