黄金の流星
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「ふざけるなっ! ふざけるなっ! 畜生!」
海賊船のメインデッキでワッチワンが激情のままに吠えていた。
宇宙空間へ放り出された彼は、部下たちの懸命な救出活動により九死に一生を得ていた。
「ヤツを逃がすな! あのメスガキもだ! 一撃でこの宇宙の塵に変えてやれ!」
船員達は荒れるボスの神経に気を遣いながら黙々と作業し、主砲のエネルギーが早くチャージされるの今か今かと心待ちにした。
ワッチワンは今にも爆発しそうな憎悪を体を椅子に埋めることで、どうにか残った一握りの理性を手放さずにいられた。
さすがに視力を失ったままではと、顔にはサングラスの代わりにヘッドセットをはめ、急場措置ではあるものの一応の視界確保に成功した。
「センサーに高エネルギー反応!」
突如、メインデッキに嬌声が飛んだ。
誰もが作業の手を止め、主砲の狙いを絞っていた砲撃主はあれだけ心待ちにしていたエネルギー充填のサインが鳴っても、引き金を引くことはなかった。
全員がモニターに映った、その馬鹿馬鹿し光景に目を丸くし、船長への忠誠や仕事への熱意も忘却の彼方に吸い込まれていった。
小さな軽宇宙船から、青白い極太ビームが宇宙空間を一直線に貫いていた。
この船に搭載された主砲なんか比較にならない、別次元的な超高エネルギーの光の線が、軌道上にあるあらゆるものを光に変えていく。
あれが一体どこまで伸びているのか、センサーですら測ることはできなかった。
もしこの場に新聞記者がいたならば、明日の一面は決まったも同然。
自分たちのことなど、写真一枚無く地方欄の隅に小さく載るのがせいぜいだろう。
いや、それはない。
あんなわけわからんデタラメ、誰が信じるというのだ。
「ワープ反応……目標、ロストしました…………」
荒唐無稽なショーが終わり、索敵主は思い出したように、船長にレーダーに映ったそのままを報告した。
「…………追えっ! 今すぐこっちもワープだっ!」
気を取り戻したワッチワンが大声で次の命令を発した。
どうせ奴らの行き先は決まっている。
絶対に逃がすものか!
必ず殺してやる! 絶対に復讐してやる!
静かに忍び寄って、関係ないトコからじわじわ苦しめてやる!
ヤツの周囲を一人一人いたぶって―――
ワッチワンが苛立ちに精神を焼いていると、
「レーダーに感!」
再び、索敵手からの報せ。
さすがにあれ見せられた後だからか、その声は幾分落ち着きを取り戻していた。
「連合か!?」
「いえ! 影は一つ! 小さい……小型の、スタークバイクのようです!」
「なに!?」
「正体不明機、ワープ進路にて停滞中! モニターに出します!」
大型モニターが、その小さな影をズームでピックアップする。
ワッチワンがつけているヘッドセットにも同じ映像が流れ、あのにやけた笑みに背筋が凍った。
映像越しにも拘わらず、あの口笛のようなふざけた口調が幻聴となって聞こえた気がした。
「黄金の……流星」
船員の誰かが、茫然と呟いた。
宇宙の闇で小さく煌めく金色の輝き。
真空空間に漂う煙草の煙。
バイクの上に立つ、その姿。
機械化された銀色の左腕。
そして、右手から真紅の光の刃が真っ直ぐに伸びた。
「ワープ開始五秒前!」
「構わん! そのままぶち殺せ!」
ワッチワンは怒号の如く命令を下す。
その声にわずかな怯えが混じっていることに、切羽詰まったこの場の全員が気付かなかった。
3………2………1………
船がワープを開始し、光となった直後―――
ワッチワンの視界を、紅い閃光が埋め尽くした。
「………―――ッ! ……………――――――ッ!!!!!!」
紅い光に飲み込まれる最中、ワッチワンは男の名を叫んだ。
その名がいったい誰のものだったのか。
確かめる術は、流星となって宇宙の闇に消えていった。
五章はここで終了、残すはエピローグを残すのみです。
現在進行形で加筆修正しているので投稿がばらつきまくってしまいましたが、それでも読んでくれたすべての人に感謝感激音頭を捧げます!
ありがとございまするするする! ヨっ!




