異世界転生した俺のスキルは『フラグ操作』でした
思い付き短編です。
まともな異世界転生が書けないのが僕の悪い癖……。
どうぞ笑ってやってください。
目の前に立ち塞がる巨大なゴーレム。
勇者達はたじろぐ。
「くっ、来い! 僕は魔王を倒す者! お前ごときに引いたりしない!」
「そ、そうよ! あたしの魔法でぶっ飛ばしてやるんだから!」
「私がどんな傷でも治してみせますから!」
「うわあああ! 駄目だあああ! もうおしまいだあああ!」
俺の叫びに全員が嫌そうな目で振り返る。
仕方ないだろ。必要な儀式なんだから。
「あんな大きくて力も強くて頑丈そうな奴、普通の攻撃が効く訳ないじゃないかあああ!」
「くっ……! だ、だからといって引く訳にはいかない! 僕は勇者だ! 僕の必殺技、突貫なら岩だって貫ける!」
「相手ゴーレムだよおおお!? 何個穴開けたら倒せると思ってんだよおおお! 突貫は打てて三発だろおおお!?」
「ぐっ……」
「じゃ、じゃあ、あたしの魔法で……!」
「あんたの魔法じゃ細い部分は壊せても、あの巨体を砕いたりできないでしょおおお!?」
「むぎ……!」
「で、ですが、ゴーレムには体内に核という弱点があると聞きます! 私が触れて治療に使う探査魔法を使えば……!」
「腕掠っただけで致命傷になりそうなゴーレム相手に、どうやって長時間触れるんだよおおお!」
「うぅ……!」
さて前提条件が揃ったところでスキルを発動。
『勝利確定フラグをオンにしました』
途端に三人の顔に光が戻る。
「……! それなら僕があいつを引き付ける! その間に……!」
「うん! あたしがあいつの腕と足の関節部分を破壊する! そして動きを止めたら……!」
「えぇ! 私が探査魔法で弱点を見つけます! そして勇者の必殺技で……!」
「ふふっ! 貫けばいいって訳だな!」
「そ、そんなに上手くいく訳ないじゃないかあああ! 逃げようよおおお!」
『勝利確定フラグが成立しました』
よし、これでフラグ成立っと。
「たとえ確率が低くても、光が見えたなら戦う!」
「そうね! それがあたし達勇者パーティだもの!」
「はい! 神と光の導きと共に!」
こうして魔王四天王の一体であるゴーレムは撃破されたのだった。
「お前クビな」
「……わかった」
勇者の言葉に、俺は頷いて拠点を立ち去る。
まぁそうだよな。
フラグなんていう力、この世界の人間にはわからないもんな。
フラグ。
それは物語を盛り上げるためのお約束。
今回のは強敵の強さを具体的に確認して、それに使える手札を整理した。
それでもなお勝ち目が薄いような発言をする事で、僅差の、そして劇的な勝利が確定する。
しかしそれを知らない奴から見たら、悲観的にただ騒いでいるだけの奴だもんな。
『勇者パーティに凋落フラグが成立しました。無効にしますか?』
……でもムカつかない訳じゃないから無効にはしない。
しかしこれからどうしようかな……。
冒険者ならこのスキル活かせると思ったんだけどなぁ……。
ま、スキル使えばどうにでもなるかぁ。
勇者パーティに出会ったのだって、『これから伸びるパーティに勧誘されるフラグ』をオンにしたからだし。
例えばこのフラグとかオンにしてみようかな。
『街角で美少女とぶつかるフラグをオンにしました』
そうしたらそこの角で美少女とぶつかって、ドキドキラブコメが始まる……。
俺自身に戦闘力はほとんどないし、そっちの方が向いてるんじゃないかなぁ……。
「きゃっ!」
「わっ」
ほら来た!
「あっ、ご、ごめんなさい! 急いでいて……!」
「いえいえそんな……」
おぉ! 金髪美少女!
しかもいい身なり!
お胸も豊か!
これは色々今後が楽しみで……!
「げへへ! 逃げようったってそうはいかねぇぞ!」
「へっ?」
「おい兄ちゃん。大人しくそいつをこっちに渡しな。そんで誰にも言わねぇってんなら見逃してやるぜ?」
げぇ!? 悪党!?
確かに美少女とぶつかるのはそういう系のお約束でもあるけれど!
た、戦ったら……?
『死亡フラグが成立しました。無効にしますか?』
しますします絶対します!
……じゃあ連れて逃げようか……。
『死亡フラグが成立しました。無効にしますか?』
しますします絶対します!
え、もし見捨てたら……?
『彼女に死亡フラグが成立します。有効にしますか?』
するかアホ何考えてるんだお前!
……俺がやっつけてヒーローになるフラグは……。
『フラグ成立要件が足りません』
ですよねぇ!
……いや待てよ……?
「ぐっひっひ! こいつは上物だ! 高く売れそうだぜ!」
「その前に少しだけ味見させてくれよう兄貴!」
あいつらの敗北フラグをオンにして、と。
『彼らの敗北フラグが成立しました』
「おーい、そこのお二人さん」
「あぁ!?」
「何だぁテメェ……?」
人の良さそうな謎のおじさん登場!
そう! 俺では勝てなくても、誰かがあいつらを負かしてくれればいい!
しかし剣も持ってないおじさんに何とかできるかな?
「おじさんねぇ、若い女の子大好きでさぁ。可哀想な目に遭いそうなの見過ごせないのよ」
おぉ! 強キャラ感!
……よし、勝利フラグも成立してる!
……わぁ……、連動してもう一つも……。
「野郎!」
「やっちまえ!」
おぉ、こちらは剣を抜いて見事な三下台詞。
それを余裕のおじさんが素手で軽々と制圧していく。
そして……。
「ありがとうございますおじ様!」
「いや、余計なお節介だったかな」
「とんでもないです! 是非我が家に来てください! 僅かですがお礼も……!」
「いやー、そんな大した事じゃないから、気にしないで」
「いえ! 是非に!」
「……参っちゃったなぁ」
おじさんと美少女の恋愛フラグ成立……。
……まぁいっか。
いつか俺にもそんなフラグが立つ日もあるさ。
『恋愛フラグが立たないフラグが成立しました。無効化しますか?』
するに決まってるだろアホいい加減しろお前えええ!
読了ありがとうございます。
不遇系主人公(笑)。
今後も恋愛フラグが立たないフラグをへし折る日々が続く事でしょう。
いつか成立するといいねっ(にっこり)。
お楽しみいただけましたら幸いです。