第七話「夢のSランク冒険者」
巨大な水晶玉のお告げにより、晴れてSランク認定されたアレス。その喜びのあまり、アレスは試験会場内で心行くままに氷結魔法を放ってしまった。幸いケガ人は1人も出なかったものの、危うく死人が出かけたとのことでギルド職員にはしっかりとお灸をすえられてしまった。
「あなたはいったい何を考えてるんですか!? この会場を血祭りに上げたいとでも言うんですか!? 公共機関内での武器、魔法の使用はご法度! 裁判通さずに即死刑案件ですから、次からは絶対に気をつけてください!
……今回だけは特別ですからね!」
その後も職員から怒涛の説教をくらったところで、アレスは始末書や賠償金の書類にサインをした。そうして全ての手続きが終えたところで彼は次にある部屋へと向かわされたのだった。
「アレス様、こちらです。お入りください。……くれぐれも武器の使用は控えていただきますようお願いします」
職員から再三忠告を受けつつ、アレスは中へと案内された。これは余談なのだが、そういえばさっきからここの職員連中、彼のことをアレスと呼び捨てでなくアレス様と様付けで呼ぶようになっていた。試験前と試験後で合格者の彼に対する接し方がまるで違っていた。まるで今の彼は客人そのものであった。そんな感じで職員連中は彼のことを国賓か何か重大な要人であるかのように、至極丁寧な物言いと対応をしてくれるようになっているのだ。この気味が悪いくらいの態度の変わりように、「何か裏があるんじゃ?」と彼が勘ぐってしまいたくもなるのも無理はないだろう。
「しょ、承知しました。もうあんな真似は二度としません。お邪魔しまーす」
職員にこれでもかというほど釘を刺されながら、アレスは部屋に入った。いよいよ夢の冒険者となり、好きなことで生きて一攫千金の夢が現実のものとなる。そうなる瞬間にアレスは胸を躍らせたのだった。
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部屋に入って早々、早速彼の目の前には衝撃の光景が広がっていた。
「ほへー、素晴らしいお部屋なこと。ご立派だ~」
今まで絵本だとか風刺画でしか見たことのなかった宮殿の客間のような間取りの部屋がそこには広がっていたのだ。床には赤絨毯が一面に敷かれ、金色に輝く椅子に長机、背丈ほどの高さがある鏡に天井に大きなシャンデリアが吊るされている。また純白にコーティングされた部屋の壁には、トナカイの頭の剥製にサーベルタイガーの剥製も立て掛けられていた。これらの豪華絢爛なインテリアの数々に、もう率直に言ってアレスは開いた口が塞がらなかった。都会と田舎の生活水準の違いがここでも顕著に現れており、彼にはもはやここが現実の場所だと到底思えなかったのである。
「あれ? ねえねえ、お姉たま! またもう一人入ってきたよ? 今度も男の人!」
アレスが部屋の凄さにほへーとなっていたところ、奥の方から女の声がした。どうやら先客がいるようだ。声のした方に顔を向けると、部屋の奥の方にあるソファーに3名の男女がそれぞれ座っていた。
「あらほんと。じゃあ、あの方も私達と同じSランク認定者なのかもね」
お姉たまと呼ばれている人はそう言った。
「えーお姉たま、やっぱりそうなの? ちょっとがっかり。私ってば、もっと白馬の王子様みたいな人を期待してたのにー。
あれじゃあ、冴えないただの一般人じゃん。つまんないのー」
そう言って例のその妹はアレスの顔を見るなり、勝手に幻滅し表情を曇らせていく。顔が好みじゃないことにどうやら不満げなようだ。
そんな理不尽な仕打ちにアレスは心の中で、「うっせー! 余計なお世話じゃい、バカ野郎」っと思ったに違いない。おそらく怒鳴り散らしたい気持ちが彼にはあったと思われるが、アレスは特に何も言うことはなかった。思いの丈はそっと胸にしまったものと思われる。
やはり世の中の女の子は全員が全員、相手の顔が自身の好みじゃないと受け付けないらしい。顔が一定のラインを超えてない時点で、そもそも相手にしないと相場が決まっているように。何とも世知辛い世の中だと、アレスは思っていたに違いない。
さて、そんな初対面なのにも関わらず、早速例の妹から至極失礼なことを言われたところで手前から2人、ピンク色のツインテールの女の子。姉妹のそれぞれ胸板の方がやや控えめであり、アレスより一回りも二回りも幼く見えてしまう生粋のロリッ娘だ。そしておまけに彼女達2人の顔の造形がほぼ一緒ときた。見た感じおそらく2人は双子の姉妹だと思われる。どっちが姉で妹なのかまるで判別がつかない。あまりにも似すぎていて、分身の術か何かを使ってるんじゃないかと思ってしまうほどだ。
そして姉妹以外にもう1人。半そでに短パン一丁という何とも季節外れの格好をしていた男が1人。客間のソファーで足をピンと伸ばし、体幹トレーニングに興じている生粋の変人がそこには居たのである。そんな彼の体からは湯気が、まるでソーセージかハムを燻製していたかのようにモクモクと積乱雲のように出ていたのだ。
その湯気の立ち加減は凄まじく、本当に常人のそれではなかった。
「あ、あの職員さん。あそこで筋トレをしている生粋の筋肉馬鹿はいったい……」
アレスは至極純粋な気持ちで、職員にそう尋ねる。
「あ~、あの方はプロポリス様です。プロポリス様もアレス様と同様、本日の冒険者適性試験にてSランク冒険者の啓示を受けた方になります。
若干、あのように奇行が目立つ方ではありますがれっきとしたSランク冒険者です。ただの変人ではありませんので、ご理解のほどよろしくお願いいたします」
あの生粋の筋肉馬鹿についてそのような説明を受けたことで、彼は一応の納得をすることにした。この部屋に入って早々、あのようなおぞましい物を目にしてしまっていたが、まああまり深く考えても仕方あるまい。きっと考えてもろくなことがない。アレスの第六感はそう語りかけていた。
「さて、これでようやくSランクの啓示を受けた方が全員揃いましたね。それでは改めて私の方から説明に移らせていただきます」
ある職員がそう言った後、アレスも筋肉馬鹿の彼と胸板の控えめな彼女らと同じく、ソファーに腰掛けた。
職員がアレス達の顔をそれぞれ見るなり、襟を正しそれから咳を1つしたところで、次にこう話を切り出した。
「さて、説明に移らせていただく前に改めて皆さん、試験合格おめでとうございます。これをもって本日の試験は全て終了です。お疲れ様でした。
職員一同、優秀なあなた達を祝福致します。それでは職員一同、この者たちに盛大な拍手を!」
職員のその一言を皮切りに、アレス達4人は一斉に拍手を送られた。何とも心がこもっていない社交辞令感満載の拍手だったが、まあこれが彼らなりの歓迎の証ということなのだろう。しかしだからといって、アレスは不思議と悪い気はしなかった。
どんな形であれ、祝福されて一人間として受け入れてもらえる。アレスは今まで生きてきた中で悪意しかロクに向けられてこなかった。そうした祝福をされた経験がまるでなかったから、アレスは尚更うれしく思うのだ。
「ではではそんな名誉あるSランクの啓示を受けた皆様に、ここアスピリッサ冒険者ギルドの説明をしていきます。
もうすでに皆様は薄々気付いておられるかもしれませんが、何を隠そうこの部屋は水晶様からSランクの啓示を受けた方のみ入室が認められている言わば“VIPルーム”でございます」
「はて、VIPルーム? なんですかそれ?」
薄々も何も全く見当もついていなかったアレスは、職員に対して素直にそう尋ねた。
すると職員は、理解力もクソもないそんな彼のためにまた一から懇切丁寧、
「えっと、VIPルームとはすなわち客人や要人等々のために特別にご用意させていただいたお部屋のことです。そうその要人とは、この場合まさしくSランクの啓示を受けたあなた方にあたります。
我がアスピリッサギルドは、長らくあなた達のような若く才能に溢れるお方をずっとお待ちしていたのですよ」
っとこう教えてくれた。
「はあ、そうですか」
正直アレスは職員の説明にあまりピンと来ていなかった。が、ひとまず空返事だけはしておいた。理解力がまるでないアレスのために、職員さんの手を煩わせることは大変申し訳ない。アレスはそう思い、ここは流れを汲み取ることにしたのである。
「私達があなた方を必要としているのには訳があります。今、この世界は魔王と呼ばれる存在によって危機に瀕しています。
魔王は世界各国に“即死クラス”に指定されている魔獣を解き放ち、人類を滅亡させようとしているのです」
「ほうほう、魔王ですか」
「その魔王によって解き放たれた存在”魔獣”。言わば、魔王の配下的な存在の魔獣を、本日Sランクの啓示を受けた才能あふれるあなた方に討伐してほしいのです。それがあなた達Sランク認定を受けた冒険者の使命でございます。
あなた達はこの魔獣討伐の任務を、アスピリッサ専属冒険者として引き受けていただきたいのです」
「ほうほう、俺達が専属冒険者……。つまりあなた達と契約して、冒険者になれということですか?」
「はい、その通りです。是非あなた方に魔獣討伐に協力してほしいのです。
これからあなた達は、我がアスピリッサ冒険者ギルドの専属冒険者となり、ここアスピリッサ管内に留まらず世界各地を冒険していただくことになります。
何度も言うように魔王は世界各地に出没しては魔獣を散布し、また破壊活動を繰り返す。我々人類の生存を脅かす存在です。
その魔獣を討伐し、人類を危機から救うと共に、最終的にあなた方には神出鬼没な魔王の居所を突き止め、魔王を討伐してほしいのです」
「そうなんですね、なるほどなるほど……」
「はい。そのためアスピリッサに留まらず、あなた方には世界各国に飛んで行ってもらいます。
それに先立ちまして、まずあなた達同じSランクの啓示を受けた者同士で冒険者パーティーを組んでいただきたいと思っています」
「なるほど……。だから俺達がこの部屋に集められたんですね。これからパーティーを組む仲間として」
「はいその通りです。あなた達でまずパーティーを組んでいただき、それ以降は我ら冒険者ギルドの傘下に入っていただきます。
それが俗に言う専属契約と呼ばれるものです。我がギルドと専属契約を結んだ暁には、私達が提示した討伐依頼を優先的……と言いますか、実質ほぼ強制的に受けていただきます。あなた方に拒否権は全くはありません。その辺はご理解いただければと思います」
「きょ、拒否権がない? なんだよそれ! そんなのただの奴隷と一緒じゃねえかよ!
っていうか、冒険者って好きな時に好きなだけ自由に依頼を受けられて、好きなことで生きていくってのがコンセプトじゃねーのかよ!
俺が田舎に住んでた時、噂で確かにそう聞いてたぞ!? それにこの受付の時にもらった“冒険者適性試験ガイドブック”にもちゃんとそう書いてある!」
彼は手元にあったガイドブックを取り出し、その例の項目が書いてある該当のページを激しく指差した。
「ほら! “好きなことで、生きていく”って! 書いてあることとあんたらが言ってることと全然違えじゃねえかよ!」
冒険者とはアレスの中では、好きな時に好きなだけ依頼を受けて、魔獣を殲滅する仕事といった認識でいた。故に彼も、これには突っ込んだ質問をせざるを得なかった。
冒険者とは自由を売りにしている、俗に言うフリーランス的な仕事として世間一般では認知されているからだ。田舎を旅立つ前の彼も、少なくともそういう認識だった。故に、話が違うと声を上げるのも無理はない。
「しかもよおー! 俺は自由と一攫千金を夢見て、遠い田舎からわざわざ都会までやってきたんだぞ! 今のあんたらの説明を聞いてたら、俺達ただの奴隷と一緒じゃねえかよ! 普通に組織に縛られの身じゃねえかよ!」
アレスは怒りに狂えていた。
「そういう話だったら俺、降りるからな! この話はなかったことで!」
アレスは反発のあまり職員達に対して、承服しかねるって雰囲気をプンプンに出した。すると職員は面白いようにうろたえ、彼が部屋を出ていこうとするのを見て、慌てて止めに入った。そしてそうするなり、職員達は次にこう付け加えた。
「感情的にならず一旦落ち着てください、アレス様! まずは私の説明を聞いてください!
確かに冒険者の仕事に自由度が高いかどうかと言われれば、決して高くはありません。単純にあなた方Sランク冒険者は我がギルドの組織に属し、命令を遂行していただく立場となります。
“好きなことで生きていく”は、確かに今年の冒険者志望者を募るための宣伝文句で、若干表現を盛ってはいます。それは事実でございます、紛れもなく……」
「なんだってぇ! やっぱりそうだったのか! だましやがったな! それって誇大広告って言うやつじゃねえのか!? 誇大広告!」
火に油を注いだかのように、アレスはますます怒りに狂える。
「こういうのに誇大広告もあれもないと思いますが……。
ですがそうは言っても、その宣伝文句もあながち嘘ではなくてですね、Bランク以下の冒険者はそもそも回せる討伐依頼が少ないのでそういう意味では時間的な制約はありません。自由はあるわけですよ、はい。
ただしその代わりと言ってはなんですがね、そんなBランク以下の方々が得られる報酬はごくごく僅かです。回せる仕事がない分、渡せる報酬だって少なくなります。だからあながち私達の設定した触れ込みも全くの間違いではないと言いますか……」
「なんだよ、それ! 何を言ってるかさっぱりわかんねえよ!
まあ要するに? それって俺達がただの恥ずかしい人ってだけじゃんかよ! 自由の意味をはき違えた可哀そうな人じゃねえかよ!
そんなんだったらもういいよ! 俺は降りるぜ、この場から! 失敬!」
職員の要領の得ない説明を聞き、ますます憤りを感じたアレス。彼は居ても立っても居られなくなったのかソファーから立ち上がり、職員達の制止を振り払って部屋から出ようとしていた。
「ああ、お待ちください! 確かにSランク冒険者はひっきりなしに討伐依頼が寄せられるので、過酷極まりないです。自由な時間もあまり多くはないというか、実質ほぼありません」
「なんだよそれ! それってやっぱり奴隷と一緒じゃないか! 結局、組織に縛られの身じゃないか!
俺はそういう人生が嫌で、都会に出て冒険者になろうと思ったのに……。そういう話だったら、意味ないじゃないか!」
「しかしアレス様。労働を対価と言ってはなんですが、その分Sランク冒険者となれば莫大な成功報酬が与えられるのですよ。
それにあなた方が我が冒険者ギルドと専属契約を締結した暁には、1億ゼニーを差し出します。これからその相談をこちらから持ち掛けようと思っていたのですが……」
どうやらギルドの職員達は、アレス達がパーティーを組んだ際に契約金なるモノをくれるらしい。契約金とは何のことか、分からなかったがとにかくお金を貰えることらしい。いくら世間に疎いアレスでも、それだけのことは容易に理解できた。
「おっ!? 1億ゼニーも!? ……それは悪くない! 一生遊んで暮らしていけるじゃん! その話乗った!」
金の話を引き合いに出された途端、アレスの心は急速に揺り動かされた。そういった話なら別に専属冒険者になっても一向に構わない。要は人生金である。それがアレスの心情である。偉く単純な男だ。
「その言葉をお待ちしておりましたよ、アレス様。我らギルドが必要としているのはAランク以上の啓示を受けた冒険者のみ。基本的に高単価な魔獣討伐の依頼はAランク以上の冒険者に優先的に回すことがほとんどです。それ以外のランクの啓示を受けた冒険者は、正直に言って我がギルドに必要ありません。
AランクでもないBランクからFランクの啓示を受けた者は、はっきり言ってゴミです。せいぜい回せる依頼も魔獣討伐といった高単価の依頼ではなく、ほぼ雑用に近い物ばかり。実質彼らはただの使いっぱしりなんですよ。薬草採集とか街の警備とかお掃除代行とか廃品回収とかですね!」
ここに来て職員が怒涛の持論を展開してきた。心なしかその職員の目の奥は笑っていないように、アレスには見えた。
「そ、そうですね。ゴミだと思いますよ、BランクFランク。はははは……」
アレスはその意見に同調する姿勢を見せた。心なしかそうしておく方が無難であるとアレスは思った。ここで変に職員の考えを否定すると、後でとんでもなくしっぺ返しが来そうな気がしたのだろう。
「あなた方はそれだけ特別な存在なのです。Sランクのあなた方と低俗なBランク以下冒険者と格差をつけるのは当然のことです。
……では、改めてお聞きします。アレス様は我がギルドと契約を結んでいただくということでよろしいですか?」
「はい! その方向で是非よろしくお願いします。1億、1億~♪ 魔獣でも魔王でも何でも討伐します! よろしくお願いします!」
「いい心意気ですね。ありがとうございます、アレス様。他の方はいかがします?」
職員が同じことを、生粋の筋肉馬鹿とピンク色のツインテールの女の子達に尋ねる。
「おう! もちろん引き受けるぜ! 俺様の上腕二頭筋もそうおっしゃってる!」
続けざまピンク色のツインテールの姉妹も、
「私達も契約を結びます。元々その覚悟でしたし。ねっ? クリスティン」
「もちろんだよ、お姉たま! 私も魔獣をたくさん狩りたい、狩りたーい!」
アレス以外の全員、Sランク専属冒険者になることを了解したところで、職員は
「ありがとうございます。その言葉を聞けて私達一同、安心しました」
と言い、そっと胸をなでおろした。
「それでは契約成立ということで、改めてここに冒険者パーティー“ヒポクラーン”の結成を宣言させていただきます。
これからは“ヒポクラーン”のリーダー、アレス・ゴッドバルトの名の元に、マヌエル・プロポリス、クリスティン・ジュリー、アレシア・ジュリーの以上4名で魔獣討伐の方をよろしくお願いしますね」
「はい、喜んで! ……って、えええ!? 俺がリーダー!? しかもパーティーの名前まで勝手に決まってるしよぉ! せめてリーダーとパーティーの名前くらい、俺達だけで相談してから決めさせてくれよー」
「残念ながらアレス様。これはギルド命令です。リーダーとパーティー名も私達が選定させていただく決まりになっているのです。異論は認めません。
ちなみに命令に逆らった場合は、問答無用で即刻あなた方との専属契約を解消させていただきます。
それでもよろしいでしょうか?」
「うぐぐ、それは困ります。せっかくの1億ゼニーが……。了解しました!」
「……よろしい。では早速こちらの契約書にサインしていただけますか?」
契約解消をちらつかされ、アレスは職員の言うことに従わざるを得なかった。契約金1億ゼニーのためなら仕方あるまい。彼にとって苦渋の選択だった。
しかしせめて、リーダーの選定と冒険者のパーティー名くらい、ここにいるメンバー間だけで決めさせてほしかった。たったこれだけのことにも自由が認められないとは。アレスは最早悲しみを超えて、軽く泣きそうになっていた。