11.来訪者の再来(10) 帰還
「ところで、ダロイ、この船団ってどうやって着陸するの?
アルファ3にはシャトル無いよ」
本当は以前押収したのがあるけど
「はい、実はその事ですが何の準備も有りません」
「何だって? どうする気だったの?」
「人を乗せたらシャトルが積めなくなってしまい、数隻しかありません
なんとかしていただけないかなと」
8万人を降ろすのにいったいどれだけかかるのか?
それにしてもずさんな計画だな。
「向こうでの調整もあるからしばらく軌道上で待機してもらう
輸送船を使うから、着陸の段取りをお願いする」
「前方に巡洋艦発見」
「あっ、追い越した先遣隊の船だ。忘れてた。拿捕しよう
アイス、推進装置を壊せ」
捕らえてテストしたけど全員不合格。
しまった、推進機を壊したから新天地に行けないのか。
仕方ない、こそっと新天地に行って、新天地の無人島に置いてきた。頑張れ。
まあ彼らがやらかしてくれたおかげで、結果として救われた人が多いと言う事になってしまったのだが。
俺は迷惑だったけど。
新天地に向かった奴らも降りるの大変だろうな。もう知らんけど。
降りきるまでに餓死者が出るかも、燃料保つのかな?
んーー。後で手伝ってやるか。仕方ない。
手伝う義理も義務も何も無いんだけど、乗りかかった船、いや違う、降りかかった船か?
せっかく助けたのに直ぐに絶滅したらもったいない。もう少し頑張ってほしい。
無事にアルファ3の軌道上にたどり着いた。彼らにはここで待機してもらい、俺は報告に戻った。
経緯を皇帝に説明して会議の結果、難民受け入れは辺境伯が責任を持って行い、帝国としては支援を行う事になった。そして人数が多いので新たに街を龍人国の東側に建設することになった。地下鉄の駅を新設しなくてはならない。
街が出来るまでは、キャンプしてもらわないといけないな。色々と準備が大変そうだ。
テントの準備、食料の準備、水も要るな。
とりあえず準備ができるまで一週間ほど軌道上で待機してもらおう。
キャンプ地は街の建設地近くに作ったテントは10人用が8000張
物資倉庫用テント100張、川から水を引いた。簡易下水処理施設も作った。
テント張りは各自に任せよう。やっていられない。
街はまず城壁からかな、ダロイ達の希望も取り入れて街の設計をした。
ダロイを領主に任命した。こちらからはサポートにマッチョンを付けた、役に立つかはわからないけど。
町の名前はアルファ・フォーになった。救世主(俺)が名付け親になっていた。確かにそう呼んでいたけど。まあいいか。それと俺が辺境伯の他領の全ての王だったので、それに倣い初代アルファ・フォー王に就任してしまった。そうしないと他領より下の存在になってしまうのだそうだ。
8万人を降ろすのも大変だった。20日かかった。従者総出で運搬船を操り、4隻で1日2往復500人/隻、人の上下船、物資の出し入れなどでかなり時間がかかる。
以前アルファ4で押収したシャトルも投入した大活躍である。
もっと合格者を減らせば良かったかな。今からでも新天地行きを再募集してみようか。
彼ら自身の街の維持管理だけでも彼ら自ら働いてもらう。1万人単位で区を形成して共同農地の予定地を与える。当面は同心円上にピザカット8等分切りの様に区を割り当てた。街の中央には女神教の教会を建てた。そして協会を中心に各区行政施設、商業施設、各区住居施設、工業施設、各区内農地、城壁、各区外農地と順に広めに同心円上に区画していった。
区を分けるメイン道路は『ピザカット道路』と呼ばれる様になった。俺のせいだゴメン。
区の振り分けは領主に一任した、北から左右回りに身分の高いものから割り振り、南の2区が最下層らしい。まあ身分と言ってもそれほど差がないらしい。
それにこんな状況では既に貧富の差は無くなり、全員等しく平等に極貧である。
ほぼ出身地別なのかもしれない。中央に近い順とか?
最初の2年間は無税とした、ただし街の整備などのための労働力などは無償で出してもらう。
3年目からは徐々に税率を他の領と同じにしていく予定だ。普通に考えたら厳しい条件の様に思えるが、それを補って余るほどの投資をしている。そのぐらいで自立していってくれないと充分以上に投資した意味がない。
当面、農地は、チャイ菜、ジジャガ、など自領で消費するものを主とした。苗の入手にはローリン商会に手配してもらった、今年は在庫限りとなるが、来年からは増産してくれるらしい。
領では、宗教は治安を乱さない限り自由であるが、女神教の教会が街の中央にある事や、国王(俺)が女神教である事などから殆どが女神教信者になった。アルファ4での神には見離されたという事で改宗した様だ。
8万人でこの大変さ、新天地ではこの十倍以上も大変という事だ、やはり俺には出来ない相談だった。
星を脱出出来た事自体褒めてあげた方が良かったかな。人口のほんの一部しか脱出できず、更に行き倒れ前提というずさんな計画だったけど。
自然豊かな星とは言っても物資が不足しているだろうな。
時々新天地の様子を見てみようかな。基本的には手を出さないつもりだけど。




