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名前はp・・・じゃなくて、ミカンに決定

 残念ながら、よしよしはもらえなかった。


「最低なやつだな。これはれっきとした犯罪だぞ」


 代わりにコンコンと説教を頂けることになった。

 しかもフルスイングビンタのおまけつき。

 おかげで目もばっちり覚め、一坂はもう泣きそうだった。


「幼女を拉致監禁。裸に剥いて性的暴行を加えるとは、ここまで堕ちては……」


 詩織は諦めたように受話器を取った。

 ダイヤルを、じーこじーこ、と回す。


「ちょっと待て! 本当に身に覚えがねーんだよ! そもそもこちとら昨日も一人寂しく」

「寂しかったからやったと?(じーこじーこ)」

「違いますよ! 違うますから通報はやめてピザでも注文しよう! な!?」


 しかしどれだけ訴えても詩織はピザ屋へのダイヤルをやめてくれない。

 へー、最近のピザ屋の電話番号って、三桁なんだー………。


 一坂が久々のピザにどんなトッピングがつくのか想像し、泡を吹きそうになっていると、彼のTシャツを着せられた件の幼女(五歳くらい?)が、どーん、と体当たりしてきた。ピザの単語に釣られたか?


「ぱぱー」


 一坂は木っ端微塵にぶっ飛んだ。

 

「パパ……だと? 一晩でよくここまで調教したものだな、ええ?(じーこじーこ)」

「違うんだよおお! 何かの間違いだあああ!」

「間違いであってほしいものだな。なんだ? 親子プレイか?(プルルル。プルルル。)」

「俺は純愛いちゃいちゃプレイのぞき見(不可抗力)派です…ってちがああうっ!」


 たまらず電話線をぶっちぎった。


「ぱーぱー」

「……悪いな、ピザはまた今度だ。っつーかパパじゃねー……ってか、何もってんだ?」


 幼女の紅葉みたいに小さな手に、蜜柑が握られていた。

 それは「なーんかすっぱいもの食べたくなっちゃったなー」つって一坂が八百屋で購入ツケしたものだった。


「……しゃーねーなー」


 一坂はぶつぶつ文句を言いつつ、幼女のためにオレンジ色の果実の皮をぺりぺり剥がした。

 粒を一つ一つもいで食べやすいようにしてやる。

 だが、幼女はいっこうに食べようとしない。


「遠慮してんのか? 随分とお行儀がいいこって。こいつはいいとこのお嬢ちゃんだな」


 発言がもろ誘拐犯だった。

 一坂は電話が無理ならと交番へ駆け込もうとする詩織を拝み倒した後、不思議そうにおっきな翠玉色の瞳で蜜柑を見つめている幼女のもとへ戻る。


「もしかして、蜜柑も知らねーってか?」


 ようやく幼女の意図するところにたどり着いた。


(こいつはどこかの国のお姫様かもな)


 一坂はそんな犯罪者然とした思考をとりあえず横に置き、


「こうすんだよ」


 お手本として一つ食べてみせた。

 幼女も真似して小さな口をあーんと開ける。

 一坂が彼女の舌の上にちょんと粒を乗せてやると、あむあむと咀嚼し、味を堪能するようにコロコロ表情を変え、


 ぽわわわ~ん。


 苺のように赤いほっぺたを緩ませ、顔いっぱいに好感の意を示した。

 どうやらお気に召したらしい。よかったよかった。


「そういやお前、名前は?」

「(もぐもぐ)?」

「わかんねーか。そうか……でも呼び名がねぇと不便だしな」


 一坂は暫し思案し、


「よし、お前はミカンだ」


 テキトーに決めた。

 ピザにしなかっただけマシだろ?


「み……かん?」

「そうだ。ミカンなお前。とりあえずそう呼ぶわ」


 お気楽に宣言する。

 幼女は自分に与えられた名を確かめるように何回か呟くと、


「ミカーン」


 嬉しそうにバンザイした。

 ちょっと楽しくなってきた。


「そーそ。んで、俺は秋山一坂だ」

「い…さ…か………ぱぱ?」

「パパじゃねーっつーの………ん?」


 詩織がいつもの鉄仮面でこっちを見ていた。


「どうした〝一坂パパ〟?」


 完全に楽しんでいる。

 なんだか無性に恥ずかしくなってきてしまった一坂パパ。そんな目で見ないで………。


「ぱぱー」


 ミカンが、ぴょーんとジャンプしてきた。

 何の使命感かは不明だが、一坂の顔面に無邪気に張り付く。


「ほががっ!? むごがが~!」


 一坂は引き剥がそうと奮闘するも、ガッチリホールドで全然離れてくれない。


「さっそく懐かれてよかったな一坂パパ」


 詩織が抑揚のない声で言った。ぜってー楽しんどるやん!


「ふんががが! ぐむりむがぐがぐごもごむごまだらかみきり」

「わかったわかった。それはそうと、いい加減シャワーでも浴びてこい。どうせ昨日も風呂に入っていないのだろう? 不潔なやつめ」


 この女は本当に突き刺さることをしれっと言う。

 確かにその通りではあるけど……。


「あと、ついでにミカンも綺麗にしてやれ。純愛いちゃいちゃプレイのぞき見(不可抗力)派の一坂パパなら問題ないだろう?」


 どうやら詩織もわかってくれたらしい。

 一坂は自分のこだわり(フェチ)を理解してくれた幼馴染に最上級の感謝をし、視界ゼロのまま風呂場へと向かった。





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※数ある作品の中からこの作品を読んでくださり、本当にありがとうございます。

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                              おきな

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