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第九話「メデューサの討伐」

 早くも時は流れ1年後。運命のあの適性試験があってから、アレスはアスピリッサ冒険者ギルドの計らいで“ヒポクラーン”という名のパーティーを結成した。メンバーは彼アレスにプロポリス、ジュリー姉妹の計4名。一応ここで一通り冒険者パーティー“ヒポクラーン”のメンバー紹介をしておく。

 メンバーのうち1人プロポリス。生粋の筋肉馬鹿であり、とにかく筋骨隆々な男。恵まれた体格を生かし、彼は主にパーティーの防御を担ってくれる存在だ。魔獣のいかなる攻撃をも受け流してくれ、主にアレス達アタッカーのサポートをしてくれる。

 続いてジュリー姉妹。攻撃魔法の使い手で主に遠距離魔法を得意としている。姉妹共に華奢な体躯であり胸板もやや控えめということもあって、肉弾戦の方は苦手としている。だが、雷と土と風といった属性魔法を駆使し、これまで多くの魔獣を薙ぎ払ってきた実力者だ。また姉妹の攻撃魔法は必中必殺であり、そんな彼女達の手にかかればどんな魔獣でもイチコロである。可愛らしい見た目に反して、何とも恐ろしい必殺魔法を使う彼女達だった。

 そして最後に彼アレス。氷結魔法に神殺しの大剣という超重量級の武器を使いこなす魔法戦士だ。ド田舎の地方からの上がり者であり、今現在冒険者パーティー“ヒポクラーン”のリーダーを務めている。魔法と肉弾戦どっちも超一流で、常にパーティーの攻撃の要を担ってきた。向かうところ敵なしとはまさに、このアレスのことを指す言葉といえよう。

 以上この4名でアレス達は、世界中に点在する凶悪魔獣の討伐依頼を引き受け、そのほとんどの依頼を完璧な形で達成してきた。結果、アレス達パーティーの活躍は世界中に知れ渡るところとなった。

 冒険者界隈では、知らぬ者がいないまでの存在となった冒険者パーティー“ヒポクラーン”。まあ以上がアレス達のメンバー構成となっている。


 さて、時を戻して今現在。そんな世界最強の冒険者パーティー“ヒポクラーン”一行は、アスピリッサ冒険者ギルドの中に居た。

 1週間前に引き受けたバジリスク(全長20メートルの蛇型のモンスター)の討伐に成功し、ついさっき遠征先から戻ってきたところだった。ギルドの担当職員に対し、バジリスク討伐の一連の報告を済ませ、報酬を受け取っていたのだが、ここでもまた急な討伐依頼をお願いされた。


「今回もありがとうございます、アレス様。お疲れのところとはございますが、次こちらの討伐依頼を受けていただいてもよろしいでしょうか?」


 そう言うと、職員は討伐依頼書と討伐対象であるモンスターの絵を出してきた。アレス達の気も知らないで。


「えっ? またかよ!? 俺達これで2か月無休で討伐に行ってんだが……。それ他のAランクかBランクのパーティーに回してくれません?」


 少々いらだちを込めて、アレスはそう言った。しかし、当の職員からは、


「申し訳ございません、アレス様。実は今回の討伐依頼も“ヒポクラーン”直々の指名でして、他の方達に回せる案件じゃないのですよ。

 本来であるならAランクBランクのパーティーに回したいところですが……」


「あいよ、わかった。あんまり気乗りしねえが、引き受けますわ。その依頼」


 と、渋々その討伐依頼も引き受けてしまった。ギルドの職員も俺達の負担を減らす努力をして欲しいものであるとアレスはそう思っている。せめて何かと理由をつけて、俺達に依頼が回らないように配慮するぐらいはやってほしいと。でなければ、オーバーワークになってしまう。さすがに2か月休みなしはメンタルに堪えるといったのが、アレスの心情である。


「ありがとうございます。アレス様。そうと決まれば、早速今回の依頼の説明をさせていただきます。まず依頼主はエシャロット王国・エルグランド町で商売を営んでいるマキャベリーさんから。

 ここ1週間ほど、エシャロット王国のエルグランドの街にメデューサという魔獣が出現し、街に甚大な被害が出ているようです」


「そうか。いったいどんな被害が?」


「はい。どうやらそのメデューサは目から石化光線を放つようで、その光線を浴びたが最後、人々を石の彫刻に変えてしまうようです」


「げげげげ!? 石の彫刻だって!? なんて恐ろしい武器を……」


「はい、それで依頼主のマキャベリーさんからは一刻も早くそのメデューサの息の根を止めてほしいとのことです。

 メデューサの出現によって、現在エルグランドの街全体に外出禁止令が出されているため、大元の原因を断って欲しいとのことをおっしゃっています」


「なるほど。事情はよくわかった。こりゃ、やるしかねえか……」


 メデューサのせいで外出禁止となっている市民達のことを考えると、何とも胸が痛くなった。こうなれば、休み返上で討伐しに行くしかあるまい。アレスは一転してそう思った。


「そんで職員。俺達はどこに行けばいいんだ? そいつの居る場所を教えてくれ」


「はい、アレス様。メデューサはここから北西600㎞のカッペ山に生息しています。カッペ山は全長3000メートルの活火山であり、例のメデューサはその山頂を住処にしているとのことです。

 ここアスピリッサからだと、ちょうど2週間ほどの距離となりますね。今回も大変な長旅となりますが、どうかよろしくお願いしますね」


「情報は確かだろうな?」


「間違いありません。保証します」


「あいわかった。ではちょっくら行ってきますわ」


 と、このような流れで、アレス達はまたまたギルド職員から仕事を押し付けられてしまった。Sランク冒険者ということもあって、ひっきりなしに仕事を回され、休む暇もなく魔獣を討伐し続ける日々。まあ忙しいなりにもそれだけ俺達のことを必要としてくれている人達がいるのだから、やりがいはあるしその分、魔獣を討伐できれば成果報酬がたくさん入る。しかし欲を言えば、あとほんのもう少しだけ自由な時間が欲しいものだ。以上がアレスの心情である。


「いつもありがとうございます! いってらっしゃいませ、アレス様!」


 ギルドの職員からのエールを背中で受けながら、アレス達はギルドを後にした。

 本来なら今日はこの後、アレスは極上の女の子のいる店に行くつもりだった。しかしその予定は残念ながらキャンセルせざるを得なかった。

 アレスは泣く泣くパーティーメンバーと一緒に、人々を石の彫刻と変えてしまう恐ろしい魔獣を討伐しに向かったのである。

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