耳が長くてきゃわいい動物、なーんだ?
NOAHは大型ショッピングモールである。
今日は休日ということもあって、子共連れや年齢差様々な訳ありカップル。発売直後のトレカやプラモを不自然なまでに買い占める人たちと多くの人で賑わっていた。
その人混みの中には警備員の他におまわりさんの姿もちらほら。
いささか緊張した様子で鳥もちの付いた棒や虫取り網を装備して、周囲の警戒に当たっている模様。
もちろん、例のエイリアン事件のためだ。
そして、その警戒対象であるエイリアン―――ミカンはというと、
「なんでチャイナなんだよッ!?」
チャイナ服を着ていた。
ブティックにて詩織によるファッションショー開催である。
「いちいちうるさい男だな。可愛いじゃないか」
わかってないな風の詩織の後ろで、ミカンがラララライ体操をしている。
ちなみにチャイナドレスではなくチャイナ服である。カンフーやるやつである。
(またしょうもないこと覚えて……)
ミカンはすっかりテレビっ子。
いったい昨日の今日でどれだけ芸人さんの持ちネタを覚えたのかはわからないが、少なくともガチョーンはやってた。
「……っちゅーか、お前もなんでそんな格好なの?」
詩織はなぜか、バニーガールの格好をしていた。
すらりとした長い足を網タイツでぴっちり包み、スレンダーな体にテカテカした黒のボンテージを着ている。当然ウサギ耳付き。
彼女はまるでそこにあるのを知っていたかのようなスムーズさで、店内にあったバニーを購入し、今に至る。
「こうした方が雰囲気でるだろう?」
そう言って無表情のバニーがミカンと共に、カーテンの中に引っ込んでいった。
一坂は気にするのがアホらしくなり、
「どんだけ買うか知らねーけど、俺は金ねーぞ」
カーテンの向こうのバニーの長い耳に届くよう、ぶっきらぼうに宣言した。
本当は多少あるが、そういうことにする。
「心配するな。金銭面でお前など粉微塵たりとも当てにしていない」
「……本当によく理解してくれて助かるよ」
一坂は皮肉を口にしつつ、財布の中身が無事で終わることに、シャアッ!、小さくと拳を握った。
このウサ公、ちょろいもんやで。
「困った時に使ってくれと生活費とは別にご両親から預かっているから、そこから使うことにする」
「なにぃ!? そんなの初耳だぞ! うさ耳だけに!」
お、うまいこと言ったな俺。
「なんで今まで黙ってたんだ!? 俺たちの間で隠しごとがあるなんて悲しいぞ!」
「お前からそんな言葉が聞けるとは耳を疑うな。うさ耳だけに」
「うまくねーんだよ!」
「三,八九二円」
「…………………………」
耳が痛かった。うさ耳だけに。
「じゃ、じゃあ、あっしも欲しいもにょが―――」
「却下」
「なあんでだよおお――ッ! それは俺の金だろおおッ!? ちょっとくらい俺の欲しいもの買ってくれてもいいじゃないのおお! 買うべきだ! いや……買うべきだっ!」
ひっくり返りながら手足を投げ出す十七歳児。
しかし、そんな駄々っ子の訴えがウサギさんの長い耳に届くわけもなく、完全無視で相手にすらされなかった。
(ぢぐじょ~……我慢。我慢だ……)
一坂は念仏のように唱えながら床を叩いた。
こうなったらミカンを連合に引き渡して、なにがなんでもお礼を頂戴してやる。
守銭奴が野心を燃えていると、カーテンの向こうの詩織がタイミングをはかったかのように、
「それにしても」と切り出してきた。
「ここまで思ってもらっているんだ。たまにはご両親に顔でも見せに行ったらどうだ? しばらく会っていないのだろう?」
「………………………………」
一坂は、黙った。
芸人さながらのリアクションどころか悪態一つ吐くことなく、何も言わない。
そして詩織も、カーテン越しに彼の気まずそうな空気を感じており、
(……まあこんなものか)
と、心中で嘆息。
役割を終えたように話を打ち切って、バニーガールに戻ることにした。
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おきな




