10.来訪者の再来(9) 破滅の新天地
ぱぅん! ぱぅん!
先程から何度も砲撃音が響く
砲撃音は宇宙空間には響かないが、船内には響くのだ。
そう、離脱組の処理だ。
このまま我々の星に来てくれては困る。
エンジンを狙っている、彼らをどうするか最終的には新天地組に任せよう。
同乗しているものが同じ意思で動いていないかもしれない。だがケジメは必要だ。難民船団の代表も不承不承ながら認めている。彼自身は適合試験合格であったが、責任を感じて新天地組を率いるそうだ。
こういう人物こそ欲しい人材であるが、彼の意思は固いようだ。
新天地へのゲートを開き、新天地組と離脱組の船を次々に放り込んでいく、そして最後の船を送り込んだ後、ゲートを閉じる。彼らの眼の前に新天地が広がっているはずだ、環境は整っている、そこに害虫を放り込んだわけだが。
その有り様を難民組の人たちが眺めている。お互いの未来への不安を抱えながら。
家族が分かれた者もいる、リスクを分散した様だ。残念ながら彼らには確認出来ないが。
俺はいつでも、『破滅の新天地』へ行き来できるし、観察することも出来る。だが、それぞれの状況は誰にも公開する事は無いだろう。一人二人は構わないが、知ればまた問題の再来だ。
新天地と彼らには言ったが、実際は破滅の新天地である。高い確率でそうなるだろう事を考えると、実に無駄なことをしてしまったのであるが、他に方法は無かった。自己満足に過ぎないのだろう、きっと。
難民船団を率いてアルファ3に向かう。船の調子が悪いものは輸送船に移ってもらった。
食料も不足気味らしい。多くの人が乗っているので食料・水のスペースが無いのだ。
物資を補給しながらの移動になった。1ヶ月で到着予定だ。
ひょっとしてこれって俺が来なければ途中で餓死者が多く出たのではないだろうか。
難民船の新たなリーダーはダロイという者だ、ガロイの弟らしい。こいつも親近感のある名前だ。
彼に聞いてみたら、それも知っていたが、星の崩壊まで猶予がなく、とりあえず乗り込む事になったそうだ。そしてほとんどが餓死するだろうと予測していたそうなのだ。
えー。俺って何もしなかったほうが問題が少なかったってこと?
どうやら俺が頑張ったせいで受入人数は増えてしまった様だ。
救われた人たちは幸運だったんだろうけど。
いやー、人命救助は大切だよね、うん、黙っておこう。




