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14話

 あたしがしばらく無言でいたら。


 ルーカス様はこちらを見据えていた。


「……リナコさん。あなたは転生したと言っていたな。ティナとして振る舞っていたのは何故だ?」


「……そりゃあ。波風立たせないようにと言うのと。前世の記憶があるからと言っても信用してもらえないと思っていたのがありますね」


「それはそうだな」


 ルーカス様は相づちを打つと大きくため息をついた。気を取り直すように笑った。


「今日は驚いたよ。ティナが異世界から来たとはね」


「……はあ」


「ティナ。これから君が行く道は険しいだろう。それでも私と結婚してくれるかい?」


「それは。険しかろうとあたしは進むだけです。ルーカス様さえよければ。結婚していただけると有り難いですけど」


「……私は結婚する気は満々だよ」


 ルーカス様は意味深に笑みを深めた。あたしはつい見惚れてしまうのだった。


 自邸に帰りルーカス様とはここで別れる。あたしはふうと息をついた。ミリアとメリーが出迎えてくれる。

 そのまま自室に向かう。2人は黙って付いてきてくれた。アクセサリーを外したりセットした髪を解いたりしてもらう。ドレスを脱ぎ、お化粧も落として。いつも通りにした。湯浴みをしたら夜着を身に纏う。濡れた髪は温風魔法で乾かしていたが。どっと疲労感が出てしまった。寝室に向かい、ベッドに入り込んだ。気がついたら深い眠りに落ちていた。


 翌朝、あたしは午前7時過ぎくらいに目を覚ます。今日もお妃教育があるが。どうしたもんやら。頭はぼんやりとしている。体も何だかダルいような。モゾモゾとベッドから這い出した。


「……お嬢様。おはようございます。起きてらっしゃいますか?」


「……あ。おはよう。ミリア」


 ドアがノックされてミリアが声をかけてくる。あたしは答えたが。けどもクラクラするし頭や体が熱っぽくも感じた。ミリアはすぐにドアを開ける。側にはメリーもいた。


「お嬢様。あら?」


「……どうしたの?」


「……なっ。お嬢様。顔が赤いですよ?!」


 ミリアは小走りでこちらにまでやっくる。そしてぐんと近づいてきた。


「ちょっと失礼しますね!」


 ミリアはそう言って手を額に当てた。手がひんやりとしていて気持ちがいいわ。普段だったらあり得ないような事を考えていた。


「……やはり。お嬢様。凄い熱です。今から旦那様や奥様に知らせてきますね。メリーはお嬢様をベッドに寝かせて差し上げて!」


「……わかったわ!」


「では。一旦、失礼します」


 ミリアは急いで寝室を出ていく。あたしはメリーによってベッドに戻されたのだった。


 その後、ミリアから知らされた両親が駆けつけた。父上と母上は慌ててあたしの寝室に来る。同時にその場にいた家令のスミスに急いで医師を呼ぶように言いつけたらしい。既にあたしは熱が上がっていてうなされていた。なので意識がない。ミリアから聞いた話だと父上はお妃教育を受けるのは無理だからと皇宮にもすぐに早馬を出したらしくて。その知らせを受けたルーカス様が執務を急いで切り上げてアルペン伯爵邸に駆けつけたとか。

 医師もすぐ後に来て診察をしてくれたらしくて。診断結果は「風邪ですね」との事だった。また、最近は寝不足で食事もおろそかになっていたからそれが原因だろうと医師は告げたとか。

 風邪薬と解熱剤、疲労に効く薬の3種類が処方されたらしかった。


 翌日の昼近くになって熱は無事に下がった。あたしはまだベッドの住人だ。ミリアとメリーが甲斐甲斐しく看病してくれている。


「……お嬢様。消化に良いパン粥ですよ」


「ありがとう」


「少しは召し上がってくださいね」


 あたしは頷くとパン粥が盛り付けられたお皿を受け取った。トレーに乗っていて膝の上に置く。スプーンを取りパン粥を掬って食べてみた。柔らかく煮込んであるパンにトロリとしたミルクもほんのりと甘くて美味しい。優しい味付けだ。蜂蜜も入っているらしい。食べやすいわね。ゆっくりと食べたが。気がついたら一皿分を完食していた。

 思ったよりお腹が空いていたようだ。


「……一皿分は召し上がりましたね。食欲があるのでしたら回復も早そうですね」


「そうみたいね」


「でしたら。お薬もきちんと飲みましょう」


 あたしは渋々頷いた。頑張って苦いお薬を飲んだのだった。


 3日程が経ち、体調はだいぶ良くなっていた。ミリアやメリーが一所懸命に看病してくれたおかげだ。まあ、ルーカス様も手紙と風邪に良いからと生姜湯の粉末を贈ってくれたが。有り難く飲ませてもらった。


「……お嬢様。熱も下がって良かったですね」


「本当にね。一時はどうなるかと思ったけど」


「お薬をちゃんと飲んだおかげでもありますが」


 メリーがボソッと言った。まあ、それはその通りなのだが。ミリアもあたしも苦笑いだ。


「……お嬢様。体調管理はきちんとなさってください」


「わかったわ。今後は気をつけるから」


「約束ですよ」


 メリーに念押しされてあたしは頷いた。確かに体調管理をおろそかにしていたのは事実だ。仕方ないかと思った。今後はもっと気をつけないといけないわね。

 

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