表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

7話

 ルーカス殿下は茫然としていたオースティンやサラを睨みつけた。


 ツカツカと近づくとオースティンに言い募る。


「……確か。君はイアシス侯爵子息のオースティン卿だったね。何故、

 クリスティーナ殿はワインをかけられたのかな?」


「そ。それは」


「答えられないのかい?」


「……隣のサラ嬢がやりました」


「そうか。なら。衛兵達。この者達を外へ連れて行け!」


 ルーカス殿下がそう言った途端、オースティンとサラはやってきた衛兵達に囲まれた。衛兵は素早く2人の両腕を掴むと連行する。最初は何事かを喚いていた2人だが。殿下が冷たく睨むと怯えたのか口を閉ざした。

 2人が連れて行かれると会場は静寂に包まれる。


「……クリスティーナ殿。今すぐに着替えた方がいい。メイド達を呼ぶから」


「……すみません」


「謝る事はないよ。客室にすぐに案内させるから」


 ルーカス殿下が言うと。急ぎ足で数人のメイド達がやってきた。


「……彼女にお湯を使わせてあげてくれ。後、着替えなども頼むよ」


「……承知致しました」


「さ。行きなさい」


 ルーカス殿下はあたしの背中を軽く押した。軽くお辞儀をするとメイド達と共に会場を辞したのだった。


 メイド達の内、一番年上なのがスージーと言うらしい。まあ、今は寒いのでこのままでいたら間違いなく風邪をひく。スージー達は速歩きで客室へ案内してくれる。けど身体はガタガタと震えた。確かに外は雪が降っていないとはいえ、凍りつきそうなくらいに気温が低い。会場から一番近いらしい客室にたどり着く。


「……お嬢様。今日に付き添っていらしたのはどなたか教えてください」


「……ああ。兄のギリアム・アルペン卿よ」


「左様ですか。後でお嬢様が皇宮に滞在なさるのをお伝えしますね」


 あたしはとりあえず頷いた。スージーはすぐに客室のドアを開く。他のメイド達もテキパキと動いた。


「急いで湯浴みをなされるように準備を致します。それまでは少々お待ちくださいませ」


「わかったわ。何から何までごめんなさいね」


「……謝罪の必要はございません。では」


 スージーは軽く一礼するとパタパタと走って湯浴みの支度を始め出した。あたしは客室の隅でぼんやりと待った。


 あれから20分と待たずに脱衣場へと通された。ストールやドレスを脱ぐ前に、イヤリングやネックレスにブレスレットを外してもらう。ヘアピンやヴァレッタなども。

 そうしてからストールを外してドレスを脱いだ。幾枚も重ねたパニエやコルセットなども脱いで。生まれたままの姿になったらスージーが片手を握って引いてくれた。


「さ。湯浴みをしましょう」


「そうね」


 頷いて付いて行く。スージーは浴室の椅子にあたしを座らせてくれる。そうした上で洗面器に浴槽に張ったお湯を掬い、あたしの身体にかけた。何度か髪や全身にすると。まずはスポンジに石鹸をつけて泡立てる。それで身体から洗ってくれた。適度な力でされる。はっきり言って軽くマッサージされていて心地よい。うっかり軽く寝てしまいそうになった。

 次に髪の毛を洗ってもらい、全身泡まみれになったが。スージーはまた洗面器でお湯をかけ、髪や身体をすすぐ。まんべんなくすると髪の毛の水気をタオルで優しく拭いた。


「全身は洗えました。御身体が冷え切っていますし。お湯に浸かってください」


「ありがとう」


 あたしはお礼を言って椅子から立ち上がりお湯に浸かる。お湯には何かが入っているらしく良い香りが鼻腔をくすぐった。


「……お湯にはラーヘンというハーブの香油が入れてあります。気持ちを落ち着かせてくれるのですよ」


「そう。本当に良い香りね」


「気に入って頂けて良かったです」


 スージーはそう言ってにっこりと笑う。あたしはしばらくお湯に浸かっていた。


 のぼせない内にとお湯から上がり髪や身体の水気を拭く。メイド達が軽く香油やクリームなどでマッサージもしてくれた。そうしてから下着や夜着も着せてくれるが。

 ……え。夜着?

 ちょっと待てい!なーんで夜着――ネグリジェを着せてんのよ。あたしを泊まらせる気か?

 本気かよ。あたしは戦慄しながらもされるがままになっていた。


 その後、客室にある寝室にまで案内された。スージー達は「お休みなさいませ」と言って退出していく。既に髪も温風魔法で乾かしてあるが。ほうと息をついた。


(……皇太子殿下はどういうつもりなのかしら。あたしは構わないけど。殿下が世間で何を言われるか)


 ちょっと心配にはなる。ベッドまで歩いていったら。寝室のテーブルには軽食にとレモン水とサンドウィッチが置いてあった。たぶん、あたしが夕食を食いっぱぐれたと向こうは気づいているのだろう。有り難くサンドウィッチをちょっとだけ摘んだ。レモン水を水差しからコップに入れてゴクゴクと飲む。

 ふう。お腹はちょっとは満たされた。コップをテーブルに置く。ベッドに歩いていき、端に座った。

 カーテンは閉め切ってあり部屋の中は適温に保たれている。これなら風邪はひかない。あたしは再びため息をついてベッドに上がり潜り込んだ。

 眠りについたのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ