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16話

 婚姻式に披露宴もつつがなく終わった。


 後は初夜が残るだけだ。あたしは披露宴を途中で退席する。もちろん、今後の身支度をするためだが。あたしはルーカス様にだけ聞こえるように言う。


「……ルーカス様。そろそろお部屋に戻りますね」


「……わかった。ゆっくり休んでおいで」


 ルーカス様は耳元で囁く。あたしは頷くとミリア達を連れて皇宮にある皇太子妃用のお部屋へ向かう。ゆっくりと歩きながらもほうと息をついた。


 その後、お風呂に入りマッサージを念入りにされる。髪などに薔薇の香りの香油を塗り込まれた。そうした上で白いネグリジェを着せられる。夫婦共用の寝室に連れて行かれた。


「……では。妃殿下。ゆっくりとお休みください」


「わかったわ。ありがとう」


 ミリア達は一礼をすると部屋を出ていく。あたしは見送ったのだった。


 寝室のベッドの端に座ってルーカス様を待った。が、もう1時間は経つというのに来ない。あたしは痺れを切らしてベッドに潜り込む。すぐに眠気が来てウトウトし始めたが。それでも眠ってはいけないと瞼を開けた。

 けれど結局は眠ってしまうのだった。


 あたしが肩を揺さぶられて目を覚ましたのは真夜中だった。至近距離でルーカス様の顔が視界に入る。驚いて起き上がりルーカス様と距離を取った。


「……ティナ。やっと起きたか」


「ご、ごめんなさい。待ち切れなくて寝てしまいました」


「いや。謝る必要はないよ。私が遅くなってしまったのが原因だしね」


 ルーカス様は苦笑いしながら言った。頭を撫でられる。


「ティナ。待たせてしまって悪かったよ」


「はあ」


「じゃあ。今から初夜を始めようか」


 ルーカス様はにこやかに笑う。あたしは彼の首に縋りついて応えた。


 初夜も無事に済ませた。ルーカス様は上機嫌だ。初夜からしばらくは陛下からもゆっくり過ごすようにとのお言葉があったらしい。正直、助かったけど。身体の節々が痛いし何よりダルいし。なので有り難く公務を休ませてもらった。

 そんなこんなで新婚生活を2人で満喫するのだった。


 あれから早くも10年が過ぎた。あたしは30代に入っていた。ルーカス様とは相変わらずも仲良く過ごしている。

 そんなあたしと彼との間には5人もの子供が生まれていた。ちなみに現在は6人目を懐妊している。来年の夏頃には生まれる予定だ。


「……母上!」


「あら。ラインハルトじゃないの」


「はい。リーンハルトやルドガー、ケリーに。コレットも一緒ですよ」


 あたしはニコニコ笑いながら言う息子のラインハルトに頷いた。ラインハルトは黄金の髪に淡い青紫色の瞳が綺麗な美少年に育ちつつある。性格はあたしに似て利発な男の子だ。ラインハルトが長男で次男がリーンハルト、三男がルドガー、長女にケリー、次女はコレットになる。


「……母様。ライン兄上!」


「リーンハルト。それにケリーやコレット。よく来てくれたわ」


「はい。母様とお腹の赤ちゃんに会いに来ました」


 はにかみながらリーンハルトは言う。あたしの母で祖母でもあるイリス母上に似たのか、この子は銀髪に淡い紫色の瞳の美少年だ。

 ルドガーは祖父君である先代の皇帝陛下の色を受け継ぎ、金茶色に赤紫色の瞳である。ケリーは白金色の髪と濃い紫の瞳、コレットは白銀色の髪に淡い琥珀色の瞳といった感じだ。

 皆、美少年や美少女に育っているけど。あたしはちなみに懐妊してまだ3ヶ月といったところだ。悪阻が酷くてここのところは寝込む事が多かった。子供達はそれを心配してお見舞いに来てくれていた。


「……へへ。僕も来年になったら11歳です。リーンは9歳だしな」


「はい。ルドガーも7歳で。ケリーは4歳、コレットも2歳ですね」


「ふふ。教えてくれてありがとう。2人とも」


 あたしが褒めると2人はちょっと照れ臭そうにしながらも笑う。いいわあ、美少年がはにかむのはねー。つい、ラインハルトの頭を撫で撫でしてしまう。けど嫌そうにはしない。リーンハルトやルドガーはちょっと羨ましそうだ。


「かあたま!」


「あ。コレット。次はあなたね」


 我慢できなくなったのかコレットがトテトテとやって来る。抱っこはできないので頭を撫で撫でしてあげた。ケリーやルドガーは付き添っていた乳母達と何やら遊んでいる。ラインハルトやリーンハルトもメイド達と内緒話をしているし。気になりながらもコレットの相手をするのだった。


 その後、5人の子供達は各々の自室に戻っていく。が、去り際にラインハルトが何かを手渡してきた。彼は渡すだけ渡すとサッサと行ってしまう。

 あたしは首を捻りながらも渡された物をじっくりとチェックしてみた。両手のひらに収まる大きさだ。よく見たら綺麗にラッピングしてあり濃い紫色のリボンが巻いてある。どうやら小包らしい。あたしはリボンを解き、ラッピング用の紙を丁寧に破く。

 中には淡い青色のハンカチが入っていた。それには魔除けになる鷲や杉の葉の紋章が刺繍してある。ハンカチの他には1枚のカードが入っていた。


<母上へ


 ハンケチーフ、気に入っていただけたでしょうか?


 イリスお祖母様に教えてもらいながら刺繍を入れてみました。


 それでは。


 親愛なる母上に


 ラインハルト・ホワイティ>


 幼さが残りながらも丁寧な筆致でそう書かれていた。あら。ラインハルトからのプレゼントだったのね。

 あたしはじわじわとくる嬉しさに顔が緩むのがわかる。またお礼をしないとね。そう思いながらカードを撫でたのだった。


 ――To end――

この回で完結になります。

ありがとうございました。

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