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15話

 風邪が治ってからはまたお妃教育の日々が続いた。


 あたしは体調管理にも気を配りつつもルーカス様との将来のために懸命に励んだ。外国語の習得が1番苦労したが。何せ、近隣諸国の言語を最低でも2カ国語はマスターしていないとダメだと言われた。

 そんなこんなで四苦八苦しながらもあたしは皇太子妃への道を歩んでいた。


 あれからあっという間に年月は過ぎ去った。もうルーカス様と婚約してから4年が経っている。あたしは22歳になっていた。既に次兄のギリアム兄上は親友であるイザベルと結婚している。ちなみにイザベルの実家のセルジ公爵家に兄上が婿入りしていた。現在は当代のセルジ公爵として兄上は忙しい日々を送っているが。

 時折、イザベルが皇宮に訪ねてきてくれるので有り難くはあった。季節は初夏に近い4月中旬だ。


「……早いものですね。お嬢様がルーカス殿下と婚約なさって4年が経ちました」


「本当にね。もうお妃教育は修了したし。後は婚姻式を済ませるだけになったわ」


「ですねえ。皇后陛下が奥様と熱心に婚姻式の段取りを話し合ってらっしゃいますし」


 ミリアはそう言うと。あたしに紅茶を注いでくれた。ゆっくりと飲みながらこれまでの事を思い出した。いやー、大変だったわ。この4年間はね。何せ、覚える事が多岐にわたるしねえ。行儀作法やらダンスやらは必須科目としてもだ。他には政治やら兵法まで習ったわよ。ふうと息をつく。紅茶を一口含んだのだった。


 あれから半年が経って秋になっていた。今日は婚姻式だ。やっと晴れて皇太子妃よ。身支度も大変だったわ。明け方に起きて湯浴みをして。マッサージやらをやってからコルセットでぎゅうぎゅう締め上げられた。パニエを何枚も重ねたりしてウェディングドレスを着た。メイクやヘアセットを慎重にやる。

 ミリアやメリー、スージーなど皇宮のメイド達の合計して8人がかりでやってくれた。最後にベールを被り新郎が迎えに来るまで待つ。


「……お嬢様。いえ。妃殿下。お綺麗です」


「ええ。腕によりをかけた甲斐がありました」


「私達が見た中でもとびっきりの花嫁姿です」


 口々に褒めそやしてくれた。最初がミリアで次がメリー、最後はスージーが言ったのだが。あたしはそれに微笑みながら答えた。


「……ありがとう。皆のおかげよ」


「お礼はいいですよ。妃殿下。そろそろ皇太子殿下がいらっしゃいます」


 あたしは頷いた。同時にドアがノックされる。ミリアが応対してくれた。


「……はい。まあ、皇太子殿下!」


「……ティナの準備はもうできたのかい?」


「たった今、できました」


 ミリアが代わりに答える。皇太子殿下もといルーカス様が控え室に入ってきた。あたしは正装をした彼に見入ってしまう。白の軍服に手袋、軍帽姿のルーカス様はめちゃくちゃ格好いい。ちょっと新たなせ……ゲホゲホ。軍服好きになってしまいそうだわ。それくらいには似合っていた。


「……ティナ。凄く綺麗だ」


「……ルーク様も素敵です」


「妃殿下。そろそろお時間です」


 咳払いしながらメリーが告げた。あたしは我に返る。ルーカス様は手を差し出す。


「行こうか」


「はい」


 声をかけられたので返事をしながら頷いた。ゆっくりと式場に向けて歩き出した。


 大神殿の礼拝堂にて盛大に婚姻式が行われた。あたしはヴァージンロードを父上と共に歩く。壇上で待ち構えるルーカス様の元にたどり着いたら。父上はルーカス様にあたしを託した。

 壇上で2人して神官長様に向き直る。神父役を買って出てくれた方だ。神官長様は厳かに告げる。


「ルーカス・ホワイティ、あなたはクリスティーナ・アルペンを妻とし、健やかなるときも病めるときも喜びのときも悲しみのときも富めるときも貧しいときも妻を愛し、敬い慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「誓います」


「では。クリスティーナ・アルペン。あなたはルーカス・ホワイティを夫とし、健やかなるときも病めるときも悲しみのときも富めるときも貧しいときも夫を愛し、敬い慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」


「……誓います」


「……ここに婚姻誓約書があります。2人に署名をお願いします」


 神官長様がそう言って1枚の紙を出した。ペンを手渡され、ルーカス様から先に署名――サインをする。次にあたしの番だ。手が震えたが何とかサインができた。

 それを確認すると。神官長様は頷き、大きな声で告げる。


「……新たな夫婦が今ここに誕生しました!2人に幸多からん事を!!」


 それが言い終わると同時にたくさんの歓声と拍手が沸き起こった。


「「「皇太子殿下、妃殿下。おめでとうございます!!」」」


 そう式場にいる出席者達が祝福の言葉を述べる。すると不思議な事に礼拝堂のステンドグラスに眩い光が差し込む。それは7色の虹のようだ。あまりにも美しく幻想的な光景にあたしは見入ってしまう。しばらくは皆で見惚れていた。


 式場から皇宮に馬車で移動をしたら。宮殿のバルコニーから民衆にお披露目もした。皆さん、大きな声をあげ、手を振ってくれている。それに笑顔で手を振りながら応えたら。さらに皆さんの声が大きくなった。


「「……妃殿下!!おめでとうございます!!」」


 あたしは嬉しくなって胸中で「ありがとう」と言った。ルーカス様も笑顔で手を振っている。こうして婚姻式は無事に終わる事ができたのだった。

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