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宇宙海賊としての矜持

 *


「ジョンでーす」

「超作でーす」

「カラドニクス≒ドノットギーラでございます」

「「誰やそれ!(ツッコミ)」」


 ガヤがワッと湧いた。

 現在、宴会場で宇宙海賊トライタンパーティによるお笑いショーが開催されていた。

 船員たちは喜々として次々にステージに上がり、マイクの前で日夜磨きに磨き抜いた持ちネタをステージ上で披露する。


 そして、観覧席に設けられたプラチナシートには、絶賛人質であるはずのミカンの姿があった。


「きゃははははーっ!」


 掴みのボケで腹を抱えて笑っている。

 彼女の前に運び込まれる大量の食事。野菜少なめの荒くれ者たちが好きそうなジャンクなメニューが勢ぞろいだった。


「いたーきます!」


 パン、と両手を合わせ、ぱくぱくもぐもぐ、えげつない勢いで平らげていく。


「あのガキやべぇ!」「負けてらんねぇっ!」「うおおおおおお!」


 矜持を刺激された負けず嫌いの者たちが、プライドをかけて食い倒れプリンセスと張り合い始める。

 しかしスピードも量も桁違い。

 軟弱者が次々と意識を失い、タンカで運ばれていく。


「……………………」


 ワッチワンはドン引きしていた。

 彼が座る豪華な椅子の前には、これまたたくさんの食事が並んでいるのだが、その一切に手が付けられていない。

 すぐそこで行われるえげつない行為にガッツリ食欲が失せ、酒で口を湿らせるくらいがせいぜいだった。

 既に十人を医務室送りにしたミカンは、にっこにこで食いもん山脈を平地にしていく。

 とても人質とは思えないお代官待遇。


 しかし、こうでもしないと例のヤバい尻尾が、ずどーん☆なので、致し方ない。

 結果としてヤツのいう通りになっているのは癪だが。


(我慢……我慢だ……っ。このガキはこの宇宙でも珍しいヒューマン型エイリアン。売ればこのボロ舟を最新鋭戦艦にしても釣りがくる……っ)


 それに報告された能力も一個体が持つにしては破格の能力だ。


(その力をオレが手に入れれば……だから我慢……我慢だ……)


 ワッチワンは想定外の気苦労を誤魔化すべく、口輪の隙間に挿したストローで酒を吸う。


 じー……。


 ミカンがこっちを見ていた。

 その意図がわからないワッチワン。

 部下が耳打ちしてきた。


「なにかやってほしいんじゃないっすかね?」


 見れば、余興のお笑い芸が転換のタイミングだった。


「誰がやるか。他の奴にやらせろ。ウケがいいからって張り切っていただろう」

「なに言ってんすかボス!」


 手下がくわっと食って掛かってきた。


「期待されてんすよ! ご指名なんすよ! 芸人としてそんな名誉なことないっすよ!」

「芸人じゃねぇ!」


 意味不明な熱量に押され気味だったワッチワンだが、そこは激しく訂正した。


「でもまた機嫌損ねたら……」

「…………………………」


 ワッチワンは自分の船がバースデーケーキのように、綺麗にカットされた未来がリアルに想像できた。


「…………………………」


 じー………。


「…………………………………………………………………………………」


 で、


「トツギーノ!」

「きゃはははははははははははは―――――――――ッ!!」


 大爆笑。


 *

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